第17話 依頼
「お願いしたい依頼、ですか?」
「はい。ただこれは危険が伴うかもしれません。……いえ、正確に言えば危険かどうかもわからない、と言うべきでしょうか」
「……? とりあえず話を聞かせてください。俺でよければ力になります」
なんだかワケありみたいだな。
どの道なにかしらの依頼は受けようと思ってたんだし、話を聞く価値はあるだろう。
ドロテアさんも俺だからと相談してくれるみたいだし。
彼女はひと呼吸ほど間を置くと、
「……実は、ここ最近〈古代の枯坑道〉というCランクダンジョンで行方不明者が続出しているんです。それも低ランクの駆け出し冒険者を中心に」
「行方不明……。えっと、ダンジョンに強力なモンスターが住み着いたとか、そういう可能性はないんですか?」
「勿論、私たち連盟職員もそれを疑いました。高ランク冒険者を雇って調査を行ったものの、新たなモンスターがいる形跡はなし。以後も定期的な調査を行っているものの手掛かりを掴めず、未だに行方不明者が出続けています」
「そのダンジョンを封鎖するという方法は?」
「ラバノ周辺のCランクダンジョンというのは〈古代の枯坑道〉しかなく、そこを封鎖すればC~Dランクの冒険者たちが素材集めなどで困ってしまいます。連盟側としては、封鎖はできないと……」
なるほどな、そういうことか。
正直、連盟側も苦渋の決断なのだろう。
封鎖すれば冒険者たちからクレームを入れられ、解放したらしたで行方不明者が出る。
彼女の言い方から察するに、行方不明者の数はまだそこまで多くはないのだろう。
だからといって座視もできない。
しかしダンジョンに異常は確認されないという。
確かにこれは困った事態だな。
駆け出しが多いC~Dランク冒険者では、注意喚起しても限界があるだろうし。
そこで――俺に白羽の矢を立てたワケだ。
「〔
「――やりましょう、です!」
「え?」
俺が返事するよりも早く、エルヴィが口火を切った。
「同じ冒険者が消えちゃうなんて、放っておけない、です! シュリオ様なら、そんなのすぐに解決できるはず、です!」
「あの~、エルヴィさん……?」
なにやら異様に燃え上がっているエルヴィ。
たぶん冒険者としての第一歩を踏み出したことで、消えてしまった者たちに同族意識が芽生えたんだろうな。
……ま、いいか。
確かに放ってはおけない。
それに〔
原因を探るだけなら、危険はないかもだし。
俺にできるなら――やってみよう。
「……やれやれ、しょうがないな。わかりましたドロテアさん。その依頼、お引き受け致します」
「! あ、ありがとうございます!」
「ただ過度な期待はしないでください。如何せん、俺は〈古代の枯坑道〉ってダンジョンを知らない身なので。原因がわかったらラッキーくらいに思ってもらえればと」
「いいえ、シュリオ様ならきっと大丈夫です! 私、信じてますから!」
目を輝かせるドロテアさん。
い、いやに期待されちゃってるなぁ……。
そりゃあんな意味不明なレベルを見たら無理もないけど。
「勿論、私もお手伝いします、です! 一緒に行方不明者を探しましょう、です!」
「う~ん、なにが起こるかわからないしエルヴィはお留守番――」
「私も、お供します、です!!!」
グイグイくるエルヴィ。
ダメだこりゃ、離れてくれそうにない。
でも確かに、念願の冒険証と手に入れたばかりで留守番なんてしてられるはずもないか。
それに俺としても、調査の目は多い方が助かるかもだし。
そんなワケで、俺とエルヴィは二人で〈古代の枯坑道〉へと向かうこととなった。
なんだか流れでエルヴィとパーティを組む感じになってしまったが――彼女なら、なんだか大丈夫な気がするな。
ゲイツたちとは違って、素直で純粋だし。
それにここまで俺を慕ってくれるんだ。
その気持ちを無碍にするワケにもいかないよな。
俺はしばらく、駆け出し冒険者でもある彼女の面倒をみるつもりで一緒にやっていこうと決めた。
――ところでこの時、俺たちはまだ知る由もない。
そこで待ち構えているのが、想像を絶するモノだったなんて。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます