47 暴れる極龍
極龍……か。極水龍の話によりゃあアイツは封印されていたはずだが。
「何故極龍が暴れているのかって顔だな」
「ああ。彼は極水龍殿たちの仲間なんだろう? ……まさか洗脳されちまったってのか?」
「そのまさかだ。極龍は龍の巫女であるギルド長の体に魂を宿すことで復活を果たしたんだが、まさかその極龍が洗脳されちまうとはな。対策はしていたはずだが駄目だったか……」
龍の巫女ってのが何だかわからねえが、とにかくなんやかんやあって極龍が洗脳されたってことだな。今はそれだけわかれば良い。しかし対策したにも関わらず洗脳されたってのは厄介だな。状況次第じゃ極水龍も危ないってことだ。今ここで極水龍までやられたら流石に不味いぜ。
「ギリギリのところだったが、ショータ殿が戻ってきてくれて良かった。極龍と一緒に軍勢が攻めて来て、どうにもならなかったんだ。民の避難は済んでいたが、その避難先も今こうして襲われている。このまま攻められ続けたら俺だけでは守り切れなかったところだ」
「すまない。もっと早く戻ってこられていれば……」
「良いんだ。元はと言えば俺があの通信を罠だと気づいていれば……いや、今は目の前の事に集中しよう」
ああそうだ。国はあの状態だが、避難が済んでいるのなら民は残っている。最悪一からやり直すことは出来るんだ。つまりこここそが最終防衛線。正真正銘ここで守り切らねえと俺たちの負けだ。
「行くぞ!」
「ああ!」
極水龍と左右に分かれて飛んだ。左右から同時に攻撃すれば少なくともどちらかへの対処は遅れるはずだ。
「ぬぁっ!?」
しかしそんな考えは容易く打ち砕かれた。俺と極雷龍による攻撃を極龍は同時に対処してきたのだ。速さも火力も申し分ない強力な一撃だったはずだ。
「ふぅ……こいつは一筋縄じゃあ行かねえか」
「極龍は俺たちプライムドラゴンの中でも、一番魔力の扱いに長けているからな。魔力の流れで俺たちの行動を察知しているんだろう」
「ならどうすりゃ良い……魔力無しでの攻撃はとてもじゃないが通用するとは思えねえ」
奴が魔力を元に俺たちの行動を察知しているのなら、どんな攻撃をしようが魔力が絡んでいる限り奴には致命傷を与えることは出来ないだろうな。しかし魔力を絡めない攻撃で倒せるほどに余裕な相手じゃあねえのは確実だ。クソッ……。
「オオォォォォ……!!」
「くっ……魔力が集まっている……」
「不味い、あれは極龍の持つ攻撃の中でもかなり火力が高い……! まともに受ければ俺もショータ殿もただではすまん!」
「そうは言っても、避けたところで向こうの避難民はどうなる!?」
俺たちの後方には王国の人たちが避難している。バリアは張ってあるみたいだが、極水龍の焦り具合からして恐らくこの攻撃は耐えられないだろう。何よりあそこにはリーシャがいる。絶対に守って見せると約束したんだ。……ならすることは一つ。
「獣宿し『蝕命』!!」
「無理だショータ殿!」
「極水龍殿は離れてくれ! あの攻撃は俺が抑える!」
極水龍を突き飛ばして攻撃圏内と思われる範囲から出した。蝕命を使えば魔力自体は霧散させられるはずだ。プライムドラゴンは属性そのものを操るから、流石にノーダメージと言うわけには行かねえだろうがな……。だがそれでも、やるしかねえんだ。
「ウォォォォォ!!」
「ぐっ……あぁ?」
極龍が放った攻撃はどうやら蝕命によって全て霧散させられたようだった。
「どういうことだ……?」
「今のは一体……」
「ウゥゥゥ……」
極龍自身もこの状況には納得していないようだ。
「一瞬で魔力が消えたのか……? だがそんなこと、一体どうやって」
「なあ、極龍の攻撃には何の属性が含まれているんだ? 俺の力は魔力は無効化できるが属性は無効化出来ないはずなんだ。プライムドラゴンは属性そのものを操るんなら今のはおかしい……」
「何だって? ま、まあいい。彼は属性は使えない。代わりに魔力の扱いに長けていて、ほぼ無限に近い魔力を持っているんだ」
属性を持っていない……? なるほど、それで攻撃を完全に霧散させられたのか。
「それよりも魔力を無効化と言うのは?」
「あ、ああ。俺の持つ力の一つに魔力を吸って霧散させる力があるんだ。こっちだとマナツカミってのに似た力があったか」
「そういうこと……なのか? だがあれほどの魔力を……まあ、ショータ殿がそう言うならそれで良いか。そう言う事にしておこう」
「それよりも、アイツがほぼ無限の魔力を持っているってのは本当なのか?」
極水龍は確かに、ほぼ無限の魔力を持つと言っていた。仮にそうだったとしたら、かなり厄介な……いや、厄介どころじゃねえ。勝ち目がないと言っても良いんじゃないか?
「確かにそうだ。極龍は体内に魔力を半永久的に生み出せる魔石を持っていてな。それによる膨大な魔力を使って身体能力や回復能力も上昇させているんだ。だから属性は使えないがその分を十分に補える能力がある」
「なるほど。ならその魔石さえどうにか出来れば良いってことだな」
魔力を生み出す魔石ってんなら、魔力探知で反応が出るはず……ビンゴ! あの場所さえぶち抜けば……!
「獣宿し『天雷』」
「オオオォォォ!! ウガアァァ!」
極龍は俺が何をしようとしているのか気付いたのか攻撃を仕掛けてきた。直接自身の命に関わることだからか今まで以上に本気で攻めて来ている。だが天雷であれば何とか避けられる……!
「ここだァ!!」
魔力を集め、光の束として放った。
「グァァァッッ……!!」
魔力探知で魔石があると思わしき場所を吹き飛ばした。ピンポイントで攻撃出来たようで、魔力を生み出せると言う魔石を体外に吹き飛ばすことに成功した。これでヤツの力を大きく削げるはずだ。
「おお、流石は何度も何度も私たちの邪魔をして来た者だけあるねえ」
「てめえは……!」
聞き覚えのある声。人をイラつかせることに特化したようなこの声。忘れもしない……あの学者のそれだ。
「せっかく極龍を洗脳出来たのに、もうやられちゃったよ……なんて、これこそが目的だったんだよね」
「何だと?」
奴がそう言った瞬間、地面から何かが飛び出し極龍の魔石を飲み込んだ。
「なッ……!?」
「さあ、フレイムオリジンよ。さらなる根源へと至れ……!」
極龍を飲み込んだのはフレイムオリジンだった。しかしその体はボロボロであり、纏う炎は今にも消え入りそうな程に弱々しくなっている。だがその様子もすぐに無くなり、奴は以前見た時よりもさらに禍々しい姿へと変化した。
「ふふっはっはっは! これでまた根源へと近づいた! ……君のおかげだよショータ、ありがとう。フレイムオリジンでは無理やり受肉させた極龍には勝てなかったんだ。魔石が欲しかったんだけど、勝てないんじゃどうしようもなかったからねえ」
「……それで俺を利用したってことか」
「そうさ。君の力ならきっと極龍すらもどうにかするだろうと踏んでいた。だからその時を待っていたのさ」
チッ、またしても奴の思い通りってことかよ……!
「さあ、フレイムオリジン! さらなる強化を得たその力を見せてくれ!」
「ウガアアァア!!」
「くっ……!?」
奴は以前と同じように炎を生み出し俺へと飛ばして来た。動き自体はそう変わっていないようだが、とにかく量が多い。
「こっちだ!」
極水龍がフレイムオリジンの気を引き、自身に向けられる炎を水で消して行く。
「俺だって最上位種だ。その程度の炎、消してやろうぞ!」
極水龍はそう言って放たれ続ける炎を水で消していく。しかし口ではああ言っているが、フレイムオリジンが極龍の魔石を飲み込んだという事は彼の魔力量では絶対に勝てないだろう。……いや、きっとそれは本人でもわかっている。それでも精神で負ける訳には行かねえんだ。俺だって負けちゃいられねえ!
「獣宿し『蝕命』!」
ヤツの炎が属性魔法だってのは既にわかっている。蝕命で霧散できるのもな。だから蝕命の力を使って距離を詰めつつさっき飲み込んだ魔石をどうにかする……それしか勝ち目は無い。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます