第110話 ふみちゃんのほうの文化祭の準備は順調みたいでよかったな

 さて、翌日の日曜日はふみちゃんと買い物がてらデートだ。


 起き抜けに目覚まし時計を見ると、現在は朝7時だった。


 そしてカーテンを開けて外を見ると、しとしとと雨が降っていた。


 もう梅雨に入ったのだろうから仕方ないが、雨降りだと駅までは自転車ではなく傘をさしての徒歩になるので少し時間がかかるな。


 まあ、起きたのも平日のいつもよりは遅いけども、朝食をとったり出かける準備をしてのんびりしていればいい時間になるかな?


 そういえば集合場所や時間を決めてなかったような気がする。


 俺はふみちゃんへメッセージを送ってそれらを決めることにする。


『おはよう、ふみちゃん』


『うん、おはよう』


『今日の買い物へ出かけるときの集合時間と場所だけど朝9時に俺がふみちゃんの家まで迎えに行くでいいかな?


『うん、僕はそれでいいよ。

 もう準備の時間があんまりないからあとでねー』


『お、おう、じゃあ後で』


 うん、女の子には2時間でも準備時間としては十分でもないらしい。


 俺は寝間着から着替えて階段を降りて行ってお母さんへ挨拶をする。


「お母さんおはよう」


「あら、おはよう。

 あんまりお寝坊さんだったら、起こしに行こうと思っていたけど、ちゃんと起きれたのね」


「まあ、昨日は割と早めに寝たしね」


「それはいいことだわ、じゃあ、顔を洗ってきなさいな。

 朝ごはん作っちゃうから」


「はーい」


 俺は歯を磨いたり、顔を洗ったり、軽く髪の毛を整えたりしてからリビングへ戻った。


 テーブルには目玉焼きとサラダに牛乳が置いてあり、オーブントースターからは食パンが焼けるいい匂い出している。


「お昼にゆっくり食べられるように、朝ご飯は軽めにしておいたわよ」


「そこまで気を使わなくても大丈夫なのに……」


「おとなりのふみちゃんは”今日はあっちゃんが9時くらいに僕を呼びに来ると思うからさ。

 6時に起こしてね。

 あとおなかが膨れると恥ずかしいから、朝ごはんは少しでいいよ”って言ってたらしいわよ」


「あー、親を経由して、ふみちゃんが何を言っていたのかが、全部俺に筒抜けってことはこっちのこともふみちゃんは全部知ってるんだろうねぇ」


「まあ、お隣さんだしそういうものだと思うわよ」


 恐るべきはお母さんたちの井戸端会議連絡網だなぁ。


 ふみちゃんや弥生ちゃんに対して俺の行動は全部筒抜けってことか、とほほ。


「まあ、お母さんが4月ごろに比べてすっごく元気に健康になったようでよかったよ」


 俺の言葉にお母さんはうんうんうなずいた。


「そうね、体重が落ちたこともあって、今はすっごく体が軽い気がするわ」


「うん、それは何より」


「それに肌の艶なんかも、前より全然よくなってきてるのよ」


「うん、それも見てればわかるけど、やっぱり食事と運動は大事なんだね」


「そうね」


 血糖値が高くなっていたことにより糖化して、機能停止していた細胞も少なくなっているのだろう。


 そんなことを話しながら朝食を腹の中に収めた俺は皿をシンクへもっていく。


「あとはお母さんが洗っておくから、あなたも出かけの準備を整えなさいな」


「はあい」


 というわけで俺は自室に戻る。


 しかし、服の買い物をするのに着ていく服に悩むというのはなんなんだろうな。


 とはいえ服の数がそれなりに増えてくると、着ていくものに迷う感覚はわからなくもないんだけどさ。


 今日は雨ふりであることもあって微妙に気温は低めだけど、夜はそこそこ暑くなりそうだし、薄手で長袖のシャツの上に、一応カーディガンを着ておくか。


 朝食を食べて、着ていくものに悩んでいたらもう9時だな。


「じゃ、行ってきます


 俺はお母さんに出かけることを告げる。


「はい、行ってらっしゃい」


「そう言えばお父さんは今日はまだ寝てるのかな?」


「今日はお天気も悪いからお父さんはお寝坊さんね」


「まあ、たまのお休みの日くらいはゆっくり寝たい時もあるよな」


「そうそう」


 そして、傘をさし、お隣さんの玄関へ向かい、インターホンを押す。


 ”ピンポーン”


「はいー、あっくん、もうちょっと待っててねー」


「お、おう」


 しばらく玄関前で待ってると、玄関が空いてふみちゃんが出てきた。


「ごめんね。

 着てく服がなかなか決まらなくってさ」


「まあ、今日は雨が降ていて足元も滑りやすそうだし、朝方は微妙に肌寒いしで、着ていく服には俺もちょっと迷ったからわかるよ」


 ふみちゃんの格好は俺と同じようなカーディガンにパンツで足元はスニーカーだな。


 傘を開いて俺たちは駅まで歩きだした。


「やあ、あっくんがそういう服選びが大変だってのがわかるようになってきてよかったよ。

 なんでそんなことで悩んでたのなんて言ったら、僕怒ってるとこだったからね?

 せっかくのデートだし、本当はもっとかわいい格好でお出かけしたかったんだけど」


「うん、でもタイルなんかが敷き詰められてるところで足を滑らせて怪我したりしても困るしね。

 それにふみちゃんはかわいいんだから服が活動的なものでも十分かわいいと思うよ」


 俺がそういうとふみちゃんはニパっと笑った。


「うんうん、僕の朝方の苦労と悩みを把握してくれていてありがとう」


「まあ、俺も1時間くらいは服選びに悩んでいたしさ。

 今日は朝は少し寒くても日中は少し蒸し暑くなりそうだから困るよな」


「そうなんだよね。

 学校の制服なんか着替えとかもきかないからもっと困るんだけど」


「そういう点でセーラー服は本当に大変そうだね」


 そんなことを話しながら歩いていたらふみちゃんは急激に話題を変えてきた。


「僕思ったんだけどさ、あっちゃんってお母さんのこと大好きすぎじゃない?」


「え?

 そうかな?

 普通だと思うけど」


「普通こんなかわいい幼なじみよりも先に、お母さんに水着を買いに行こうよ、そして一緒に泳ごうよなんて言う?」


「え、ああ、まあそこはお母さんが糖尿病の対策のために食事を変えたり、適度に運動したりしてきちんと痩せてきれいになってくれればそうなるんじゃないかな?」


「しゃーらっぷ、そういうのが普通じゃないって僕は言ってるんだよ?」


「うえ?」


「はあ、あっちゃんの場合さ、クラスメイトの女の子や従妹の弥生さんじゃなくて、あっちゃんのお母さんが一番の強敵になりそうだよねぇ」


「ああ、うーん、それは大丈夫だと思うけどな。

 姑としていびってくるみたいなのもないと思うし」


「あっちゃんはその辺りは本当わかってないよねぇ」


「んー俺は仲良くやってほしいんだけどな」


 弥生ちゃんとお母さんとか弥生ちゃんとふみちゃんとかがバチバチ火花を散らしてるのは心臓に悪かったし。


「まあ、あっちゃんはマザコンでなんでもお母さんの言いなりってわけじゃないと思うけどね」


「そりゃそうだよ」


 俺がそういうとふみちゃんはふうとため息を吐いた後言った。


「まあ、それならまだいいか。

 高校一年生ならそんなものなのかもしれないしね。

 で、まずは船橋のトレファクでよさげな古着をみてから、らららぽーとで雑貨をみて、そのあと水着を見るでいいかな?」


「うん、俺はそれでいいよ」


 というわけで馬込沢駅に着いたら電車に乗り船橋へ移動。


 終点の船橋で降りたらトレファクへ移動する。


「なんだかんだで、古着は安いのはいいよな」


 俺がそういうとふみちゃんは言った。


「安いだけなら、ファストファッションンチェーン店とかでもいいけど、オシャレな服をそろえようとするとなかなか難しいしね。

 その点古着はレディースカジュアル、セレクトショップブランド、ナチュラルブランドとかもあるし、らららぽーとブランドの服とかも売られてここに置いてあったりするし」


「なるほどなぁ」


「ここだけじゃなくてもうちょっと西にある古着屋のtoscoにも行ってみようか」


「なるほど、まあ、そこまで遠くないなら二つの店を見比べてみたほうがいいかもな。

 古着だと、サイズが合うかどうかっていう問題もあるし」


「そうそう。

 僕たちは高校生だからそんなに服にはお金をかけられないしね。

 確かに古着の場合はサイズの問題はあるんだよね」


 俺はその言葉にうなずく。


「お母さんや弥生ちゃんは服を買うのに万札をほいって出したりするけど、高校生には厳しいよな」


「それはあの二人があっちゃんを甘やかしすぎなだけだとも思うけど?」


「うへ、藪蛇つついたか」


 そんなことを言いながら古着屋を見て回りよさげなトップスを手にとっては合わせてみたりして、一枚ずつ俺たちは服を買った。


「なかなかいい買い物だったね」


「ああ、そうだな」


 そう言いつつも実際は良い買い物だったのか、俺にはいまいちよくわからないままだったりしたがふみちゃんがそういうのなら間違いないんだろう。


 それかららららぽーと行きのバス停まで移動してバスを待ちらららぽーとへ移動。


「まずは文化祭の出し物に必要な物の買い物からかな。

 そういえば準備は順調?」


 俺がそう聞くとふみちゃんはコクっとうなずいて言った。


「思ってたよりみんなずっと乗り気でさ、準備もワイワイやりながら進めてるところだよ。

 僕はルーレットのディーラーだけど、ポーカーとかブラックジャックなんかのディーラーもノリノリだね。

 教室の入り口や中に豪華なカジノっぽい電飾の内装を施したりもしてるよ」


「へえ、それならよかったね」


「うん」


 そして俺たちは雑貨屋に入った。


「テーブルに敷くテーブルクロスを緑で統一するようにしたら、カジノらしく見えると思う」


「ふむふむ、学校の机を二つ向かい合わせにするぐらいの大きさだから……。

 こういうのちゃんとしたカジノのチップとかを置く場所とかがある奴を買おうとすると1万円くらいするんだよね」


「文化祭の二日間だけに1万円は高すぎるな」


「だからそれっぽくするためにテーブルクロスは引く(敷く)けど、そこまでこったものにはしないよ」


「雰囲気を出すのは必要だけど、そこに金をかけすぎるのは本末転倒だしな」


「まあ、手間で補えそうな部分はそれで何とかするけどね」


「なるほど」


 雑貨屋で緑のテーブルクロスを購入したら後は……。


「さて、じゃあ僕たちの海で着る水着を見に行こうか」


「そ、そうだな」


「今年はワンショルが人気になりそうなんだけどオフショルもまだまだ人気なんだよね」


 ふみちゃんがそういうが俺は首をかしげざるを得ない。


 俺の様子を見てふみちゃんは肩をすくめた後説明してくれた。


「やれやれ、オフショルとかワンショルってなんだ?って顔だね。

 オフショルはオフショルダーで肩の部分に布とか紐とかがないタイプ。

 ワンショルはワンショルダーで片方だけ布や紐があるタイプだよ。

 あとはハイウエストでおへそが隠れそうな水着とか。

 色に関してはあんまり派手じゃない色が流行になりそうみたい」


「な、なるほどな」


 なるほど、まったくわからん。


 女の子のファッションは流行廃りがあるものだが男には理解不能なところも多いよな。


 ビキニがいいかな? ワンピースの方がかわいいかな? などと真剣に水着を選んでいるふみちゃんはまあ、やっぱりかわいい女の子だよな。


「ねえ、どっちがいいかな?」


 ふみちゃんが持ってきたのはアイボリーカラーンでワンショルタイプビキニ水着とオフショルタイプのギンガムチャックのワンピースの水着。


「俺はギンガムのワンピースの水着のほうがかわいいと思うけどな」


「ふむふむ、まあこういうのもレトロかわいいかもしれないし今回はこれにするよ」


 あれ? レトロかわいいってこれ褒められてない気がするけど?


 最近は昔の流行が一周回って新しいってなってるというのも聞いたことがあるけど。


 まあ、なんだかんだで買い物はふみちゃんも楽しんだようだし、俺も勉強になった気がする。


 天気が良ければもっと良かったけどな。


 完了


 今週末日曜:ふみちゃんと買い物デート


 予定


 来週土曜:ふみちゃんの学校の文化祭


 6月25日:広瀬君の誕生日


 7月10日:東雲しののめさん誕生日


 7月21日:新發田しばたさんと小規模同人イベントに参加


 7月29日:西海枝さいかちさんとホタル観賞


 8月1・2・3日:ふみちゃんと海


 8月5・6・7・8日:九重ここのえさんと山でキャンプ


 8月10日:ふみちゃんの誕生日


 8月のお盆:白檮山かしやまさんとコミケ1日目2日目に参加


 8月20日:中垣内なかがいととプールデート


 8月23日:南木なみきさんと水族館デート


 8月26・27日:弥生ちゃんとTDR《トウキョウディステニーリゾート》


 7月末と8月末:東雲しののめさんと宿題

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