第15話オマケ 裏話 常連客、出歯亀を計画する

「へぇ!!次の日曜日に斬島君と出かけるんだ!!」


常連客の一人である、その女性は楽しそうに声を上げた。


「はい、えぇ、まぁ」


サクランボのように顔を赤らめて、ルリアは頷いた。


「それでそれで??

どこ行くの??」


「その、市立中央図書館に」


なんとまぁ、健全な。

そんな言葉を飲み込んで、女性客はニコニコとルリアの様子を観察した。

照れくさそうな、でも、心のそこから嬉しそうな顔をしている。

そこで、ふと視線に気づいた。

ルリアではない。

女性客は、その視線の主を見た。

とても複雑そうな顔をしている、バイトリーダー粟田だった。

ルリアに横恋慕でもしたのだろうかと、一瞬考えた。

しかし、そういった視線では無いようだった。

不思議に思っていたら、ダイキが来店した。

ミカゲの姿は無い。

すぐさま、粟田がダイキを席に案内する。

奥の席だ。

それから、コソコソと二人で何やら話をしていた。

カウンター席と違って、女性客が座っている場所からは、何の話をしているかは残念ながら聞き取れなかった。

しかし、女性客は動くタイプだ。

つまり、


「Heyヘーイ!!若人達!!

秘密のお話かな??」


席を移動して、自分から聞きに行ったのだった。

あきらかに、二人がウゲっという顔をした。

なんなら声にも出ていた。


「お悩み相談なら、お姉さん乗っちゃうぞー♡」


「いえ、間に合ってます」


即座にベテランバイトが即座に返した。


「釣れない事言うなよ、君と私の仲じゃないか」


「勝手に親しげな仲にしないでください」


粟田はも無い。

ダイキは少々、顔を引き攣らせている。

この女性客が、粟田とはまた違った意味で厄介な存在だとしっているのだ。

女性客はめげずに続けた。


「ここ最近、この店の周囲で斬島くんのチーム麒麟愚童流でも、奔陰くんのチーム羅紅鳴勒でもない子達

がウロウロしてるんだよねぇ。

君たちの内緒話はそれに関係してるんじゃないのかな?」


「分かってるならわざわざ聞かないでくださいよ。

首突っ込んだところでろくなこと無いですよ?」


粟田は疲れたように息を吐き出して、そう言った。


「お、ということは当たりか。

では、さらなる推理をしてみようか?」


女性客は挑戦的な視線を粟田に向けると、さらに続けてこう言った。


「なぁ??《特定班バイトリーダー君》??」


そんな女性客と粟田のやり取りを、しかし理解しきれずダイキがポカンと見ていた。

結局、女性客の押しに負けて粟田は洗いざらい現状を説明する事になった。


「わかった!わかりました!!

もう、また刺されても知りませんよ?」


粟田が女性客に向かって呟いた一言に、ダイキは首を傾げる。


(この人も昔グレてたりしたんだろうか)


なんて、ダイキは内心で呟いた。

正直、一般人を巻き込むのはどうかとも考えたが、粟田をすでに巻き込んでいるわけで、今更なにを言っても説得力はない。

そしてダイキ自身も、この女性客はなにも話さなかったとしても自分で色々調べあげて首を突っ込んでくることは簡単に予想がついた。

ならば、最初から説明して首を突っ込んでもらった方が、まだ不確定要素が少なく済む、判断した。

そのため、粟田が女性客へ今起きていること、これから起こ

るだろうことを説明するが、それを止めることは無かったのだった。

話を聞いた女性客は、目をキラン、いやギラギラと輝かせるとノリノリで、


「よし、じゃあ当日はルリアちゃんが危ない目に合わないよう見守らなきゃね!!」


そんな事を言ってきた。

なんなら、サムズアップしている。

粟田がとても呆れていた。


「これだから《この人元スネーク》は」


ダイキには意味がわからない単語出てきて、また首をかしげた。



かくして、当日を迎えたのだった。

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