第7話

はああああああーーーーーーーーーーーーーーーっ。


脅威ってなんですの?だいたい先程取り繕って陛下と話すだけでも10年分の猫をかぶりました。


これ毎回やらねばならないということですわよね?


わたくし、私って固く言い換えねばならないくらい必死にならなければならないということです


わよね?素も出せない、味方も減ってしまうと。




分かってました。分かっていましたが、それでも言いたい!!!






「わたくし、出ません。」


「は?」






サラの声音が変わりました。怖い。




「だってだってだって!!わたくしそんな意図はないのです。


ただ、珍しい薬草がこの国なら採取できるかしらー?温暖な気候だしー。とか。


こっちで実験が進んだら我が国でも医療が更に進むかしらー?とか。


陛下を治すことが出来たらわたくし自分の国で修道院にでも入って悠々自適に暮らせるかしら


とか、そしたらいつかは自分のキッチンを持って自分で薬草入りのご飯を作って自活できるかしら


とか、色々考えていたのです!!」




「そうでしょうね、レーヌ様はそんな事を考えていたでしょうとも。」




「そう!わたくしには敵意はないのです。」


「あってたまるかでございますわレーヌ様。」


「わたくしには陛下をめぐる争いに参戦する意図はございません。」


「レーヌ様は!そうでございましょうね。」






さっきからサラが不穏な一言を返してくる気がするのですが気のせいでしょうかね。




「レーヌ様にはそうでも王妃様はそうではありません。」






や、やっぱりーーーーー!!!








「お母様・・・何故・・・。」






がっくりと更に項垂れる。もうこれ以上は床にめり込むしかありませんね。






神託のことはサラにもつたえてある。


この国で味方はまずサラが筆頭であるのだから。




「わたくしが陛下を望むことは出来ないってわかってるでしょう?お母様ひどい!!」


「ええ、レーヌ様から望むことはできませんわねぇ。」


「でしょう?大体そんな恐れ多いこと。陛下を見たらあまりの美しさに寿命が縮まります。」


「何をおっしゃっていますか。ご自分のご容姿を鏡で見たことがないとでも?」


「自分なんか見慣れてます。陛下は違うでしょう?あんな美しい方そういらっしゃいません。


わたくしなんか陛下のお目汚しになってしまいます。とりあえず毎日体調管理のために


お会いするのでさえ心苦しいくらいです!」




サラがため息を付きながら空を仰いでいますねぇ。






「はいはいはいはい。もうどうでもよろしいのでそろそろお風呂に放り込んでもよろしいですか?」




「は?聞いてるサラ?」


「はいはいはいはい。聞いていますとも。レーヌ様が不可思議なことをおっしゃってることも


分かっております。」


「サラ!!」






「みなさま、入っていらしてくださいませ。ではよろしくおねがいします。」


え?は?




ズラッと並んで入ってきた侍女が6人。


は?六人?






「まあ、なんと美しい御髪でらっしゃいますの?見事な銀髪でらっしゃいます!」


「この肌のきめ細やかさ、きちんとした日焼け対策してらっしゃいますわ。」


いいやそれわたくしが面倒くさいからとハーブ水をばしゃばしゃかけているだけ。


「ま!!なんて細い腰でいらっしゃいますの?コルセットのサイズを見直すかしら?」


「まあ、胸は・・・作ればよろしいですわね。」


え?胸っって作れますの?


「爪がちょっと荒れていらっしゃいますわ。皇女様爪だけはきちんとケアさせていただきますわ。」


「なんて美しい姿勢でらっしゃいますの?背中のラインも美しゅうございますわ。」


まあ、爪については薬草抜いてるし土いじってますしね。姿勢?どの修行が効いているのかしら?






「エルロッドウェイ皇国は美男美女の国と言われておりますが流石でらっしゃいますわね。


皇太子さまも皇子様もお美しい方々でらっしゃいましたわ。」






きゃあきゃあと侍女の方々がお兄様達を思い出したのかさわいでらっしゃる。




というか、我が国って美男美女の国と言われていますの?初耳です。






「皆様では、よろしくおねがいします。きっちりと。


きっちりと皇女様を磨き上げてくださいませ。」




サラがニッコリと笑顔で伝えるやいなやわたくしは湯殿にほおりこまれたのでした。




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