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低い木が繁る暗い森。

その奥の空き地にポツンと建っているあばら家の、小さな庭のすぐ側の部屋に、男が筆を持って座っていた。

庭に見える凍ってしまった池に花火が映る。

その艶やかさとは裏腹に、彼の心は重い決断をしようとしていた。

ーそれは即ち彼の今後の人生に関する大事なことである

未だに齢18歳ではあるものの、この国に、ひいては幕府に疑問を抱いていた彼は、回覧板と共に回ってきた革命人殺しの情報が頭から離れずにいた。


花散らむ言えど切れなむ人の緒よ美しからず花の絶ゆれば


ここ最近、そこらかしこで百姓や下人による一揆、所謂革命の報せが多く回ってくる。

昇は今の幕府に疑問を抱いてない訳では無いが、その為に血を流すことに意義を感じることが出来なかった。

それが、何故、今回は筆を持ってきてまで悩んでいるのかと言うと、それは友人の影響であった。

その友人の名は龍と言う。

彼女は昇と同い年だが、だいぶ右寄りの左派の少女だ。

少なくとも昇はそう思っている。

彼女は1年前から虎視眈々と機会を伺っている。

ただ単純に準備が終わらないだけでもあるが。

本格的な革命軍は彼女を頭に各地に身を潜めている。



九葉 龍様

革命の血の後に必ずしも平和があるのであれば、私はこの身を奉らん

私の心情は例より変わることなく、貴女があさましき為政をしこうとするのならば、私は喜んで敵にならん

上川 昇














一通の手紙が、一人の女性の手に握られている。

彼女はそれを見てしっかりと笑い、すぐ様行動に移した。

その手紙は机上に置きっぱなしだ。

龍「早稲山!迎えに行くぞ!」

燐「勧誘は成功か。」

龍「あぁ、革命の後は必ず美しい朝がくる。」

そう言って、一つの旗を掲げる。

縦横比は16:25で、表面は黒と白の直角三角形で裏面は赤一色の旗だ。

比較的身長の高い早稲山ですら旗のテッペンを見上げる必要がある。

龍「黒の時代は終わり、朝日が白く輝いている。

下の支配は、上から無くす。革命の裏に血が流れ、その血は新たな赤い勇気となる。」


日は完全に暮れ、雨が降り、花火は中止となる。

今、旗本に157人目の男が辿り着く。

その名は上山昇。

これは上川かみかわ 昇、九葉 龍ここのは りゅう、早稲山 燐わせやま りん、里島 穣さとのしま みのる、小野 郷この ごうによる、夜明けの物語だ!

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