第36話 私たちは中間考査④

―キーンコーンカーンコーン


チャイムが鳴って、私たちはペンを置く。


「はーい後ろから前に集めて。」


このテストの担当教師がそう言って、私たちは答案用紙の回収を始めた。後ろからきた和光くんに答案用紙を渡して、仮眠する体勢に入る。どうせ枚数チェックがあるんだろう。


 そんなのはどうでもいい。早く家に帰して欲しい。アズスーンアズで。いや、一刻も早く。なぜなら明日提出の課題がまだ終わってないからだ。


「終礼はないんかな?じゃあ終わります。起立。」


テストを配って監督をして集めただけの先生に礼をして、私は荷物をダッシュでまとめ、教室を飛び出した。


 そんな私を追う影が1つ。


「真奈も終わってないん?」

「終わってないで。やから一刻も早く帰らんと。」


校舎を飛び出して駅まで走る。そこそこ距離があるが、ほぼ全部下り坂なのでそれなりのペースで走れる。


「ってか杏が終わってないって珍しいな。」

「そうかな?私にもそんなことはあるって。」


って感じで2人で並んで走る。学校を飛び出したから、周りには生徒の1人も居ない。住宅街の中なので、そんなに人も車もいない。ものの数分で駅に着いた。


 駅構内に入って、ポケットから定期券を取り出す。


「電車あと1分。」

「間に合った。」


改札を抜け、階段を降りる、そして止まっていた電車に乗りこんだ。そのすぐ後に電車のドアが閉まる。


「こんな早よ帰るのって初めてちゃう?」

「せやな。こんな時間でここまで着くことないわ。」


今日は3学年同時にテストが終わってるはずなのに、この号車には誰もいない。この制服で昼間の電車に乗ってること自体がまず珍しい。


「真奈はあと何ページなん?」

「25。杏は?」

「20ぐらいやったはず。」


私たちが終わっていないと言っているのは数A。そこまで課題自体は多くないが、その他が多かったので、まだほぼ手をつけれてないのだ。


「ほんなら後で通話しながらやるか。」

「せやな。」


1駅で降りて、真奈は自転車置き場に歩く。私はその前で待って、立っていた。


「なんで待ってんの?」

「荷物のして。」

「やだ。」


真奈は自転車を押して出てくる。私の家の近くまでは歩いて帰るから。


 いつもきい姉と待ち合わせているコンビニまで歩く。


「じゃあ後でね。」

「うん。帰ったら連絡するわ。」


私たちは手を振りあった。

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