第6話 私の一夜目
狸寝入りがバレなくてよかった。君は知らないと思うけど、私、今、すごくドキドキしているんだ。男の子の部屋に入るのも初めてだし、何で私、あんなこと言っちゃったんだろうって思ってるんだ。さっき勉強机に行ったときも、バレないように寝返りを打って、薄目で見てたんだ。ずっと何か考えてるみたいだったけど、思いついた(?)ときはちょっと口元が緩んでいて、何か面白かったな。突然ノートを破ったときはびっくりしたし、そのあとバレないように元の位置に戻るのは緊張したな。眠いや、寝よ。
そんなことを心の中で呟きながら目を閉じる眠りにつく前に、隣から寝息が聞こえてきた。
「寝たの?」
返事がない。私はふと思ってしまった。さっきは何を書いていたんだろうって。起こさないように移動する。勉強机の電気をつける。ゴミ箱の中にはくしゃくしゃになった紙があった。広げて読む。歌詞だった。見たこともない歌詞だ。作ったのかな?
「すごい。」
おそらく、私たちのことなんだろう。なんだかくすぐったい。続きを知りたくて裏面の見たけど、何も書いていなかった。そこにあったペンを持つ。
『…
さっきまで他人だった 私と話すの楽しいの?
まだ知らないままよ 何が趣味だとか好きだとか
夢を見ているの 幸せな日々の夢を
だからこれが
甘すぎる考えも信じていたいの
想うの
君の隣で見つめて
本当の気持ち 隠して
叶わない恋 知って
君の髪の毛とかしながら
“好き”と呟いてみる
大好きだよ…』
Cメロ、大サビは書かなかった。書いたら、私の歌になってしまうから。急に自分の書いた歌詞が恥ずかしくなって、紙を丸める。そして捨てる。ベットに入る。何か寂しくて、寝ぼけながら、由良君に抱きついた。
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