第8話 しーちゃんside

俺は頭が悪い。

最近気づいた……。

声を聞くだけ、傍にいるだけで、ずっとこのままお前と一緒にいれると勘違いしていたんだ。


キヨは俺なんかと違ってとんでもないお金持ちの家の人間だ。

だから、俺見たいな親もいないし学も無い『男』とは一緒にいられない。


ある日キヨの父親の秘書サンが俺を訪ねてきた。

秘書サンは「『キヨ』と別れてくれ」って俺に頭を下げながら、『キヨ』のこれからの『幸せ』について詳しく教えてくれた。


これからの『キヨ』の『幸せ』は父親の会社を継いで、両親ともに揃っているお家柄の良いお嬢様と結婚して、子供を作り、その子が会社を継ぐことなんだって。


確かに。

その方が『キヨ』の『幸せ』だ。


ストンっと何かが隙間にちょうど埋まるように腑に落ちた。


俺に出来ることって何だ?けんか?この中学生の頃から変わらない見た目?変態を引き寄せること?

最後は俺の周りの皆に呆れ果てたか如くに注意されることだ。


何もない。

今住んでる部屋も『キヨ』の部屋。

今している仕事も何故か『キヨ』が探してきた。

目的もないまま毎日を過ごしていた俺。

今『キヨ』に甘えたままの日常を続けて残されるモノは何?

振り返ると振り返るだけ後悔しかない。


『キヨ』と毎日過ごすのは俺は少し恥ずかしいくらい『幸せ』


でも『キヨ』は違う。


頭も悪く、俺みたいに何もない人間じゃない。


今みたいに俺と『キヨ』が一緒に暮らしていたらだめだ。

でも、お金、仕事、何もかもが足りないし持っていない俺。

今すぐ部屋を出ていくのも生きていくのも難しい。

だから秘書サンにお金の代わりに勉強を教わることにした。

勉強して高校入って大学に行く。



もしかしたら『キヨ』の会社に勤められるかもしれないだろ?

遠目でくらい見れるかも知れないしな……。


浅はかで頭が悪い俺はまだ『キヨ』と全く関わらない生活が思い付かないんだ。


今は何もない俺だけど、大学行って仕事もしっかりとした大人になれば……『友達』くらいになれないかな?


なぁ『清晴』?


俺とお友達になってくれないか?


そうしたら……、お前が結婚しても子供が生まれても傍にいられるだろ?

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