第51話 どうやらかなり面倒な事態になった
さて、
だが、そのことは必ずしもいいことばかりではなかったようだ。
翌朝の登校時、俺の下駄箱になんの特徴もない封筒が入っていた。
そしてそれを開けた所、わざわざ新聞の文字の切り抜きで書かれた、一枚の紙が出てきたのだ。
「不細工野郎があんまり調子にのるなよ、殺すぞ
女どもに何かあったら、全部お前のせいだ」
まあ、これはどう考えても脅迫状的な何かだな……。
俺を殺すというのはまだ標的が俺と明確だからいい。
だが、女どもというのは
俺は自分のクラスに向かい、
「みんな済まない。
俺の下駄箱にこんなものが入っていたので、今日からしばらくは可能なら学校まで車で家族に送り迎えをしてもらってほしい」
そして、脅迫状をみんなに見せる。
「まさか……殺すって」
そういって
「まあ、俺に対しての生命への明確な害悪告知は脅迫罪で2年以下の懲役または30万円以下の罰金という実刑犯罪だし、きちんと警察へ届けるつもりだけどな。
それで俺たちに何かあれば警察も動くだろうし」
とはいっても、実際に何かがあってからしか動かないのが警察なんだけどな。
「わかったわ。
あたしは親に迎えに来てもらう」
その様子に聞き耳を立ていたらしい、俺の前の席の羽賀がチッと舌打ちをして教室から出ていった。
あいつ、俺のことをことさら敵視していたようだが……な。
”逆行転生対象αの逆行転生対象βヘイト値の増大並びに害意を確認。
逆行転生対象βは攻撃行動へ注意してください”
この声はいったいなんなのだろう。
とはいえ羽賀の行動はかなりやばそうなものを感じる。
だから俺は放課後に、まず駅前の派出所に行き、脅迫の手紙が下駄箱に入っていたことを、その書状を見せて警察官に言ったのだが、やはり真面目には取り合ってもらえなかった。
こうなると、身を守るためのものを入手しておいた方がいいか。
今日の部活には参加できないことをSNSメッセージで大仏さんに送ってから、俺は大通りに面したサープラス(軍や警察の払い下げ品)専門店に行くことにした。
「すみません、ここはボディアーマーはありますか?」
「今は警察用の安い奴は売り切れだね。
軍用なら結構残ってるよ」
別に軍用ボディアーマーのような銃弾や爆発物に対しての対処の必要性まではないはずなのだが、警察用ボディアーマーが無いならば仕方がない。
「なら軍用ので行きましょう」
「そうなると、安いので5000円から高いので15000円だね」
「うーん、とりあえず一番安いので。
あと、ボディアーマー用ソフトアーマーとアームカバーと太もも用アーマーもあります?」
「ああ、有るぞ。
全部合わせると値段は1万5千円ほどになるけどいいかね?」
「わかりました、ではそれでお願いします。
あと催涙スプレーってあります?」
「ああ、あるけどそちらも買うかね?」
「値段はどのくらいでしょうか?」
「小型で2000円、中型で4000円だね。
家に防犯用に置くとかでないなら大型は要らないよ」
「スプレーが届く距離ってどのくらいでしょうか?」
「小型で2メートル、中型で5メートルってとこだね」
「うーん、なら中型かな」
「じゃあ4000円だね」
「はい」
やれやれ一か月の小遣いが全部吹っ飛んでいったぜ。
手痛い出費だけども、これで最悪の場合に包丁やダガーナイフ、アイスピックや金属バットでの攻撃くらいなら何とかなるだろう。
手斧とか鉈になるとさすがにもう無理ではあるけども、いくらなんでもそこまではしないと思いたい。
俺の家の近くは大通りから少し入った所なのだが、この辺りは大通りでさえ、街灯がまばらで人通りの少ない場所がある。
そして奴は街灯のまばらな場所で待ち伏せしていやがった。
「やっぱ、あの脅迫状を俺のげた箱に入れたのは、お前か……羽賀」
そう、俺の前の席の生徒である羽賀が金属バットをもって、にやにや笑っていたのだ。
「不細工のくせに調子に乗りやがって、うざいんだよ、お前!
この世界の主人公は俺なんだ!
寝取り野郎は消えな!」
そう言って奴は金属バットで殴りかかってきた。
念のためにボディアーマーを買っておいてよかったというものだが、この世界の主人公は俺っていったい何なんだよ。
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