私、地味モブなので。~転生したらなぜか最推し攻略対象の婚約者になってしまいました~
降魔 鬼灯
第1話 地味モブと最推し
「例のブツは?」
目の前のおっそろしく綺麗な少年がソファーに腰掛けすらりと伸びた足を組んだまま問いかける。プラチナブロンドの真っ直ぐなサラサラの髪にアメジストの瞳。まさしく天使降臨。
しかし、その表情は尊大でその麗しい外見とのギャップが甚だしい。ギャップ萌えなんて、前世では思っていたけど。現実で結婚するなら三低が良いに決まってる。
腰が低い…と、あれ後二つなんだっけ?
「私が話しているのに、上の空とは良い度胸だな、マーガレット。」
シルビオ様どうされたのでしょう?冷気がだだ漏れでおられますよ。ふるふるとふるえながら、私は懐から、例のブツを取り出した。シルビオ様が何故か気に入ってしまった、串に差したグロテスクなスルメの足を。あぁ、私のスルメちゃんが。
「あの、恐れ多くも、ランドール侯爵の嫡嗣たるシルビオ様にこの様なものを差し上げるのは…。」
「マーガレット・モルガン伯爵令嬢。君は伯爵令嬢でありながら、この様なものを所持していると私がここで大声を上げたら君の立場はどうなるんだろうな? ん?」
冷気がブリザードに変わった。
もはや、私のなけなしの意思など、ごみ屑だ。さようならスルメちゃん。
「シルビオ様、どうぞ。証拠隠滅してくださりませ。」
泣く泣く私はスルメをシルビオ様に献上した。スルメを受け取る仕草すらも尊い。
美しい口元にグロテスクなスルメの足が不釣り合いで蠱惑的だ。ただ咀嚼しているだけだというのに、ドキドキが止まらない。失神してしまうかも。流石、前世の最推し様。前世、彼につぎ込んだ金額を思えば、私のおやつが減ったくらいなんともないですよ。はい。
シルビオ様は私が前世嵌まった乙女ゲームの最推し攻略対象だ。
そして、ゲームに登場したかどうかさえ記憶にない程のモブが私、マーガレット・モルガン伯爵令嬢である。ご想像の通り転生者だったりする。
私は前世をほとんど覚えていない。
前世をおぼろげながら思い出したのは、シルビオ様の婚約者を探すお茶会に呼ばれた時だった。
シルビオ様を見た時にその美しさに衝撃を受けて思い出した。最推し尊いって思って固まった当時の自分に、捕まる前に逃げてー!って教えてあげたい。
ストーリー展開に何ら関係のない私と最推し様の間になんらの関係が出来るなんて思いもよらないじゃない?
だから、ご令嬢方がみんなシルビオ様の周りに集まってる様子を遠くからひっそり眺めることにしたのよ。
大好きだった最推しを眺めながら、お茶する。なんて贅沢なんだろう。前世私はどれ程の功徳を積んだんだろう?お茶もお菓子も一級品で、いつしか夢中になって頂いてると。
「マドレーヌ、トリュフ、マカロン、フルーツのタルト、シャルロット、チョコケーキ」
さっきまで頂いていたお菓子を順番に列挙していく声が聞こえた。嫌な予感がして上を向くと、シルビオ様
が微笑んでいた。目の奥は獲物を見つけた肉食獣のよう
だったけど…。
それから、どうなったか記憶にないけど、気がつけば私は婚約者になっていた。私モブなんですが。確か、ゲームではシルビオ様に婚約者なんていなかったはずでは?
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