キミという遠近法

Tear

1.人生最悪の誕生日

俺は少し前まで物書きの端くれだった。


でもその筆を置くことになったのは、他ならぬ彼女の存在が大きかったから。


彼女の書く物語は世間に認められて、どんどんその世界で大きく羽ばたいてゆく。


二人は愛で堅く結ばれているように思えたけれど、その愛さえ、嫉妬には勝てなかったということなのだろう。


俺は自ら身を引く決意をする。

そして筆を置いた。


全てに幻滅するとはこういうことを言うのだろう。


それでも彼女は物書きとしてのスタンスを曲げることはなかった。その信念は、尊敬に値するだろう。


俺は俺でこれからこの喪失と向き合っていかなければならない。今まで楽しかった分の代償だろう。くしくも今日は俺の誕生日。生まれて以来最悪の誕生日。

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