ー ただ嫌われたくなかった、のに。
ママは本性がヤバイ。
毎日必ず誰かの悪口を言う。日頃から関わりのある親戚やパート先、芸能人の悪口を平然と言うのである。しかも悪口を言っている自覚が全くないのだ。
ママの悪口に付き合う私はいつも疲れていた。
ママの話していることが理解できないのだ。どうしても賛同できなくて、でも賛同しないといけない不安でいっぱいだった。
ママは私のことを根性がなくて性格が悪くて外見も悪い方だと評価していた。毎日色々なことで怒られていた。1日1回というレベルではなく、毎日何回も色々なことで怒られていた。このままじゃママに嫌われて居場所がなくなってしまう!ママに嫌われたくない私は毎日なるべく周囲の人の悪い部分を探して悪口を言えるようになろうと決心した。私は毎日必ず誰かの悪口を言うようになった。本心じゃなくても、ママに嫌われないためだったら頑張ることができた。
私が中学生になって思春期真っ只中のことだった。
「あんたって性格悪いよね。そんなに人のこと悪く言わない方がいいんじゃない。差別とかみっともない。」と突然言われた。悪口ではなくクラスへの悩みを話していただけなのに。衝撃とはこういうことかと思った。息が止まった。
え。え。え。
ママは毎日誰かの悪口を言ってるじゃない!
ママはいつも周りを差別してるじゃない!
確かに悪口を言うことに対して頑張っていた。だけど悪口を言うのはママの前だけ。だって興味のないことをママのためにしているのだからママに披露する以外に意味がなかった。
中学生になった私は同学年との関係性も難しくなってきて悩んでいる頃だった。ホームルームだったろうか。研修中だったろうか。自分が正しいとは限らないのだから他人に対して同意の強要はやめるべきだし無駄なく合理的に物事を進めるべきだと意見したのをきっかけに、クラス全員から私へのいじめが始まっていた。「死ね」「帰れ」と盛り上がってごみを投げてくる理不尽なクラスに悩んでいたのだ。誰に対して悪意も抱いていなかったのになぜ責め立てられないといけないのかという憤りをママに話したのだ。寄り添った言葉をかけてもらいたかった。
だけど違った。
「あんたって性格悪いよね。そんなに人のこと悪く言わない方がいいんじゃない。差別とかみっともない。」に足らず、「あんたも努力が足りないんじゃない?」だった。何を努力したら良いのかもうわからなかった。
この頃から、私のことは根性がなくて性格が悪くて外見も悪い方で常にうざくて悪口が大好きな差別主義者だという評価に変わったんだと思う。
いつもママは言う。
自分の娘なんだから私に悪意を持ったことがないって。
きっと私に対して悪意を持ったことがないのは本当なんだと思う。
正確にいえば私に対して悪意を意識的に持ったことがないのだ。ママは当たり前のように私を見下して何もできないバカだと悪意を持っている。けれどその悪意も日常の習慣になっているから当たり前で無自覚なのだ。
私は疲れてしまって段々と悪口を頑張るのはやめた。
ママはいつまでも毎日必ず誰かの悪口を言っている。いさめたこともあったが意味なんてなさない。
ママは悪口を言っている自覚が全くないのだ。
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