第7話 俺のホットサンド

 目が覚めた。以外にもよく眠れたようだ。目を擦りながら身体を起こそうとする。何かに引っ張られる感覚があったので隣を見ると有田さんがいた。


「寝相悪っ。」


少しずつ彼女の腕を剥がしていく。立ち上がったとき、


「んんっ。」


と彼女が唸った。起こさないようにそっと歩き出し、リビングに下りる。


「おはよう、バカ兄。今日は早いね。」

「ああ、有田さんと買い物行くからな。服買わねえと。」

「ねえねえ、杏も行っていい?」


妹よ、こういうときに限っての『お兄ちゃん』呼びはズルいぞよ。断れるわけねぇじゃないか。


「ああ、いいぞ。有田さんが起きたら行くからな。準備しとけよ。」

「うん!」


杏は急いで着替えに上がった。


 冷たいシャワーを浴びて、身体を起こしたあと、濃いめのコーヒーを飲んで一息つく。すると杏がおしゃれな服を着て下りてきた。


「どう?似合ってる?」

「似合ってるが、有田さんはもう少し起きないぞ。服シワシワになるけどそのままいるか?」


すると杏は目をうるうるさせながら言う。


「なんで先言わないのよ。バカ、ボケ、一生独身。」


俺の心に100のダメージ。狼狽えている間に、杏はぷんぷん怒りながら自分の部屋に戻る。


ニュースを見ながらコーヒーを啜る。テレビでは今週のニュースまとめをやっていた。結婚だの、熱愛報道だの、連続HRだの、本当に色々あったようだ。これは俺にとってもそうだと思う。あくまで1日のことだが、本当に密度が濃い。そんなことを思っていたら、口元が緩んできた。


「バカ兄、何かニヤニヤしてる。」

「杏、下りてきたか。何食いたい?」

「サンドイッチ!」


俺はキッチンに入る。そしてバウ・ルーとバター、6枚切りのパン、ハム、チーズ、レタスを出す。


「ホットサンドでいいか?」

「いつも任せるって言ってんじゃん。追い出すよ。」

「ごめんなさい。それだけはやめてください。本当にごめんなさい。」


俺はクマバチの羽音のようなスピードで謝る。そう、俺はこの家に置いてもらってるだけで、本当はもっと遠い学校に行って、一人暮らしをする予定だった。しかし、その学校に落ちたため、杏に口利きしてもらって、嫌々置いてもらっている状況だ。故にこの家の主導権は杏にある。


「桜さんがいい人だったから、家に置くのOKしたわけで、性格ゴミクズのやつだったら、どうなってたかわからないからね。特にウザ太みたいなやつだったら…」


本当、こいついい性格してやがる。


「ありがとよ。」


そう言って牛乳を差し出す。


「イラッときたらカルシウム!」

「殴るよ。」

「すんません。」


そう言って牛乳を飲む杏を見る。すると上からガチャっという音が聞こえた。


「おはよう。」

「「おはよう。」」

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