第一章:In My End Is My Beginning
(1)
『おい、クソ野郎ども、何が『韓国系マフィアと九州の暴力団の銃の取引の摘発に手を貸せ』だッ⁉』
こっちの指揮官が無線で怒鳴り散らす声が耳に響く。
クレームを入れてる相手は広域
「あのさ……『死霊使い』さんよ……。何とかなるのか、あいつら?」
同僚の築山がそう言った。
こいつの「異能力」は「変身能力」。
ライトブラウンの毛を持つ獣人の姿に変身出来る。
もっとも……「獣」と言っても肉食獣系なのは確かだが……猫・犬・狸・狐と色んな要素が混っていて……そして、上の階で暴れてるあの2人より人間に近い姿だ。
「……無理だ……」
「何で?」
「ここからでも判る。『気』の量がケタ違いだ。『魔法結社』系の犯罪組織のリーダー格でも、あそこまでの化物は居ない」
「どう云う事だ?」
「軽量級のボクサーが、格闘技系じゃないけど筋肉量が自分の倍以上のアスリートに殴りかかるようなモノだ」
「なるほど……」
「お前は、どうなんだ?」
「おい、俺程度じゃ……」
「ぐええええ……」
「ぎゃあああ……」
窓の外で悲鳴。
また、「レンジャー隊」の連中が血を流しながら落ちていった。
「同じ獣人系の変身能力者でも格が違うってか」
『レンジャー隊、更に2個小隊がロスト。まだ生存が確かなレンジャー隊員は……残り3名です』
後方支援要員の声は淡々とした……そして、どこか感情が麻痺したかのような口調だった……。
『おい、
「撤退していいっすか?」
『あのなぁ……』
「俺達に、ちゃんと情報を流さなかった
「
俺達は、対異能力犯罪広域警察機構「レコンキスタ」の中でも「異能力者」のみからなる殴り込み部隊「ゾンダー・コマンド」の一員だ。
通称「レンジャー隊」と並んで、他の
だが……「ゾンダー・コマンド」というドイツ語の単語は……直訳したら「特務要員」だが、裏には悪趣味な、もう1つの意味が有る。
それは……ナチスの時代の強制収容で「他の囚人の死体の始末」などの「汚れ仕事」をやらされていた囚人だ。
ゾンダー・コマンドは異能力者に加えて人並の常識と知能さえあれば……例えば親兄弟がヤクザだろうと「警察官」として採用してもらえるが……その代り、やらされるのは、汚れ仕事や裏の仕事ばかりだ。
今回も、何故か、九州と韓国のヤクザが大阪府内で取引をするらしい……と云う、その時点で何か裏が有りそうな
そして、詳しい情報が、地元警察と広域
よりにもよって、問題の「九州のヤクザ」と「韓国のヤクザ」の正体は「単純な戦闘能力なら東アジアでトップ3の獣化能力者」の内の2人、九州は久留米の白銀の狼こと久米銀河と、韓国有数の犯罪組織の大ボス……通称「
奴らには、並の銃は通じない。
傷を負わせる事が可能でも……高速治癒能力が有る。
そして……奴らの爪や牙を防げる防具は、ウチにも
どうやら、
「おい、外、見ろ、あれ……」
「ああ、助かった……。さぁ、とっとと帰るか……」
一〇年ほど前から活動を始めた「正義の味方」「御当地ヒーロー」どもが、何故、警察の商売敵なのか?
話は簡単だ。
奴らは、はっきり言って、レンジャー隊やゾンダー・コマンドや機動隊やSATより単純に強いし手際もいい。
「ああ、ごくろうさまです」
「毎度、すいませんね」
俺達は、特殊ケーブルを使って上の階に向かっている窓の外の「正義の味方」達に声をかけて……
「あ……しまった」
「どうした?」
「レンジャー隊と一緒に行動してりゃ、まだ、やりようが有ったかも……」
そう言って、俺は、使い魔である「死霊」を、そのあたりに転がってるレンジャー隊の死体に取り憑かせ……。
「♪かんかんの〜 ♪きゅ〜んれす……」
「やめろ、ボケ。こんな真似をやってんのを、まだ生き残ってるレンジャー隊に見られたら、俺達と連中の仲が、更に険悪になるぞ」
「でもさ……死体ぐらいは持って帰ってやった方が良くねえか?」
「だから、
「はいはい」
俺が術を解いた途端……ゾンビ化して俺達について来ていたレンジャー隊の死体は、バタリと倒れた。
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