第21話 【フラグ即出現】ほーん、せやろか【危険度Lv44】
フランツさんの披露してくれた“
カッケーワザをいくつも使えるようになったあーしは——
そんな感じでけっこー進んで、もうこのまま
「……敵だ、モンスターがいる」
ローグの一言で、一気に場の空気が固まる。
フランツさんが緊張した声で尋ねる。
「……どっちから来る? 数は?」
「いや……まだ遠い。すぐに回避すれば、戦闘は避けられる距離だ」
「そうか……」
「だが、ここら辺からはモンスターがいるってことだ」
「了解……みんな、気を引き締めるぞ」
それからあーしら一行は、ローグの指示に従い、モンスターを避けて慎重に移動していった。
しかし、それにもすぐに限界がきた。
「ダメだ……三方に敵、回避は困難だ……どれかを突破するしかねぇ」
どうやら、モンスターに囲まれているらしい。
まだコチラは見つかってないケド、見つからずには抜けられそうにないっぽい。
なので、どれかを倒して抜けるしかないよーだ。
ローグの話を聞いて、どのモンスターと戦って抜けるかをフランツさんが決める。
「……やっぱり、この正面側の二体のやつかな。進行方向に近いのもあるし、コイツら以外は大型だ。こっちは小型で、数も多くない。迅速に倒して抜ければ、残り二つは撒ける可能性は高い。……まあ、倒すのはユメノに任せることになるけど」
「ま、それが妥当な線だろ。そんじゃユメノ、出番だぜ。サクッと倒してくれ。あんだけ御大層な“
「おいおい、いくらユメノといえども、奥部のモンスター相手にはどうなるか分からないぞ。……だがまあ、ユメノに頼むしかないんだが。オレ達では、どう足掻いても実力不足でしかない……すまん、ユメノ、頼んでいいか」
「“聞かれるまでもない。この剣で道を切り開くのみ”」
ゆーて、なんかアレだけの“剣技”も使える剣くんなら、まーイケるっしょ。
ローグの感知通りに敵がやって来た。
数は二体。大きさは、あーしの身長と大差ないレベルなので小型。
視界に入ったそのモンスターの姿は奇妙な形状で、なんか猿と猫科動物の中間みたいな変なナリだった。
特徴的なのはその長いシッポで、先っちょがなんか鎌みたいな形になってる。
すでにあーしは、剣くんを引き抜いていた。
連中の姿を見て、さあやるぞ——と思ったのと同時に、剣くんから警戒を呼びかけるような気配が伝わる。
次の瞬間、二匹の
——
なんて思っている間に、すでに
ケモノは自身も超高速で動き回りながら、シッポの先の鎌を使ってあーしに攻撃してくる。それを剣くんが、すんでで受け止める。
ケモノは二体同時に連携してあーしに攻撃してきていた。
まるで嵐のように、あーしの周りを超高速で吹き荒れる二体のケモノによる連撃を、あーしの剣くんは辛うじてすべて受け止め弾いていた。
あーしはもはや、その剣くんの動きについて行くので精一杯で、他のコトを考えるヨユーなどない。
しかし頭の中は、アセリの感情でイッパイイッパイだった。
——ウッソ、これ剣くんでも苦戦してねッ!? いやそれヤバくねッ??
「——なっ、なんだコイツら、は、速すぎだろっ……!?」
「ユメノは、渡り合えている……のか?! いや、防戦一方なのか……? それだけでも凄いが……だが、ユメノでも倒せないなら、それは……マズいぞ……っ!」
「り、リーダー、どうしましょう?! あのままじゃユメノはっ……!」
「……ぐっ、アレは、俺では受けきれん……」
「……ダメだ。オレ達に出来ることはない。手を出しても足を引っ張るだけだ……」
「……マズいぞ、このままだと他の
「……合流されるのはマズい。……やるしかないな。オレ達で出る」
「くっ……だがっ、二つは無理だろっ……!?」
「……仕方ない、レイブン達にも——」
フランツさん達が何かを話している声も、あーしは聞くヨユーはない。
ただ集中して、ケモノの攻撃をさばく剣くんの動きに必死に合わせる。
剣くんはあーしを守ってくれている。だけどそれもギリギリ。
すでにあーしの着てるマントはボロボロに引き裂かれていた。それだけヨユーなく
だけど怪我はしていない。そうならないよう剣くんが守ってくれている。
そんな剣くんに、あーしはスゲーもーしわけない気持ちになっていた。
だって、剣くんなら倒せるハズなのだ。このケモノだって。
マジくっそ
それが出来ないのは、あーしのせい。あーしの体が、剣くんの動きについていけてなくて足引っ張ってる。
それに加えて、あーしを守らなきゃいけないというハンデによってさらに動きが制限されてるからこそ、剣くんは
あーしがもっと動けたら、あるいは、あーしを完全に守ろうとしなければ、剣くんならコイツらも一撃でブチコロ出来る。
相手もそれが分かっているからこそ、他には目もくれずに二匹がかりであーしを完封しにかかっている。
それはそれで
もはやあーしの目では何が起こってるかまるで分からん速さなので、あーしは動きはすべて剣くん任せで、パニくらないように思考だけはなんとか巡らせていく。
——なにか一つ、あれば……切り抜けられる、それだけジョーキョーは拮抗している。
ほんの一手分余裕があれば、剣くんなら……
——使えると判明した“
ゆうて“剣技”は使う際にタメがいる。剣くんにとってはほんの些細なモノだけど、今はその一瞬が命取り。
他に状況を好転させられる
覚悟を決めるぞ、あーし……!
剣くんがこれだけやってくれてんだから、あーしも身を削る……リスクを取る……!
ほんの一手、それさえあればイイ。
今はすべての攻撃を剣くんが迎撃しているから、コチラからの攻撃の余裕が一切ナイ。
なら、剣くん以外で防ぐしかナイ。
思いついたのは、剣くん以外で唯一あーしが装備しているモノ、防具——
オメェ勝手に喋る以外でもちったー役に立てっての!
ケモノの鎌による攻撃、それを剣くんではなく兜で受けるのだ——!
ジッサイ、並大抵の防具などでは受けれんくらいに強いっぽいケモノのシッポの鎌である。
しかし、この兜は外されるのを拒否るくらいに頑固なヤツなのだ。そう簡単に壊れたりはせん!
まあ剣くんも、この兜なら受けられると教えてくれた。なら後は、あーしが覚悟決めるダケ!
んで、もー決めた! いけオラッッ!!
ケモノのシッポ、その目にも止まらぬ速さの攻撃を見切っている剣くんが、防御を捨てて攻撃に合わせるように動き、ケモノのシッポを断ち切る——
それと同時に受けることになったシッポの先の鎌を、頭の兜で受ける。
ギャイン——! と
間髪入れずに背後より襲いかかってくるもう一匹の攻撃。——ヤバッ、さすがの剣くんも攻撃直後じゃ間に合わね——!?
ギインッ——!
と足元を狙った攻撃はしかし、あーしが腰にぶら下げている鞘くんに当たり辛うじて直撃を
すぐさま反転、攻撃——ケモノは後方に飛び退き
ケモノの攻撃——剣くんは迫り来る鎌を真っ向から迎撃、鎌自体を断ち割った。
鎌を壊されたケモノは、すぐさま身を
『“
続けざまに振られた剣から
さらに振り返り
同じく飛んだ斬撃が——シッポを切られてすぐに森の木々の中に逃げ込もうとしていた——もう一匹のケモノも真っ二つにした。
「はぁっ、はぁ……」
…………アブネェ!!
覚えた“剣技”を使うヒマがナイッ! 兜があって助かったし、つーか鞘くんもナイス! 足ケッコー衝撃きたケド、怪我はしてないし、痛みもすぐに消えた。これも鞘くんのお陰か、マジナイス。
「はぁ、はぁ……ふぅ……」
……っと、ボーゼンとしているヒマはなかった。
他にも敵が二つほどいたハズ。ゆーてサクッとは倒せんかったし、そっちはどーなった?
周りを見渡すケド、フランツさん達の姿はない。
戦いつつケッコー移動してしまっていたので、あーしはとりま馬車のそばまで急いで戻る。
馬車に戻ったら、そこに居たのはボンドさんと、イレブンのパーティーだけで——いや、イレブンもいない?
あーしは焦りつつも、とにかくボンドさんに尋ねる。
「あのっ、他のみんなはっ?」
「ゆ、ユメノ君、無事だったのか……! い、いやっ、フランツくん達は、他のモンスターに合流されてはマズいと言うことで、足止めに向かった……! あ、あと、レイブン君は、もう一方の敵を遠ざける為に囮になって、一人で……」
「えぇっ、ちょ、ちょっ、どうしよっ……」
「そ、そうだな、えっと……や、やっぱり、すぐに加勢に行くべきだろう」
「え、ど、どっちに?」
「そ、それはー……」
「なぁアンタ、頼むっ、レイブンを助けに行ってくれ! あいつ、一人でモンスターの囮になって……このままじゃあいつ……なあ頼むよっ!」
「そうだ! このままじゃ死んじまう! きみって強いんだろ、頼むよぉっ!」
「えぇっ——?!」
ちょっ、えっ、どーしよっ?!
レイブンの方行くべきなの? でもフランツさん達も心配だし……
「いや、先に行くのはフランツくんの方だ。ユメノ君、すぐに向かってくれ!」
「あ、うん、分かった」
「なっ、おいおっさん、レイブンは見捨てるのかっ!?」
「そんなのないぜっ……!」
「み、見捨てるわけじゃない……! ただ、優先度は彼らの方が高い! 特に、ローグ君が居なくなるのはマズい! いくらユメノ君が強くても、道に迷っちゃお終いだ、そうだろう……!?」
「で、でもよ……!」
「なるべく早くに戻ってきて、それから彼の方にも向かってもらうんだ。それしかない」
「ううぅ……」
「さぁ、ユメノ君、すぐに向かってくれ!」
「“任せろ!”」
あーしは迷いを振り切ると、フランツさん達の方に向かって走る。
——やっぱり、フランツさん達を先に助けないと。
ローグもそうだけど、フランツさんが居ないと、どーすればいいのかマジ分からん。マジ「先導いなくて船沈む」ってヤツじゃんコレ。……なんか違ったっけな?!
あーしは全力で走ってフランツさん達の元に向かって、そしてたどり着いた。
森の木々をかき分けて進んで、見えてきたのは——
めっちゃデカい
その大サソリの尾にぶっ刺されて持ち上げられているランドさんだった。
しかも彼は、今まさに地面に叩きつけられそうなカンジで——
『“
考えるより先に剣くんが“剣技”を放った。
あーしの走る速度など比べものにならん速さで
ギィィィィィィィィィィィィ!!!!
サソリが悲鳴なのか不快な声を上げた。
「——!? これはっ、ゆっ、ユメノかっ!?」
「フランツさん!」
大サソリは痛みに怯むよーに数歩後ずさりした。
そしてランドさんは——尾に貫かれたままの状態で地面に落ちる。
「ランドッ! ——くっ……ユメノっ、こいつはおそらく『
「“速攻で倒すのみっ!”」
むろん、あーしもそのつもりだっ。
剣くん
虫はキメーけど、ここまでデカいともはやキメーとか以前にヤベーってもんよ!
あーしは地面に落ちたランドさんを
するとサソリはすぐに反応して身構えると、両手の
——後ろにはランドさん、躱すコトはできん。
——だケド、問題なし!
『“
あーしはその
するとあーしの振り下ろす剣より
そして本体の剣が、サソリの口より飛び出した謎の液体を斬り払った。
ギィィィィィィィィィィィィィィィィ!!!!
またもやサソリの口よりウルセー悲鳴が漏れる。
あーしはその不快な響きに顔を
やたらデカいこのサソリも一撃で仕留めるために足りないのは、そう、剣の長さ。それだけ。
『“
振り上げた剣より伸びる光の
——一刀両断ッ!
振り下ろした光のヤイバは、キレイにサソリの中心を通り過ぎ——
大サソリの巨大な体を、縦に真っ二つに断ち割った。
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