第7話
「話しと違えますだ!!!」
地主の息子が悲痛な声を上げる。
村の広場に集められた村人達は座り込み、ブルブルと震えていた。総勢30人あまり、村人全員集められていた。ヨハンのような老人からヨハンの孫をからかっていた子供達まで全員だ。
「話し?お前ら貧乏百姓の言葉は訛り過ぎていてなにを言っているか分からん。不愉快だから話すな」
盗賊の一人がそう言うと周りの盗賊が笑った。
盗賊たちは村から食糧と財宝を集められるだけ集め、馬の後ろにくくりつけた。
これでしばらく生活には困らない。
派手にやったのだから、どこか遠いところに行かないと足がつく。しばらくは流浪の日々だ。ならば、最後に楽しまないと、と盗賊は思い、村人達を思う存分弄んでやろうと考えていた。
まず、盗賊は子供達を立たせた。
子供達は泣いて親にすがりつくし、親も子供を離さないように抱きしめるが、そう言う親の手を盗賊は剣でもって切り落とし、無理やり引き剥がした。
そして、子供達を横一列に立って並ばした。
大人達に告げる。
もしも、少しでも反抗的な態度を取れば子供を皆殺しにする。
これが一番効くのだ。人は自分のためには限界まで耐えられない。しかし、他人の為ならば極限を超えて耐えられるのだ。
まずは、男たちの腕を一本ずつ切り落とそう。そして、彼らが痛みに耐えかねて声のひとつでも漏らしたならば子供を殺そう。
女たちは犯してしまおう。
飽きたなら剣を突っ込もう。声をあげたら子供を殺そう。
他にも色々やってみよう、やりたいことをやってみよう。
盗賊たちの目は爛々と輝いていた。
その時、盗賊たちは農道を歩いてくる一人の男に気がついた。
馬鹿でかい、筋骨隆々で遠くから見ても常人とは比べ物にならないくらいの力を有していることは見てとれる。
彼は太くて長い丸太を一本持っていた。
それは盗賊のアジトにあったものだ。
丸太を肩に抱えて、無造作に歩く、その足取りは雑で顔は白痴のように惚けていた。
盗賊の一人が顎を振って合図する。
『囲んで殺せ』
と言うことだ。
馬に乗った数人の盗賊はすぐさまヨハンの孫を取り囲んだ。
その時である。
ヨハンの孫は、空に向かって雄叫びを上げた。まるで獣の鳴き声のような大声に盗賊たちの身体は震え上がった。
それは彼が生まれてから、発せられるべき怒りと悲しみと憎しみの全てが込められた声だったのだ。
ヨハンの孫は、大の男が二人がかりでようやく持ち上げられるかと言う丸太を片手で軽々とふるって、盗賊を瞬く間に捻り潰した。
丸太が盗賊の身体にぶち当たると、そこが衝撃で爆ぜて内臓が飛び出て、彼らは痛みのあまり馬から落ちて地面に這いつくばる。
死にかけた虫のようにぴくつく盗賊の頭を丸太で潰した時、ヨハンの孫は残念な気持ちになった。
あれだけ好き勝手やっていた人間と言う生き物はこんなにもろかったのか。
穢れていて、性格も悪くて、それでいて弱いとは救いようのない生き物ではないか。
思案に耽っている彼に向かってまた盗賊が何人か襲い掛かるが、皆、ヨハンの孫の怪力の前に造作もなくひねり潰されるのだった。
それを見ていた残った盗賊は、これはたまらんと逃げ出そうとしたのだが、今度は後ろから村人に捕まった。
この時、残った盗賊は4人だけで、逃げようと走る後ろから村人に衣服を引っ張られ、押し倒され、立ち上がる前に体を踏みつけられてリンチにあった。
ここに村人達は解放されたのだ。
盗賊は全員果ててしまい、彼らに害をなすものはいなくなったのだ。
解放された子供達は無邪気にヨハンの孫の元に駆けていく。
もう、金輪際ヨハンの孫のことをバカにするものはいないだろう。
彼は村を救った英雄として後世まで語り継がれるのだ。
ヨハンの孫は駆け寄ってきた、小さな子供達一人一人を丁寧に丸太で潰した。
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