第9話

「それで、私的部隊というのはですね。」


あ、まだ続いていましたか。


軽くうなずいたのを見て説明を始めてくださいましたが・・・それがまた・・・。






「陛下は陛下以外に只今王位を継げる方がいらっしゃいません。」


「え?!」


他の継承者がいないと、陛下になにかあった時どうなると?


「ああ、全くいないわけではないのです。ただ陛下にはご兄弟がいらっしゃいません。


その上従兄弟の公爵令息が二人いらっしゃいますがどちらもまだ幼くていらっしゃいます。」




ふむふむ。ということは歳が満ちればわからないということでしょうか?




「ただ。神託が下るというのがそもそも継げる資格そのものであり、神託が下ったということは


その方そのものがこの国そのものということになります。


神託が下る王族は260年前の第二王子に下りまして、その方が国王になりこのドゥーゼットを


ここまで引き上げた方でございます。


神託が下るということは内容は私達には知らされることはありませんが、その下るということが


重要なのでございます。」




お風呂に入れられたばかりなのに。


何故かしら、背中を汗が伝う感覚というのは・・・。


神託そのものの中身は知らされていない。ただ、そこにわたくしが来たということは


何らかの関係があるとこの侍女の方々はわかってらっしゃると。


私的部隊だから?




いや、わたくしはなんとかして自国に帰って悠々自適・・・






「陛下は常に命を狙われます。」




「え?」








どういうことなのでしょうか。たった一人の方だと先程おっしゃったのに。


小首をかしげると真顔になっている侍女の方々がいます。


これって・・・。あ、聞かされるわけには行かなくないですか?


わたくし、後に引けなくなるとかありません?






「あ、あのー・・・わたくしそろそろ着替えも・・・」


「ナディアレーヌ様陛下をよろしくおねがいします。」


あああああぁ・・・宜しくされてしまいました・・・どうしたらいいのでしょうか。


とりあえず話を聞くのは続行のようです。






「陛下にはどのような薬も効きません。」


「はい?」


古今東西そんな方はいらっしゃいません。薬が効かないなどという・・・ん?




でも、陛下はわたくしが幼いときにお会いした時に飲ませた咳止めが効いて・・・。


ええ、効いたはずです。咳が止まって呼吸がゆっくり自発的にできるようになりました。


苦しくなさそうになっていって・・・




「ですが、薬が効かないということは・・・。」


「ええ、薬も効きませんが解毒剤も難しゅうございます。そして、対処療法がなかなか


見つかっていないということでございます。


神託が下ったということはそれらが解消されるということなのでしょう。」






ええええええぇええ・・・。






そぉんな力はわたくしにはありません。


どうしましょう、手が冷たくなっていってしまいそうです。


ですが、侍女さんたちに握られているので冷たくなるまもなくなんとホッカホカ。


爪の先までピカピカです。




「陛下は基本的に誰にもお心をお見せになりません。私達が侍女として仕えているのは


そういう陛下を護る一族であることということだけではなく、私達が全て既婚者だからで


ございます。」


へえ、護る一族というのがいらっしゃるのですね。


我が皇国ではありえないことですね。我が皇国って基本的に医療国なので治療法の確立が


きちんとしていますし、しています・・・ん?




「既婚者?」


「はい。既婚者でございます。」


「え?わたくしとそう年齢が変わらないように見えますが皆さま。」


「ああ、皇女様そのようなことを。」




皆さまがクスクスとわらってらっしゃる。は?






「皇女様。私達はみんな皇女様よりずっと年上でございます。わたくしに至っては


息子がもうこの王城で働いておりますのよ。」


は?嘘でしょ?どう考えても二十代半ばくらい・・・。


「わたくし38にございます。」


「わたくしもでございます。」


え?その他の方々もみんな30歳こえてらっしゃる。






一体この国どうなってるのでしょうか?皆さま見目麗しい・・・。






「皇女様、私達は私的部隊のため、広報部隊も兼ねておりますの。もちろん既婚者ですが


陛下の夜会での令嬢がたの牽制も含め側近くにおることもありますが今後はなくなるでしょう。」


何故なくなるの?とふと思ったら・・・。




皆さまにニッコリと微笑まれてしまっている。こ。これは・・・






「わ、わたくしが?」


「はい。皇女様が。」


「わたくし、そんな度量も気力も器量もだいたい意気込みもありません!!」


「そうでしょう。意気込みがないことは大体話し始めて解りました。」


皆さまが頷いてらっしゃる。


そうでしょうそうでしょう。私は薬草園にこもり、薬を調合し、とりあえず地味に過ごし


治した暁には自国に・・・。


「ですがそれは関係なく陛下は敵だらけでございます。神託なぞ関係ないという輩ももちろん


いますし、それも関係なくただ陛下を狙っているご令嬢も多数おりまして。」


で、でしょうね。


「まあ、陛下は出過ぎた態度のご令嬢には絶対零度の態度で対処なさいますし、それでも


媚薬等を盛ろうとする血気盛んなご令嬢方もまだまだ多数いらっしゃいます。」


なにそれ怖い・・・陛下今までご無事ですか?




「まあ、陛下には効きませんが。」


ああ、そうだった。陛下はお薬が効かないんでしたね。


「効かないけれど不快でないわけではらっしゃらないようです。ただ全く効かないのですが


とりあえず媚薬成分はすべて吐き気にかわるらしいのです・・・。」


なんとそれは大変・・・。




「夜会のたびに以前は吐き気に悩まされていましたので陛下は夜会の間中、護衛と私達


侍女兼影をそばに置くようになられました。もう5,6年になりますか。」


えええええ・・・陛下それは大変なご苦労を・・・。


というかサラッと、サラッとご自分たちを影とおっしゃいましたね?


影ってあれですか?我が皇国にもいますけど全ての隠密行動をやり遂げるあの影?


だとしたらわたくしに顔を見せたのはまずいのでは?


あ、夜会などにも出ているということは良いということ?ううむ。




「なので夜会なので私達影が出る時には全くわからないように変装いたします。毎回陛下が


連れて歩く女性が六人では数が足りなさすぎますので。」


へ、変装?


「護衛に紛れることもありますし、大概は顔を変えます。」


えええええ・・・・もう何がなんだかわかりませんわ・・・。






「ですが、お薬が効かない陛下の体質は皇女様にはご興味が尽きないのではないですか?」


うっ・・・。


「そ、そんな事は・・・。」


「ですが陛下の体質に効く薬があればそれはもはやどのような方にも効くものということでは


ないのですか?」


ううっ・・・。


「陛下はしかもとても辛抱強く皇女様のお世話を受けられると思いますわ。」


えええええ!!診放題ってことではないのかしら?まあ、そのために来たんですが!


「そのために私達がここでお顔を見せておりますのですから。」




ん?またそこに戻るのですか?


顔を覚えるほどに皆さま美しいのですから仕方ありません。


「ちなみに皆さま、今が変装中ということはございませんの?」


「はい、素顔でございますわ。六人とも。」


おおう・・・だから何故皆さま素のお姿を晒してらっしゃるのでしょうか・・・。




「私達は今度からサラ様と共に二人体制でナディアレーヌ様にお仕えすることになると


思います。」


え?何故二人体制?サラと合わせて三人も?!


あれよあれよと綺麗に髪を梳かされ綺麗に編み上げられていく。


私は未婚なので髪を全て上げることは無い。


少しだけクッと力を入れられコルセットを軽く締められた。




「さあ、ドレスを着ましょう。」










あ・・・わたくしまだどちらを着るか決めていなかったのですが・・・とほほです。


あまりにも色んな話が頭の中を駆け巡っているのですが・・・。






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