空き巣を捕まえろ!

口羽龍

空き巣を捕まえろ!

 夕方、小林は家に戻ってきた。この近くにあるスーパーに行っていた。今夜の晩ごはんの材料を買ってきたようだ。今日の晩ごはんはハンバーグだ。家族みんな楽しみにしているだろう。


 小林は玄関の前に入った。家には誰もいない。夫はまだ仕事。中学生の息子は部活で帰ってきていない。小林は大きくため息をついた。


「はぁ・・・」


 小林は鍵を開けた。だが、鍵が閉まった。かけ忘れて最初から開いていたんだろうか? それとも、空き巣が入ったんだろうか? それとも、夫か息子が帰ってきたんだろうか?


「あれっ!? 鍵が開いてる。閉めたはずなのに」


 不思議に思いつつも、小林は家に入った。家は静かだ。そして暗い。誰もいない。夫も息子も帰ってきていないようだ。


 小林はダイニングにやってきた。明かりはついていない。小林は買い物袋を置いた。中にはあいびきミンチとタマネギ、キャベツが入っている。小林はそれらを冷蔵庫に入れた。夫が帰る時間を想定して、午後5時ぐらいになったら始めよう。


 入れ終わったら、小林はリビングにやって来て、ソファーに座った。ソファーに座っているのは、小林だけだ。


 小林はテレビをつけた。テレビでは夕方の情報番組がやっている。いつもと変わらない光景だ。そしていつものように父と息子が帰ってきて、楽しい夜がやって来るだろう。


 と、小林は何かに気付いた。棚の引き出しが開いている。ここには自分の通帳がある。まさか、取られたんだろうか? 小林は気になって、開いた引き出しをのぞいた。


「ない!」


 引き出しにあるはずの通帳がない。いつもここに入れているはずなのに。別の所に入れたんだろうか? いや、そんなわけない。


 小林は家のあらゆるところを探した。だが、通帳は見つからない。一体どこに置いたんだろうか?まさか、空き巣が入ったんだろうか? いや、そんなわけない。


 その時、小林は入ってきた時に感じた事を思い出した。玄関が開いていたのは、空き巣が入ったからだ。まさか、空き巣に入られるとは。


「小林さん、どうしたの?」


 と、誰かの声が玄関から聞こえた。隣に住む丸山の声だ。小林の家が騒然となっているのを聞きつけて、やって来たようだ。


 その声に気付き、小林は玄関にやって来た。やはりそこには丸山がいる。円山もすでに買い物を終えていて、家に1人でいる。


「通帳がないの。出かける時に鍵をしたのに、鍵が開いてたから、空き巣かな?」


 丸山は少し考えた。空き巣という言葉に心当たりがあるようだ。


「そうかもしれないわね。昨日は山本さん家で空き巣があったし。同じ人の犯行かもしれないわ。すでに警察に言ってるけど、またあるなんて。早く捕まってほしいわね」

「そうね」


 小林は驚いた。ここ最近空き巣が多発しているとは。それは知らなかった。気を付けないと。


「こうなったらみんなで捕まえよう」

「そうだね」


 2人は、近隣住民や警察と協力して、その犯人を捕まえようと思った。もうこれ以上空き巣は絶対に許さない。明日以降、怪しい奴が来たら、絶対に捕まえてやる。




 翌日の夕方、近隣住民はすでに朝で晩ごはんの材料を買っている。空き巣は夕方にやって来る。対策は十分だ。小林は丸山の家の2階にいる。部屋のカーテンからひょっこり顔を出して、見張っている。


 しばらく見張っていると、黒い服の男がやって来た。男は周りを気にしている。いかにも泥棒のようだ。


「こいつかな?」


 小林は注意深く男を見ている。男は小林の存在に気付いていないようだ。


 小林は別の部屋に移り、その男をじっと見ている。


 男は丸山の家の前にやって来た。丸山の家には誰もいない。鍵はかけているが、男は何らかの手段で開けてくるだろう。


「入った!」


 と、男が丸山の家に入った。やはり空き巣はこの男のようだ。絶対に追い詰めて、捕まえてやる!


 数分後、何も知らない男が丸山さん家から出てきた。


「出てきた!」


 それと共に、大量の住民がT字路からやって来た。泥棒は驚いた。まさか、こんなに大量の人がやって来るとは思ってもいなかった。いつもより住宅が静かなのは、こういうわけだったのか。


「こら! 待て!」


 それを見て、泥棒は逃げた。だが、相手は主婦だ。あっという間に泥棒は引き離す。だが、住民は冷静な表情だ。まだ仕掛けがあるようだ。


 泥棒はその向かいのT字路に向かおうとした。だが、T字路から別の大量の主婦がやって来た。その前には警察もいる。まさか、ここでも待ち伏せていたとは。


「警察だ! 待て!」

「そんな・・・、待ち伏せてたとは・・・」


 泥棒は戸惑った。まさか挟みうちになるとは。


「えっ、ここからも来るとは」


 どうしようもなくなった泥棒は、その場に立ち止まった。その間にも双方から主婦や警察がやって来る。もうだめだ。このまま警察に連れて行かれるだろう。泥棒にはその先が見えた。


「逮捕する!」


 やって来た警察によって、泥棒は手錠をかけられた。泥棒はその場に崩れ落ち、息を切らした。こんな形で逮捕されるとは。


「やれやれ、一件落着だわ」


 警察は泥棒を交番に連行した。これから事情聴取をすると思われる。小林や丸山ら近隣住民はその様子をじっと見ている。


「ご近所さんをなめんなよと言いたいわね」

「そうね」


 これでこの近隣で起こった連続空き巣は解決した。だが、またあるかもしれない。その時があれば、また近隣住民で対策を練って、泥棒を捕まえるために努力するだろう。

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