饕餮

雪乃

プロローグ

『日が沈みかけ、コオロギの声も少なくなった田舎町のコンビニエンスストア。

そこで、男が1人雨止みをしていた。

彼はこれからの指標を見失っていた。

都会にある彼の賃貸はいずれ契約解除しなければならない。

それを思い出す度に憂鬱になるので、遂には地元の方へノコノコと戻ってきたのだ。

その挙句、しとしとと嫌な雨が降るので彼の気は休まる所を知らなかった。

そして、地元とは言ったものの、彼の知り合いはこの近辺に居ないことは確かであった。

この頃世界は、大火地震に大津波、辻風台風竜巻大雨、洪水日照りに暖冬冷夏のオンパレード。

お陰で作物は育たず、経済は停止し、剰え飢饉が発生。

また、感染症も拡大の一途を辿るような、正に地獄であった。

道には生きているか死んでいるか分かりもしない人がゴロゴロと転がっている。

都会がその様になってきたので、田舎町の凄惨さは想像がたやすい。

凩の音だけが建物の間を流れる。

男は結局、今晩の風雨を凌ぐため、コンビニエンスストアの中に入った...』

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