第12話 天啓


 うわあ、また今年も殴り合いに発展したよ。

 まあ、一大イベントにしてしまった僕にも多少は責任があるけどさ。

 お祭り騒ぎだからってテンションが爆上げになる領民バーサーカーたちにも問題はあるよね。


 僕が、さてこれからどうしようかと思案にくれていると、背後に控えていたヴェガが一喝する。


「うるせえええええええ!」


 その声に、一瞬だけ静まり返る会場。

 おおっ、さすがヴェガ。

 きっちりとこの騒動を収めてくれた…………と思ったこともありました。



「いつまでも低レベルな争いをしてんな!まとめて相手してやる!かかって来い」


 うええええええええええええええええ!?

 な、何を言ってるのかな?


「ねえ、ヴェガ……」

「こんな雑魚どもさっさと昏倒寝かすするに限る!」


 うわぁ、すごく楽しそうに笑ってるよ……。


「ヴェガ……いつもいつも……」

「【神竜デウスドラゴ】持ちだからって偉そうに……」

「今日こそはブチのめす!」

「面白いじゃない!やる……いや、殺るわ!」

「泣きベソかくなよ、小娘が!」


 うわぁ、完全にヴェガ対全員の対立構造になっちゃったよ。


「少し待ってろよ」


 そう言って、ヴェガが拳を鳴らしながら会場の中心に歩いていく。

 その様子はとても嬉しそうだ。

 メイド服のスカートから伸びている竜の尻尾が左右に揺れている。

 これはもう止まらないな。


 こうして、さらなる殴り合いが始まってしまったのだった。

 どうやら火を消すのにガソリンを撒いてしまったようだ。


 僕は、目の前の終らない戦いを眺めつつ、これから行われるはずの天啓の儀について思いを馳せる。


 殴り合いが落ち着けば、新たな村人たちの権能スキルが明らかになるだろう。

 王都にある神聖教会の総本山からわざわざ司祭を呼んで儀式を執り行ってもらうのだ。

 例年、この日だけのなんちゃって領民が多発することから、儀式の対象が何人になるか把握できない。

 そのため、当領地では事前に驚く程の寄付をして良好な関係を築いた上で、この日の儀式ばかりは何人対応しても定額という契約を取り交わしている。

 要は前世で言うところの定額料金サブスクのようなものだ。


 もっとも、派遣される人員の滞在費やお土産代もすべて当領地持ちであるため、司祭やその助手は取り合いになるほどだとか。

 王都でもなかなか食べられない料理や酒。

 前世の知識を総動員して開発中の近代的な設備。

 そして、めったに手に入らない貴重な商品がお土産として渡されるのだから、当然のことだろう。


 今回、司祭の助手としてやってきたシスターは、肌を白くする化粧品に心を奪われていたようだ。

 もちろん、数セットお渡しいたしますよ。


 おもてなしの心の国に生まれたものとしては当然のことだ。


 



★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★



説明回でした。


リアルが忙しいので、とって出しで投稿していきます。



毎日投稿の『無自覚~』はともかく、その他の投稿はヤル気の問題ですので、★やレビューでの評価をお願いします。

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