妹なんて、ろくなもんじゃねぇ!

北風荘右衛

第1話 オープニング

「おにぃ。どっか遊びに連れて行け」


 また始まった。冬休みになってから毎日のようにこれだ。


 妹の調(しらべ)は今年中学3年生の15才。無造作なボブカットヘアーにまん丸の顔。身長150cmでCカップが唯一の自慢なJCである。


「なんか私の悪口言ってない?」


 言ってない言ってない。全然言ってない。


 俺は利人(りいと)。今年大学に入学した19才。彼女いない暦は1週間である。ちなみに、彼女が1週間以上いなかったことはない。現在記録更新中である。


「それが、唯一の自慢だよね?」


 やかましいわ。自己紹介中にツッコむな。


「ねぇ、彼女いないんだから暇でしょ、どっか連れてけ」

「お前の態度が気に入らな痛たたたたたたた。手の甲をつねるな!」


「どこでもいいから行こうよ」

「どこでもいいと言っても、もう金がないんだよ。適当なとこに連れて行くと怒るし」

「適当なとこじゃダメでしょうが。私が楽しめるとこじゃなきゃ」


 どんだけわがままだよ。どこにそんな場所があるんだよ、と文句を言いながらもスマホで検索する俺である。


 無料で遊べるスポット。


「ダムとか見るか?」

「高いの怖い」


「じゃ、滝のあるところ」

「この寒いのに?」


「お寺巡り」

「そんなじじむさいとこ嫌だ」


「古い町並み」

「それ、毎日見てるし」


 ダメだ、どこにも妹が行きたくなりそうな場所はない。ゲーセンやカラオケは金がかかるからダメだ。俺の財政的に。


「じゃあ、その辺の山にでも登るか」

「え?」


 ということになった。

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