第118話 死闘の果て


(三人称視点)



「――――」


「――――」



 シテンとミノタウロスが、至近距離で立ち止まっていた。


 シテンの右腕は激突の衝撃に耐え切れず、短剣ごと粉々に骨を砕かれていた。

 そして、ミノタウロスは――肉体の大部分を、魂ごと解体されていた。


「グ……フ、ハハッ、糸一本分、届かなかったか――」


 激突の直前、ミノタウロスは目撃していた。

 シアとシテンを結ぶ『共視の糸』。

 結びなおしていたそれをシテンが手繰り寄せ、咄嗟にミノタウロスとの間に挟み込んだのを。


 元はシアの拘束用ということもあって、それなりの強度を持ったマジックアイテムだった。

 それがほんの僅かに、シテンとミノタウロスの接触のタイミングを遅らせたのだ。

 そして、勝者と敗者が定められた。


「ッ! ハアッ、ハアッ……」


「見事だ……シテン。人類の英雄よ。お前は確かに、この俺を正面から打倒し、勝利を手にしたのだ」


 ミノタウロスが生み出した岩壁が、ボロボロと崩壊していく。

 術者の消滅と共に、地形改変の影響が解除されていく。


「感謝するぞ、シテン。冥府の底から呼び起こされ、偽りの生を過ごすだけだった俺に、お前はこの上ない終わりを与えてくれた。――満足だ。心の底から満たされているよ」


 ミノタウロスという器に入れられていた魔王の魂は、その七割方を解体され、もはや修復不可能な致命傷を負っていた。

 残ったミノタウロスの身体が、白い結晶――塩の柱になっていく。



「俺の死によって、人類と魔王の戦いは転換期を迎える――【墓守パンドラガーディアン】も、生き残った熾天使共も、本格的に動き出すだろう。そしてお前は、否応無しにその渦中に放り込まれることになる――」



「お前の生き様を、冥府の底から嘱目しょくもくするとしよう。さら、ばだ、シ、テン――」



 最期にそう言い残し、ミノタウロスは完全に塩の柱と化し、崩れ去った。

 後に残されたのは、砂のように崩れた白い残骸のみ。

 再生することも、転生することも、もう二度となかった。



「ハァ……ハァ……上等だよ、ミノタウロス」


 そして、荒い息を整えながら、シテンは宣言する。


「僕の家族をおびやかす存在は――誰であろうと、バラバラにしてやるよ」



 そして、気力体力共に限界に達したシテンは、その場にぶっ倒れた。



「シ、シテンさん!? しっかりしてください! シテンさーん!!」


 意識を失ったシテンを、慌てて介抱するシア。

 お互いにボロボロの状態だが、それでもシテンは、大切な家族を救い出すことができたのだ。


 【墓守パンドラガーディアン】ミノタウロス戦、決着。

 勝者――シテン。



ミノタウロス戦決着!!!!

めっちゃ時間かかった!! ここまでお読みいただきありがとうございました!!


あとは数話、エピローグみたいなのを投稿して、三章は終わりです!!

あとちょっと、お付き合いいただければと思います!!


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もうちょっとで2000pt行きそうなんです! 何卒よろしくお願いします!!

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