第2話 思い出の物は取り憑く
ゴールデンウィークも過ぎ去り段々と暖かさから暑さに変わってくる5月の後半。汗ばむ陽気も続くが吹いてくる風は妙に心地が良いもの。
「悠希。今日はアレかの?」
「そうだな。今日は少し買い物だな。」
「全く。お前の無駄遣いで出費が重なってアタイの飯まで削られるとは。」
「うっ…」
「それにお前の出費ってなんでこう金が掛かる物ばかりなんじゃ?」
「まぁ…うん。」
何も言い返せない。俺は今、斑と一緒に汗ばむ陽気の中、ある物を買い物に行く途中だ。斑は人間の姿で暑さが苦手なのか折り畳みの日傘を差している。
「まぁ。悠希と相棒になった時から、それなりの苦労は覚悟はしていたが除霊の仕事より生活面で苦労するとは予想外じゃ。」
「今月は生活面には困りはしねぇよ。だからと言って贅沢は出来ないけどな。」
「ふん。じゃあ今日は店で刺し身が安かったの。」
「分かったよ。今日の夕飯は刺し身の盛り合わせだ。」
「ふふーん。おっ!着いたようじゃな。」
俺が様があったのは、その辺を探せば幾らでもある、こじんまりとした古い喫茶店。俺の目的はコーヒーを飲みに来たんじゃないんだけどな。
俺は喫茶店の扉を開くとウエイトレス姿のツリ目の女がカウンターで黙々とコップを拭いていた。
「よう。弥生。」
「そろそろ来ると思ってた悠希。」
「相変わらず愛想がないな弥生は。」
「そう言う、お前も相変わらず弾の無駄遣いばかりしているな。」
「可愛げがねぇな。」
「ふん。少し待ってろ。」
弥生って言うのはここの喫茶店の女マスター。無愛想で口は悪いけどコーヒーと料理の腕は折り紙つき。
弥生は俺に無糖のアイスコーヒーとアイスココアを俺と斑に座るカウンターに置いて裏に行く。
俺はカウンター置かれた灰皿を近付き煙草を口にくわえて火を着けて一服。
「ほれ。いつものブツだ。」
「あぁ。有り難うさん。」
弥生はテーブルの上に木箱を置いて俺は中身を確認する。俺が弥生に頼んだのは霊清銃に使う純銀製の弾丸だ。
コイツの家は除霊師御用達の対除霊法具の武器屋兼喫茶店だ。弥生の親父さんが趣味で始めた喫茶店だが、一昨年に親父さんが亡くなり今は除霊法具と喫茶店をやっているのが弥生だ。
「それで今回は現金か?それとも現金に相当する金品か?」
「そうだな。今回はコレで良いか?」
「ほぉ…真珠か。それに中々の量だな。前の仕事の報酬か?」
「まぁな。その時の依頼主は真珠を作る宝石商の傘下の会社でな。海岸にある洞窟の不気味な声が聞こえるって事で除霊してきたのさ。それで報酬が真珠だ。」
「どれどれ…ふむ。コイツは中々の上等な真珠だな。形も色も綺麗だし傷も殆ど無いな。良いだろ確かに受け取った。」
「それは有り難うさん。」
「まぁ、こんな上等な真珠を沢山貰った事だし釣りで昼飯をご馳走してやるよ。飯は食ってないだろ?」
「おぉ!弥生!さすがだな!アタイは海老と貝柱のバジルパスタの特盛じゃ!デザートはイチゴパフェじゃ!」
「悪いね。俺はカルボナーラ。デザートは葛餅の抹茶の餡蜜で。そんでアイスコーヒー御変わりな。」
「ずいぶんと頼むな。」
弥生は目付きが悪くて無愛想で口は悪いけど決して悪いやつなんじゃないんだよな。俺が言うのもアレだけど愛想振る舞って優しい口調になればモテると思うんだよな。
どうでも良いか。俺には関係ないし。俺は煙草を吸い斑はアイスココアをストローで飲みながら弥生の飯を待つ。
それから俺は適当に雑誌を読みながらもアレから煙草を新しく吸い、斑はまだかまだかと待ち遠しくて仕方がない感じ。
因みに今は俺と斑以外は喫茶店には客は居なく閑古鳥が鳴いている状態だ。
雑誌の内容もヤレ政治家の発言やら芸能人のスキャンダルやゴシップばかりだ。
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