第32話 DAY26

 今日は、奏たちがキャンプ前最後のOFFなので、買い出しに来ている。買い出しと言っても、肉とかは前日に買うので、今日買うのはジュースやインスタントの飲み物、そして、キャンプギアだ。奏ときいは元々持っているが、他は誰も持っていない。持っているテントは2人とも大きいものなので、借りる予定。タープは奏が防火のやつを持っているので、それを使う。あとは、焚き火台と寝袋、装飾類だ。2人とも焚き火台はあるが、収納サイズが大きいので、今回のキャンプには持って来れないらしい。


「Q、鼻血出てる。」

「ホンマや。誰かティシュない?」

「ほらよ。」

「ありがとう、奏。」


にしても高すぎねぇか?安いのは2000円台だけど、高いのは万超えてるじゃねぇか!


「あ〜これな。これはウルトラライトってやつで、ちっちゃくて軽量だから少し高めなんだ。」

「なるほどなるほど。」

「まぁ初めては普通の安いのでもいいかもしれないけど、これからまた行くんだったら、ちゃんとしたやつを持っとくべきだな。」


説明を受けて、俺は結局、そのウルトラライトってやつの中で1番安いのを選んだ。


 次は焚き火台。コンパクトなやつは結構ある。


「これ、有名人がよく使ってるよな。」

「それは使いやすいみたいだぞ。うちの家はこのでかいヤツ使ってるがな、組み立てが難しくてな。」

「たしかに、それは難しそうだ。それに比べてこれは、ここを嵌めるだけか。簡単だな。」


A4サイズに畳める焚き火台を見ていると、奥の方から声がした。


「これ、B6まで畳めるの!?ちっちゃ!」

「プレートも付いていてって凄い!」


桜と熊野さんが焚き火台を前にして盛り上がっている。


「2人とも、それはちっちゃいから枝とか、チクワ炭とかそういうものを入れることが多いよ。あのでっかい薪をこの中に入れたらどうなると思う?」

「「反射炉?」」

「そゆことよ。」


この2人、縦に2本ぶっ刺してやがる。どんな想像してるんだ。にしても、きいがキャンプに行くとはな。まぁ、あの遊びたがりな親2人に連れられてって感じか。あれっ?海南さんはどこだろう?


「楓、何見てんだ?」

「奏、このスキレットってちっちゃいフライパンってこと?」

「そう。これ持つとこまで熱くなるから、このカバーみたいなやつをつけて持つねん。」

「なるほど。普段使いも出来そうだし、買っとこっかな?」

「いいんじゃね?」

「じゃあ、大きいのと小さいのを。」


ひとまず、迷子になってなくて良かった。


 結局、焚き火台は有名人が使ってる、俺と奏が見ていたものを買うことに。あとは小さめのランタンとLEDライトを何個か買った。


 このメンバーにしては帰りは遅くならなかった。昼前に集合したのもあって、ラッシュギリギリにはなったが。


「結局、どこ行くんだ?」

「あぁ、それな。」


奏は自分のスマホを開いて、俺たちに見せる。表示されていたのは奈良県の笠置町にあるキャンプ場。車を横付けできるところだ。


「楓の親が車出してくれるみたいでな、ここになった。楓の親は、次の日の午前中に迎えに来てくれるみたいだ。」

「ありがとう、楓。」

「ありがとう、海南さん。」


俺たちがお礼を言うと、少し恥ずかしそうにする。


「別に、ちょっと相談したらOK貰っただけだから。」


そう言って、海南さんは早足で自分の家に向かう。俺たちは笑いながらそれを追いかけた。

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