転生したらゴーレム魔法の才能があったので、無双して貴族になってハーレム目指します! ~ゴーレム魔法は存在価値がない? ないのは工夫だよ~

純クロン

一章 立身出世編

幼少期

第1話 転生しました


「俺は生まれる時代を間違えた……」


 俺は駅のホーム白線の少し後ろ、線路を見ながらふと呟いた。


 ……そう、俺は時代ガチャに失敗したのだ。戦国時代や江戸時代に生まれればハーレムだったのに!


 現代地球に生まれて年収三百万。そこそこの大学に通って無難な人生を暮らしてきた。


 両親が早くに亡くなってしまったのは計算外だったが、それ以外は特に波風立てず……いや立てられずに生きて来たのだ。


 もっと上を目指したい、だが人生にやる気が出ない。なにせいくら頑張ったとしてもハーレムは日本では処罰の対象だ……おかしいだろ。


 もちろん現代でも一夫多妻の国があるのは知っている。


 だがそれらの国に引っ越すという選択肢も現実的ではないだろう。なにせハーレムは期間限定なのだ。


 俺が今から日本から出て行って外国で暮らし始めて、ハーレム作れるほど金を稼げるのか? 


 仮にできたとしてそのころには爺になってそうだ。枯れている。


 しかもそんな俺に寄ってくる女なぞ、枯れた木に寄ってくる虫だ。


 そんな虫なので木自体を貪って倒壊させて、葉まで美味しくいただいたら他の木に去っていく。


 ああ、何という絶望だろう。俺は……無力だ。


 人間五十年、下天のうんたら夢幻のもくずなり……なんか違うがまあいいや。


 ハーレムの世界を夢見て日本史や世界史を勉強した。


 それで見せられたのは文明の発展による子供の死亡率の低下の結果、ハーレムは現代にそぐわないという悪夢だった。


 昔に女侍らすのは男の夢が理由だったのではなくて、子供が死にやすいから多く産む必要があるのが背景にあるとか……そんな現実いらねぇ! 夢を見せろ夢を!


 乗り換えの電車がガタンゴトンと音を鳴らしながら、近くまでやって来るのが見えた。


 よーし! うだうだ考えるのは終わりだ!


 今日も家に帰って酒飲んでゲームして、野球中継見ながら動画見漁るか!


 少し勢いよく手を振り上げてしまったので、後ろの人に軽く手が当たってしまった。


「あ、すみません」


 振り向くと金髪ピアスに入れ墨のヤンキーみたいな野郎がいた。


 いや野郎なんて言ったらダメだな。俺が悪いし。


「チッ、このゴミがっ! 俺がどんな状況か分かってるのかてめぇ!」


 いや君の状況なんて知らんよ……妙に汗をかいてて挙動不審なくらいしか。


 確かに俺が悪いがそこまで言われる筋合いもない気がするなぁ。


 まあいいや、事を荒立てる必要もないだろう。


 改めて白線付近で電車がやって来るのを待っていると、ふと背中に勢いよく衝撃が走った。


「えっ?」

「よく考えたらこうすりゃよかった。こうすりゃサツに捕まるから、川上下組に海に沈められることは……」


 俺は線路に落ちて行って、電車の正面が目の前に……。





~~~~~~~~~~~~~~~~~~




 

「はっ!? 俺は電車!?」

「坊ちゃま! 無事にお目覚めになったのです!?」


 勢いよく飛び起きると俺は……メイド服を着た八歳くらいの女の子に話しかけられていた。


 ??? 俺はメイドカフェにいたか、いやいなかったはずだ。


 確か線路の上に落ちて、迫りくる電車によってミンチ不可避に…………少し考えたくないな、一旦置いておこう。


 八歳くらいの少女が俺を心配そうに見てくる。


 なんでこんな小さな子がメイド服を着てるんだ? 


「坊ちゃま! 大丈夫ですか坊ちゃま!?」

「あ、ああ……大丈夫だよ」


 メイドの人に両肩を掴まれてがくがく揺すられる。


 落ち着け、今の状況を把握するんだ。俺はベッドの上に寝ているな。


 ベッドの布団がなんかあまり綺麗じゃない、というかぶっちゃけ汚いしツギハギされている。


 この部屋も病室ではない。家具がとっちらかっている上、内装は中世風……貧乏中世風と言った方がよい。


 全体的に家具が傷んでいる。俺の着ている衣服もビンテージと言い張るにも苦しい傷み具合だ。


「坊ちゃま! 急に雷が落ちて、このまま目覚めないかと! うわーん!」


 メイドがベッドの布団に顔をうずめて、俺のために泣いてくれている。


「これで私も旦那様に屋敷から追い出されずに済むのです!」


 訂正。彼女自身のため百パーセントだった。


「……訳が分からん。というか待て、なんか俺の身体小さくない?」


 自分の腕が凄まじく貧弱というかぷにぷにで細く見えるのだが……。


「別に小さくないですよ? 坊ちゃまは八歳の男の子の平均身長くらいはあります。自分に自信を持つです!」

「は? 八歳児? え? どういうこと?」


 メイドの言っていることが分からず聞き返す。


 すると彼女は目を見開いて驚いてしばらく固まった後。


「た、大変です! ぼっ、坊ちゃまが頭おかしくなりましたぁ! 旦那様ぁ!?」

「べギラが頭おかしくなっただと!? ただでさえおかしかったのにこれ以上だとっ!?」


 叫びながら部屋に入って来たちょび髭オッサン。


「うえーん! 坊ちゃまの頭がぁ! 自分の年齢も分からなくなってしまったです!」


 そして泣きわめく八歳メイドちゃん。


「あのー……ここはどこですか……」

「もう終わりだぁ! ただでさえあーぱーだったべギラが! くそぉ、せめて元がまともだったら多少悪くなっても何とかなったのに!」

「うええええええん!」


 話が通じそうだったちょび髭オッサンは、俺のことをガン無視して頭を抱えてわめいている。


 もはやこの部屋は混乱のカオスに陥っていた。


「……なにこれ」

「あああああああ!」

「うぇぇぇぇん!」

「べギラの頭が雷に食べられたですって!?」

「お前! もうべギラは死んだ! 雷によって!」

「いやたぶん死んでないと思いますよ」


 更にカオスの援軍として知らない女の人がやってきて、この騒動は小一時間くらい続いたのだった。




~~~~~~~~~~~~~~~~~~




「俺はべギラ・ボーグ・ツェペリア! 魔法と剣の世界に生まれてはや八年! レーリア王国のツェペリア準男爵家に生まれた四男だっ!」

「おおおおおおおお! ベギラが……ベギラが自分の家名と名前を正確に言えるっ!」

「ひっく……立派になって……」


 俺はベッドの上でカオスメンバーに自己紹介をしていた。


 しばらくカオスの波に飲まれて放置された結果、俺は自分のことを思いだしたのだ。


 どうやら俺は先ほど話した生まれらしい。地球で暮らしていた記憶とは別に、全く知らないはずのことを知っているのだ。


 これはおそらく転生ってやつだろう。俺はWeb小説とか見てたから詳しいのだ。


 元の人格はどうなったんだろう、とかは考えないようにする。きっと俺と混ざり合ってうまい具合に生きてるんだろうたぶん。


 俺の目の前では先ほどのちょび髭オッサン――父、そして最後に部屋に入って来た女性――母が祈りを捧げていた。


「あの雷は聖神様の祝福だったんだ……だからベギラの頭がよくなったんだ……!」


 随分と激しい祝福ですね。むしろ制裁の間違いでは?


「聖神様、黙とうを捧げます。感謝の極みお祈り申し上げます……! ベギラは生まれてからずっと喋られず可哀そうな身でして、でもきっと他の子どもより少し成長が遅れているだけとうんぬんかんぬん……」


 黙とうしろよ。


「うええええん! ベギラ様が賢くなってしまいましたぁ! よいことなんですけどお世話係の私はどうなるのぉ!」


 未だに泣きわめく八歳メイド少女――メイル。肩まで伸ばした青い髪がチャームポイントの女の子は泣きわめている。


 よしよし、かろうじて俺の心配できて偉いね?


 どうやらベギラという少年は八歳でもあまり喋ることが出来ず、この娘が同年代の友人兼世話係でついていたらしい。


 頭自体は悪くなかったようだが人前だと緊張して喋れず、それでダメな男の子だと判断されているっぽい。


「よかったなぁ。雷が落ちて助かったなんて運がよい」

「しかも喋れるようになったなんてな。本当に神の祝福みたいだ、今晩は祝いに肉でも食わせてやろうぜ。狩りに行くか」


 そして先ほどやってきた次男、三男の兄たち。短い金髪だが正直そっくりで見分けがつかない。


 なんというか凄まじく賑やかな家族だなぁ。


 そんなことを考えながら俺は内心で震えていた。これが夢でなくて本当に転生ならば俺はすごく幸運だ。


 ここは魔法と剣の世界。文明レベルはベギラの記憶を思い出す限りでは、中世ヨーロッパに近い雰囲気。


 つまり……ハーレムがつくれるのではないかっ!!

 

 これはきっと真面目に生きて来た俺への、神様からの出血大サービスだっ!!!


 やるぞっ、絶対にハーレムをつくってみせるぞ!





~~~~~~~~~~~~~~~~~~





「俺は生まれてくる家を間違えた……」


 俺はツェペリア家の領地である村を歩いていた。


 ……ハーレムをつくるのに物凄く重大かつ解決不可能な問題があったのだ。


 それはツェペリア家があまりに、ド貧乏過ぎることだ!


 周辺は畑畑畑畑畑畑畑畑畑。建っている民家はボロボロで、特産品のひとつもない!


 借金だらけでいつ領地転封、いやおとり潰しされてもおかしくない家だった!


「坊ちゃまー。何をそんなに騒いでいるのですか?」

 

 とことこついてくるメイルが首をかしげる。


「ハーレムを作るにはこの家は貧乏過ぎる!」

「安心してください。どうせ坊ちゃまは家を継げない平民なので、成人したら出て行く運命なのです!」

「それはつまりお世話係のメイルの職もなくなる運命だが」

「はっ!? そ、それは困るのですっ! 坊ちゃま! 頑張って長男になって家を継いでください! 生まれからやり直してください!」

「無茶言うな」


 このメイルという娘。かなり天然なところが……というか天然そのものである。


 本人に悪気はないのだろうが、ポロポロとまずい言葉製造機だ。


 今の言葉だって聞きようによっては、俺の兄全員排除して下剋上をそそのかしてるしな。


 まあこの娘のことは皆分かっているので、この程度の言葉で罪になどするはずもないが。


「ところでどこに向かっているのです?」

「もうついたよ」


 俺の目の前にはレンガ造りの無駄に大きな屋敷。


 うちの家のよりもかなり立派だろうそれは、この村において異様な光景を醸し出していた。


「こ、ここは……!? 変人魔法使いの巣窟なのですっ!? ここに近づいたら身体が爆発して二時間くらい死ぬって近くのおばちゃんに教わったのです! 逃げるのですっ!」

「いやどんな脅しだよ……ここは俺の目的に必須なんだよ。貴族に立身出世してハーレム作るというのにな」

「別に貴族じゃなくてもよいと思うのです」


 メイルはボソリと呟くが俺はそれを絶対に認めない。何故なら……。


「ダメだ。貴族じゃないと……ハーレムをつくる大義がないだろうが! お金持ちが妻多く娶ってもただの好色だが! 貴族ならお家のために子孫を残す義務のためという言い訳ができる!」

「ハーレムに大義を求める人初めて見ましたです……」


 屋敷の壁に貼ってある張り紙、そこに記載されている文字をにらみつける。


 そこには『ゴーレムこそ至高、人類は愚か滅びるなり byゴーレム魔法使い史上最大の大天才』と記されている。


 門に手をかけて思いっきり引っ張り、屋敷の中への輝かしき第一歩を踏み出す。


「俺はゴーレムを学んで出世して、ハーレムをつくるんだっ! たのもぅ、お邪魔しまーす!」

「邪魔するな人間風情は帰れぇぇぇぇぇぇぇ!」


 屋敷の中からそんな絶叫が聞こえてくるのと同時に、俺の目の前の地面が割れる!


 地響きを立てながら現れたのは巨大な岩! 否、岩の姿をした人形が地中から浮かんできたように出現する!


「ごおおおおおぉぉぉぉぉぉ!」

「ひ、ひうっ!?」

「これが……ゴーレムか!」


 岩の巨人――ゴーレムが咆哮しながら大地を踏み鳴らした! 

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