第151話 今回の動画撮影は夏休み中の生活についてだ

 さて、東雲さんのお誕生日パーティは無事終了した。


 これで夏休み前に入っていたスケジュールは無事消化できたな。


 そして翌日の木曜日は動画の撮影だ。


 中垣内へSNSでメッセージを飛ばす。


『明日の放課後また撮影するけどそっちは大丈夫?

 今回も俺とお前だけで撮影しようと思うんだけど』


 メッセージを入れるとレスが即帰ってきた。


『大丈夫だよー。

 今回も二人だけなんだ』


『ああ、やっぱり人数は最低限にしたほうがやりやすいし、お前が相方だとやりやすいしな。

 ちなみに今回の内容は夏休み中の生活についてだ』


『了解よ』


 というわけで翌日木曜日の放課後。


 いつものように家庭科実習室を使って動画を撮影する。


「さて、じゃあまあ今日も俺とお前でグダグダしゃべりながら、高校デビューに関しての話を中心にして撮影していくぞ。

 SNSメッセーシで送った通り今日は夏休み中の生活についてだ」


「うん、こっちはいつでもオッケーだよ」


「よし、じゃあ始めるか。

 さてさて、童貞のケンジと」


「処女のオトメのコンビで送る」


「グダグダ高校デビューチャンネルー。

 さて、今日は夏休み中の生活についてだ。

 まあ、ざっくりと大まかなアドバイスなどをしていこうと思う」


「夏休み中の生活についてのアドバイスって例えばどんなこと?」


 俺は苦笑しながら言う。


「前回は夏休みの宿題のやり方だったが、もうちょっと全体的なことだな」


「全体的なこと?」


「ああ、とりあえず夏休みでも学校のある日と同じ時刻に起きること」


 俺がそう言うと中垣内は驚いたように言った。


「なんで?

 折角の夏休みなんだからゆっくり寝ていてもいいじゃない」


「前に言ったように夏休みに宿題がある理由は毎日の学習の習慣を崩さず、定着させるためだからな。

 休みだからといって朝に遅くまで寝ていたり、夜ふかしして生活習慣を崩すのは良くない。

 だから平日に当たる曜日は学校のある日と同じ時刻に起き、勉強も可能な限り夏休み全体を使ってまんべんなく勉強をやれるように計画して実行するのが大事なんだな」


「そうなの?」


「たとえば会社での夏休みってどのくらいだと思う?」


 俺がそう聞くと中垣内は首を傾げ少し考えたあとで言った。


「お盆あたりの一週間くらい?」


 中垣内の回答に俺はうなずいて答える。


「ああ、社会に出たら夏休みの長さは長くてもせいぜいそんなもんだ。

 もちろん有給休暇とか土日休みとかでもう少し長く休めるやつもいるし、3日ぐらいしか休めない場合もある。

なんにせよ社会人はお盆休みでもそんなにダラダラ長くは休めない」


ちなみに風俗業界はGWもお盆休みもないし、31日よ1日とかで年末年始も2日休める程度だったけどな。


「うーん、それは嬉しくない情報ねぇ」


「まあ、欧米なんかは社会人でも夏にまとめて休んで後はクリスマスは12月20日から1月1日まで有給が消化できればそこも休める代わりに祝日はそこまで多くない。

なんで昔に比べると祝日が増えたりしている分だけ日本もだいぶ休み自体は増えてるんだけどな」


 俺がそういうと中垣内は感心したように言う。


「つまり宿題と同じで夏休みでも会社で働くときの予行演習みたい考えて行動したほうがいいってなものだってことね」


 俺はうなずきつつ答える。


「まあそういうことだ。

 それと宿題とは別に3時間位は予習や復習なんかの勉強をすることだな。

 午前と午後で2時間程度の学習をするのが無難なとこだと思う。

 無論これは高校卒業後の進路に応じて勉強の時間を増やしたり減らしたりする代わりに進路が芸術系なら楽器演奏や合唱や発声練習などの演劇の練習は必要だ。

 いずれにしても、高校1年生の夏休みで一番注意が必要なのが勉強しない習慣が身についてしまうことで、そうなったら二学期から悲惨なことになるからな。」


「まだ高校に入ったばっかりなのに卒業後のことまで考えないといけないの?」


「まあ、長期的な計画を立てるのは大事だからな。

 これから先のために理数系あるいは文系のどちらを重点的に学びたいのか?

 高校を卒業したらまずは進学するのか?

 それとも就職するのか?

  学校を卒業したら具体的にどんな色につきたいのか。

 など、夏休みは将来就職する職業について考える時間もあるよい機会だからな」


「今からそんなに細かく考えないといけないの?」


   中垣内の言葉に俺は頷く。


「ああ。

 なぜなら、最終的には就職することになるし、あらかじめ目標を決めて、その目標を達成するためには、どのような手順を踏んで何をやらないといけないかを自分がわからないと駄目だからな」


「まあ、それはそうよねぇ」


「実際には親の希望や意向にある程度したがわないといけないだろうし、親との相談も必要だろうけどな。

 現状では将来の目標を1つに絞りきらないで、複数の選択肢を考えておくほうがいいとは思う。

 大学の進学を希望する場合は、志望校のレベルについても考えないといけないし、機会があればオープンキャンパスなどに参加して大学の雰囲気を掴んでおくのもいいかもな。

 とはいえせっかくの長期休暇だし家族や仲のいい友達、あるいはいるなら恋人との時間を大切にするために一緒になにかをするのも大事だろうな。

 しっかりと勉強はしつつ、空いた時間にしっかりと遊ぶんでストレス解消をすることも大事だ。

 あとは部活動に所属しているのであれば、部活動をがんばって、合宿なんかにも参加することで部員同士の絆を深めたりしてもいいと思う。

  せっかくなんだから夏休みにもいい思い出を残しておきたいもんだ」


「それはそうよね。

 でもあんたは色々やりすぎだと思うけど?」


 中垣内の言葉に俺は苦笑しながら言う。


「それについては否定できないがな」


 俺がそういうと中垣内はため息を付きつつ言う。


「わかっててそういうことをするのはどうかと思うわよ」


「まあ、基本的には一度きりの人生だしな。

 後悔のないように行動したほうがいいと思うんだよ。

  もちろんすべてがうまくいくとも思えないけどな」


 俺がそういうと中垣内はうなずきつつ言う。


「まあ、それは当然よね

  私もあんたのやってることを全部否定するつもりはないわよ」


「ありがとな。

 やっぱオトメが相方だとやりやすいわ」


 俺がそう言うと中垣内は少し照れたようにうつむいたあと言う。


「あ。ありがとね」


 そんな感じで今回の動画撮影は終わった。


  まあそこそこいい感じでまとまったんじゃないかな。

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