デッドエンド・ニューゲイム

桜にく

Prologue.ニューゲイム

勇者になり魔王を倒して世界を救うファンタジーゲーム


『Infinite STORY』


グラフィックも美しく、また重厚なストーリーも人気で、発売してからしばらく経ってはいるが、未だプレイヤーは後を絶たない。

俺、山田やまだ りょうも、そんなプレイヤーの一人だ。

大学の長期休み、寝る間も惜しんでゲームを進め、やっと辿り着いた最終チャプター:魔王戦。

しかし健闘も虚しく、全滅してゲームオーバーになってしまった。


「直前でセーブしておいて正解だったな……」


ゲームオーバーになった場合、最終セーブポイントからの再スタートとなる。

……はず、なのだが。


ない。

セーブデータが、ない。


画面には

▶はじめから

▶もどる

の二択しかない。


……ここにきてデータロスト……!

バグか何かかと思いネットで検索するも、該当なし。

そういった報告や関連記事は一切なかった。


「はぁ〜〜〜〜………まあ、こういうこともある、よな……」


深い溜息をつき項垂れながらも、俺は

▶はじめから

を選択した。


もう一度ストーリーを楽しもう、そう思っていると、最初に見たものとは違うムービーが流れ始めた。



■■■は消え 終わりが始まる

全ては余興 全ては無駄な足掻きと知れ


こんにちは 世界を救えなかった君


哀れな■■■


君がこれから目にするのは

君が ■した 救えなかった世界


───さあ、もう一度 世界を■■旅に出よう!



薄暗い背景に、白と赤の文字が浮かび上がる。

所々伏字になっていて、ちゃんと読めない。

……誰視点のムービーだろうか?

初めはたくさんの仲間と〜とかそんな感じだったし、背景も綺麗な空とか山だった気がする。


何か条件をクリアしたことで、隠しルートが開放されたのかも。


このまま、ゲームを進めてみようか?


悩んでいる合間にムービーは終わっていて、次いで音声が流れた。


「ああ、勇者よ!どうかもう一度、世界をお救いください!」


このゲーム、ボイスなんて入ってたっけ?


「あなたは、助けてくれますか?」


……は?


「あなたは、助けてくれますか?」


質問されているのに、選択肢のコマンドが出てこない。


「あなたは、助けてくれますか?」

⚠︎音声入力をしてください


家庭用ゲーム機で、音声入力?

俺、マイクとか繋げてないし……なんだ、これ?


でもゲームも進まないし、とりあえず何か言っておくか。


「俺は、助けます」

「音声入力を確認しました」

「うわッ!」

「ゲームを起動します ゲームを起動します」




………………。



…………。



………。



……?



あれ、寝てた……?


「お目覚めですね、勇者 リョウ よ」

「……は?」

「私はダリア。勇者の導き手、あなたの案内を仰せつかっています」




ようこそ Infinite STORY の 世界へ

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