第2話 格闘戦士

第2話 格闘戦士 Part1

「まず、ゲームの主力となる先兵モンスターカードは、メインのデッキとは別の先兵モンスターデッキに入れる。

青色のカードがモンスターカード。

ちなみに、先兵モンスターカードは厳密には"先兵"って書くけど、テキストにはモンスターとかモンスターデッキとか書いてあるよ」


「なんで?」


「見やすいからじゃない?分かんないけど」


「ふ~ん」


「で、モンスターデッキのカードは…」


「1枚以上12枚以下だっけ?」


「そうそう」


「じゃあ、1枚だけでもいいの?」


「大丈夫。大丈夫だけど、五仕旗はモンスターで戦って相手にダメージを与えるのが基本だから、特別な理由がない限り、1枚ってのは聞いたことないかな」


「もしモンスターが全部なくなって召喚できなくなっちゃったら、負け?」


「負けにはならない。その場合、"架空先兵イマジナリー・モンスター"っていうモンスターを召喚するんだ。

カードとしては存在しないけど、その場に居るものとして扱われる」


「うん」


「攻撃力0で効果もないから、実質負けみたいなもんだけどな。

次にメインのデッキについて。デッキは40枚以上で構築するんだ。入れられるカードは赤色の攻撃こうげきカード、白色の規約きやくカード、黒色の伏兵リアクターカード、黄色のしろカードの4種類」


「それと青色の先兵モンスターカードを合わせて5種類のカードで戦うんだね」


「そう。

モンスターデッキとメインデッキの両方に共通するのは、同じ名前のカードは3枚までしか入れられないってこと。

ただ、攻撃カードだけは例外で、攻撃カードは4枚以上入れても問題はない。

ただし、攻撃カード自体は、デッキに12枚までしか入れられない」


「え~っと…」


「たとえば、層上のデッキなら、中距離攻撃がメインだろ?

だから【中距離攻撃】カードを12枚、上限いっぱいまで入れてもいいってこと」


「わかった」


「次にターンの流れなんだけど…」


そう言って風増はノートの上にターンの流れを書く。


ドローフェイズ

   ↓

サモンフェイズ

   ↓

メインフェイズ

   ↓

バトルフェイズ

   ↓

(モンスターの召喚)

   ↓

ターン終了


「まず、ドローフェイズ。

手札を全部戻して、シャッフル。その後、手札が5枚になるようにドロー」


「TURN3からだよね」


「そう。そしてサモンフェイズ。

固有ターンを意識してモンスターを召喚。

次はメインフェイズ。

城カードは自分のメインフェイズにだけ使えるぞ。

ここで規約カードと伏兵カードを使うこともできる。

っていうか、この2つは互いのターンに自由に発動できるんだけどね」


充快は真剣に聴いている。


「バトルフェイズ。

まず、攻撃側、迎撃側の順で攻撃カードを使用して、モンスターの特殊攻撃状態を解放できる。

その後、モンスター効果、規約カード、伏兵カードとかを互いに使いあう。一つ注意してほしいのは、ここのタイミングではもう攻撃カードは使えないってこと」


「バトルフェイズに入ってすぐのタイミングでしか使えないってことでいいの?」


「そういうこと。

それで、もうどっちも発動しませんって状況になったら勝敗判定を行う」


「勝利、敗北、相打ちってやつだよね?」


「うん。

攻撃力が高い方が"勝利"、低い方が"敗北"。

敗北したモンスターは破壊されて墓地へ。

さらに敗北したモンスターを従えていたプレイヤーは、勝利したモンスターの攻撃力分のダメージを受ける。

じゃあ、"相打ち"の場合は?」


「お互いのモンスターが破壊されるけど、ダメージはなし…

でいいんだっけ?」


「正解。じゃあ次」


「なんか、鞍端、家庭教師みたいだね」


「そうかな?

それじゃあ次は、バトルフェイズ後の召喚についてな。

攻撃側の場にモンスターが居なければ、バトルフェイズが終わった後にモンスターを召喚する必要がある。

この場合も、固有ターンは意識しなければならないから注意」


「迎撃モンスターに攻撃モンスターが破壊された時とかに行う召喚だよね」


「そう。

そんで、ラストはターン終了」


「ここは何するの?」


「ターン終了って言う」


「ターン終了って言うんだ」


「そう。ターン終了って言う」


充快は物足りないような顔をしている。


「じょ、冗談だよ。

まぁ、ターン終了って言って、自分ターンが終わることを伝えるのはホントのことなんだけど、たとえば、"このターンの終わりまで攻撃力が上がる"っていう効果の場合、このタイミングで効果が切れる。

相手に効果が終わるってことをちゃんと伝えると、丁寧だな。

言わなかったとしても、失礼ってほどじゃないけど」


「分かった」


「他に何かききたいことはある?」


「ん~、今は特にないかな」


「それじゃ、また疑問が出てきたらその都度…」


「あ! そういえば、モンスターが戦闘で破壊されなかったらダメージを受けないって言ってたけど、あれは?」


「あー、それは…

たとえば、自分が迎撃側で、相手の攻撃モンスターに自分モンスターが敗北したとするじゃん?」


風増がノートで補足説明をする。


【自分の迎撃モンスター】攻撃力300

        vs

【相手の攻撃モンスター】攻撃力500


「で、この場合、自分モンスターの方が攻撃力が低いから、勝敗判定は自分モンスターの"敗北"で、本来なら破壊されて、攻撃モンスターの攻撃力のダメージを受けてしまうんだけど…」


「カードの効果とかで破壊を防いだ場合は、ダメージを受けずに済むってこと?」


「そういうこと」


「破壊されなければ、ダメージはなしか。

オッケー、ありがとう」


「また何かあったらきいてくれ」


「うん。ありがとう」


「今日教えたことは基本的なことだから、後でよく復習しといて」


「やっぱ家庭教師じゃん」


風増が話題を変える。


「層上、今日って暇?」


「うん、時間あるよ」


「じゃあ、授業終わったら、うち来ない?」


「え、行っていいの?」


「うん。まだまだ覚えてもらいたいこともあるし」


「じゃあ、お邪魔しようかな」


**********


<鞍端家>


風増の家とおぼしき家の前で、二の足を踏む充快。


「(え…本当にここであってるよな?

これ、家なのか…)」


"家"。

そう聞いて、一軒家、それかアパートやマンションを想像していたのだが、彼の目の前には、豪勢な和風の屋敷があった。


表札が"鞍端"と語っているのだから、この屋敷は"鞍端"のものなのだろうが、こうもイメージと違うと人差し指がインターホンに近づくのを躊躇ためらう。


人差し指は完全に怖気付いてしまったので、代わりに親指が先陣を切った。


「はい」


「あ、風増君の同級生の層上と申します。

風増君はいらっ…」


「ああ、今行く!」


しばらく待っていると、見慣れぬ家のドアから、見慣れた鞍端が出てきた。


「おお、入って入って」


「お邪魔します」


玄関は広く、その奥に続く空間はどこまでもどこまでも広がっていそうだった。


**********


<応接間>


「驚いたよ。鞍端ってお金持ちだったんだ」


「金持ち? どうだろうな?」


「いや、こんな広い家、見たことないよ。

俺とおんなじ歳で、こういう立派な家に住んでる人もいるんだーって思ったもん」


「俺が建てたわけじゃないけどな」


充快が出されたお茶を飲む。


「そういえば気になってたんだけど、"五仕旗"ってどういう意味?」


「"五つのカードがプレイヤーに仕えて一つのチームとなり、勝利の旗を目指す"って意味らしい。

ほら、カードって5色だろ?」


「へぇ~、そんな意味があるんだ」


「うん。元々、人間はモンスターと一緒に暮らしていたんだけど、時が流れて人間だけになっちゃったんだって。

まぁ、そういう設定かもしれないけど」


「人がモンスターと生活か…」


充快は聞き流している。


「そんじゃあ、早速…」


**********


<中庭>


その庭も充快の想像を越えていた。

地面には小石が敷き詰められ、池には魚が泳ぐ。

自分の家に不満はないが、あまりの差に、これも起動スターターの力であってほしいとさえ思った。


「ん? 鞍端の起動スターターはどれ?」


「ああ。これこれ」


風増が足元を指差す。


「え…どれ?」


「これだよ」


「え…石!?」


「違うよ! 靴、くつ!」


風増はスニーカーを指差していた。


「あー、靴か…って履くタイプの起動スターターもあるんだ!

いよいよ起動スターターって何なの?」


「自分の好きなものを選べるのは楽しいところだよな。

起動スターターのコレクターがいるくらいなんだぞ」


「ふ~ん」


話しながらデッキをセットする。


「いくぞ、五仕旗…」


「3rd Generation!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る