第126話 理科の科目の物理に関しての勉強法は数学に近いな

 さて、家庭科部の活動時間中に行った、ミシンを使ったホットパンツ製作自体は一応成功した。


 のだが……型紙通りに縫い上げたところで、自分ではくにはウエストの大きさが小さすぎて全く合わないことに気がついてしまった。


 結局の所、俺が作ったホットパンツは東雲さんにあげたのだが、このままではコミケに参加するときに自分の体形に合わせた自作衣装のコスプレをすると言うのははかなり厳しい気がする。


 なにせ衣装を一から作り上げるためのノウハウを俺は全くと言っていいほど知らないからな


 時間に余裕があるなら何度か失敗を繰り返しても、失敗した原因を考えながら試行錯誤していいうというのも楽しそうではあるが、コミケまではもう二か月ほどしかないし、コスプレ衣装一式を作るには相当時間がかかるだろうし。


 なのでだれか衣装を自作することができそうな人がいないかと、俺はお母さんに相談した。


 その結果お母さんの姉で弥生ちゃんの母親である皐月さんに衣装の仕立て方を教わることになった。


 やったことがないことに挑戦するときには、やはり経験者に教わるのが一番だからこれで一安心だ。


 そして翌日は勉強会だな。


 そして東雲しののめさんが泣きついてきた。


「うわーん。

 秦えもーん、助けてー」


 なんか前にもやったやり取りだよなぁと思いつつ俺は聞く。


「しょうがないなぁ、しのた君は……っていったいどした?」


「実はね、理科が全然わかんないの」


 なるほど、数学がだめだったら理科もだめになる可能性は高いもんな。


「ちなみにわかんないのはどこから?」


「どこからわかんないのか、そもそもわかんないの」


 まあ、これも予想通りではある。


 高校の理科の科目は物理・化学・生物・地学があるが大学受験で重要なのは物理と化学だ。


 実際に地学なんかは、学校によっては履修できないということもあるくらいだからな。


「じゃあ、また小学校高学年くらいから問題を見繕ってわかるところから理解しなおせるようにしていくか」


「うん!

 ありがとうね」


「ちなみに九重ここのえさんは理科とか大丈夫?」


 俺が九重ここのえさんに聞くと彼女は渋面で答えた。


「日本のhigh schoolの授業は難しすぎデース。

 全然大丈夫じゃナイデース」


 俺はそれを聞いて苦笑しつついう。


「まあ、アメリカから来たばっかりだとそう感じるかもなぁ」


 アメリカの場合は合衆国なため各州の裁量によって、大きく学校の教育制度や授業難易度が異なるが、高校までは授業の難易度は日本のほうが高いらしい。


 さらに言えばそもそもアメリカは日本と異なり、高校まで義務教育なので「高校受験」というものはなく、居住している学校区の高校に通うが、ずっと同じ学校に通う必要すらない。


 もちろん通学さえしていれば自動的に卒業できるわけではなく、必須科目の取得、必要な取得単位数を満たしたうえで、卒業試験に合格する必要はあるのだが。


 そして日本の学校の宿題は多すぎたりして、できない人がどんどんできなくなっていくシステムなのが問題だったりもする。


 本来ならば高校1年生の段階では、基本となる五科目の中でも理科と社会はそこまできっちり勉強しておかないといけない科目でもないんだけど、物理や化学は大学受験の2次試験でも必須科目に選ばれることが多いので、物理と化学を早めに理解しておさえておくのは必要なことでもある。


 なお、物理は計算問題が中心で、暗記量は比較的少ない。


 なので公式は丸暗記せず根本的な理解が必要だが理解さえでき、数学的な計算力に問題がなければ得点を取るのは難しくないはずだ。


 なんで公式の丸暗記だけではだめなのかといえば、問題をひねられると対応できないためだな。


 基本事項が理解できていて応用ができるかどうかで物理の得点は決まってしまうので、物理が苦手な人間にとっては、理解がなかなかできず、勉強時間を使った割には点数が取れないこともある。


 化学は物理ほど計算力は必要ではないが、暗記をする必要性が増える。


 ちなみに生物はもっと計算要素は減るがさらに覚えないといけないことは増える。


 まあ、まずは二人が苦手そうな物理から消化していくか。


 という訳で、俺は昼休みに学校のパソコンをいじって、問題集を探し、二人に中学校レベルの問題を俺なりにアレンジして、プリントアウトしていくことにした。


 そして最終的にはまず自由落下運動の公式と計算問題を扱える程度にはなってもらう。


「えーと、空中でスマホを落とした時に初速度0で自由落下を始めてから19.6m落下したときの速さとこの位置にくるまでの時間を求めよ?

 ただしg=9.8[m/s2]とし、空気抵抗などは考えないものとするする?

 なんか中途半端だけど……」


 うんうんうなりながら東雲しののめさんが言う。


「東雲さんがいうことはもっともだけど19.6mてのが重要なんだよ」


「たしか、自由落下運動は等加速度運動だから……」


 かりかりと東雲しののめさんは計算式を解いていく


「v=19.6m/sで70.56km/hで、t=2.0sかな?

 つまり秦ぴっぴを19.6mの高さから落下させると2秒後におよそ時速71キロで地面に激突するってことだね」


 にやっと笑って言う東雲さんに俺は苦言を呈する


「おい……そこでスマホを俺に勝手に変換しない」


 しかし東雲しののめさんは悪びれずに言った。


「だってその方がわかりやすいんだもーん」


 そして首をかしげて九重ここのえさんが言う


「ツマリ、どういうことデスカ?」


 そういう九重ここのえさんに東雲しののめさんが教えていく。


「簡単に言えば……」


 そして問題を解いていた九重ここのえさんが笑顔で顔を上げて言った。


「ナルホド、ワカリマシタ!」


 その様子を西梅枝さいかちさんや中垣内なかがいとなどのほかの勉強会への参加者たちが、ほほえましく見守っているのをみると、まあ二人が物理をを理解できたならいいかと思えてくるから不思議だ。


 いや、やっぱりちょっともにょりはするけども。


 ま、そのための勉強会だしな。

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