第2話 だから俺達は負ける

第2話 だから俺達は負ける Part1

<教室>


「層上」


「ん?」


「明日、空いてる?」


「うん」


瀬山との勝負から数日。

このところ、充快はわかりやすく元気がない。


**********


<廃墟>


数日前。


「だめだ。層上の奴、完全に意気消沈って感じだ」


「そうか…」


「自信なくなっちゃったみたいなんだよ。

『俺には六繋天を集めるのは無理なんだ』って」


「あの瀬山って男が提示した条件がなければ、【蒼穹の弓獅】のカードも奪われてたわけだしな。

結果的には、敵の情けで救われたのかも」


「(でも、あの人のあのデッキ…

俺が戦ったとしても勝てるかどうか…)」


「風増。お前も不安なのか?」


「え…。

知介さんは不安じゃないの?」


「正直俺は、半々かな。

相手がどんな手を使ってきても、勝つ時は勝つし、負ける時は負ける。だったらもう、開き直るしかないじゃん?」


「あんた、すごいな」


二人がしばらく黙る。


「そうだ。気分転換っつっていいのかわかんないけど、いい場所があるから二人で行ってくれば?」


**********


澄湧壮人すみわきそうと


その青年のケータイが鳴る。


「もしもし…え! もう?」


「案ずるな。既に私が一勝している」


「いや、でも…」


「わが社に入りたいと言ったのは君ではないのか?」


「だけど、こう早いと…」


「とにかく。一度承諾したからには、私の指示に従ってもらおう」


瀬山は電話を切る。


「(彼のように臆した人間ほど、追い込まれた時の力は計り知れない。ただの腰抜けかそうでないのか、この一戦で確かめさせてもらうぞ)」


**********


<郊外>


街から離れた森の中。人の気配がまるでない。


「こんなとこまで連れてきて、何があるってんだよ」


「知介さんの話だとこの辺りなんだけどな」


**********


<回想>


「人里離れたそのやしろには、勝負事における神様がいるって噂がある。

そこに行って二人でお祈りしてこいよ」


「社…神…。

呆れた。知介さんがそんなこと言うなんて」


「ホントだって!

行ったらなんかいいことあるかもしれないぞ」


「そんなんで勝てたら誰も苦労しないって」


「でも何もしなくたって、どうせ現状は変わらないんだぞ。

なら散歩がてら、一息ついてもいいんじゃないか?」


「…」


**********


<社>


壮人は突然の指示に困り果て、一人この地に足を運んでいた。


「はぁ。何やってんだろ、俺。

迷信なんて信じてこんなところに…」


どこからか人が話している声が聞こえる。

慌てて身を隠す壮人。


「神様なんて、ホントにいるの?」


「それは俺がききたいって…

あ! ここじゃない?」


充快と風増は探し求めていた社に到着した。


「(あれ、あいつら。

層上充快と鞍端風増だよな。

例の勝負までまだ日があるけど、ここで勝負した方がいいか?

ここで二人を倒して2勝すれば、あの人も俺を認めてくれるんじゃ…

いや、今の俺であいつらに勝てるのか?

どうしよう…。

よし、行くか!)」


壮人が姿を現す。


「お、おい」


二人が彼を見る。


「は、はい…」


「六繋天を賭けて、この俺と勝負してもらおう」


「あんた、あの人の仲間か?」


「この勝負、引き受けてもらおうか。

二人まとめてかかってこい。俺が勝ったら2勝分をもらうぞ」


そう言って彼は起動スターターを手に取るが、落としてしまう。


「え…」


呆然とする充快と風増。


その時、社から光が放たれ、三人の前に男が現れた。

どこか人間らしさがない不思議な感じがする。


「え、誰?」


「どうした? 君達は私を探しに来たのではないのか?」


「ってことは…」


「この人が…」


「社の神…」


「いかにも」


その男は答える。


「見たところ君達は、自分の進む道に迷いを感じているようだな。否、道すらも見えていないの間違いか」


皆の顔が曇る。


「どうだ?

彼の代わりに私と勝負するというのは?」


守り神は壮人を見ている。


「え!?」


思わぬ言葉に壮人は慌てる。


「それって、俺と鞍端があなたと戦うってこと?」


「そうだ」


「鞍端はそれでもいい?」


「俺はいいよ」


「君は、自分の勝負を他人に預けるのは不満か?」


「(冷静に考えてみれば、2対1の勝負なんて圧倒的に俺の方が不利なのに、何やってんだろ…

ここで俺が戦ったとして、負けたら2敗。

だったら、ここはこの人に任せた方が…

勝負事の神っていうなら、俺なんかよりよっぽど強いはずだし…)

俺はそれでも構いません」


「決まりだな。

それでは始めよう」


「五仕旗…」


「3rd Generation!」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る