【完結】森のくまさんと元OL

浅葱

本編

プロローグ~三か月が経ちました

 なんで田舎の人ってこういう広大な土地を持ってるのかな?

 木の枝打ちをしたり、下草を刈ったり、森ではやることが沢山ある。

 バサバサーッと音がした方を見れば、さっきまで木に登っていた子熊が落ちていた。下に私が刈った草とかがあったからうまくクッションになったみたいで怪我とかはなさそう。呆然とした顔をしていてなんかかわいい。


「ディーちゃん、気をつけてね~」


 この森は優しいからなんかあれば助けてくれそうだけど、それでも気をつけるべきだ。

 まだ子熊だけどすぐに大きくなっちゃうんだろうなと思いながら、汗を拭った。ちなみに名前の由来は「My dear bear」(私のかわいい熊)の略だ。そう、私のなんです!

 作業していると汗ばんでくる季節だけど、森の中はけっこう涼しい。

 今日はあっちの方まで進めようと思っていたら、声がかかった。


「咲良(さくら)さん、休憩しませんか?」


 太い、私の耳にとっても心地いい声の主は、隣の山の管理をしている大熊(おおくま)さんだ。


「はい。ありがとうございます」


 ともすれば無理をしてしまいがちになる私のことも管理してくれている、と思う。背はとても高く、身体もがっしりしていて(筋肉が素晴らしい)、口ひげだけでなくあごひげも生えている彼はまんま見た目が熊だ。そしていつもにこにこしているから、私は密かに「森のくまさん」と呼んでいる。

 ここに来てから少しは筋肉がついたと思うが、まだまだだ。

 いずれ大熊さんみたいに使える筋肉をつけて、いろいろできるようになりたい。

 小熊のディーちゃんは大熊さんの姿を見ると大熊さんによじよじと上り始めた。本当にディーちゃんは大熊さんが大好きだ。

 木の切り株に腰掛けて、大熊さん特製の野草のお茶とどんぐりクッキーをいただいて、この幸せな時間がずっと続くことを願った。



ーーーーー

「山暮らし~」というか「虎又さん~」のスピンオフです。未来のお話です。よろしくー

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る