第49話 やっと落ち着くかと思ったら、南木さんに英語を教えることになったよ

 さて、パティスリーアンドウトロワの、宣伝用動画の編集も終わって、投稿もすんだ。


 俺は必要な予習や復習に、明日の家庭科部の部活動の時間に行う勉強会のために東雲しののめさんや西海枝さいかちさん用の問題をネットの問題集をもとに作って、プリントアウトなどをして寝ることにした。


 そして翌朝の月曜日。


 学校へ登校して、自分たちのクラスの教室に入り、いつもの通り挨拶をしながら、教室の中を見渡すと、中垣内なかがいと南木なみきさんが、にこやかに会話をしていた。


 どうやら昨日のパティスリーでの撮影にかこつけて、弥生ちゃんと一緒に、二人をひきあわせてケーキなどを食べながらおしゃべりさせたのは、ランチョンテクニックの効果もあって、大成功といっていいようだった。


 また、新發田しばたさんの方はどうかというと、何やらスマホをいじっている。


 俺は何をしているのか確かめるために新發田しばたさんの元へ行き、話しかけてみた。


新發田しばたさん、おはよう。

 朝からスマホいじってるなんて珍しいね」


 俺がそういうと新發田しばたさんは顔を上げてニコっと笑って答えた。


「あ、秦君おはようございます。

 今は白檮山かしやまさんとメッセージのやり取りしているんですよ」


 俺はその答えに、うなずいて言う。


「ああ、なるほど。

 同じ趣味の同性と仲良くなれてよかったよね」


「はい、紹介してくれて、本当にありがとうございます」


 どうやらいろいろうまくいったようだし、これでようやく落ち着くかな。


 と思っていたのだが、少々その考えは甘かった。


 新發田しばたさんの元を離れた俺の所へ南木なみきさんがやってきたのだ。


「あっ、あの……秦君にお願いしたいことがあるのですが……お話、してもいいですか?」


「あ、うん、いいよ

 お願いってなんだろ?」


「静香ちゃんから聞いたのですが……秦君はとっても勉強を教えるのが上手だって」


「あー、中垣内なかがいとからそう聞いたんだ。

 まあ、それなりにわかりやすく教える自信はあるけどね」


「じゃ、じゃあ、私にも……ぜひ勉強を教えていただけませんか?」


「ん、いいけど南木なみきさんが教えてほしい科目って何かな?」


「あの……英語……なんですけど」


「英語かぁ、ん、了解だよ。

 ちなみに高校教科書の文章や英単語は大丈夫かな」


「それが……あんまり……大丈夫じゃない感じです。

 中学校までは何とかなっていたのですけれど」


「ん、了解。

 高校の英語はいきなり難易度が上がるからね。

 勉強はいつやるかな……」


 俺は中垣内なかがいとに声をかける。


「おーい、中垣内なかがいと

 ちょっときてもらえるかな?」


「ん?

 なにかな?」


 中垣内なかがいとは、そういって俺の元へやってきた。


「明日の放課後だけど、南木なみきさんも一緒に勉強を教えてもいいかな?」


 俺がそう聞くと中垣内なかがいとは一瞬、複雑そうな表情をしたがコクっとうなずいた。


「あ、うん、私は別にそれでもいいよ」


 何か微妙に中垣内なかがいとが残念がってる気がするが、俺もスケジュール上空いている時間がないので我慢してもらおう。


「そうしたら南木なみきさん。

 できればでいいんだけど、ユアチューブへの投稿動画の撮影に協力してもらえるかな?

 今は俺と中垣内なかがいとの二人でやってるんだけど」


「え、あ、はい……大丈夫です。

 昨日のパティスリーでやったようなことですよね?」


「まあ、今回は少ししゃべってもらうつもりだけどね。

 じゃあ、明日の放課後に家庭科実習室で一緒に勉強しながら、動画の撮影もするってことでよろしくね」


 俺がそういうと南木なみきさんは深々と頭を下げていった。


「あ、はい……すみません……。

 どうかよろしくお願いします」


「まあ、勉強を教えるのが3人から4人になったところで、もうそんなに変わらないしね」


 英語を教えるとなるとまたどの程度でつまずいているのか確認しながら最適そうな勉強方法を考えないといけないけど、まあ何とかなるだろう。


 なんとかなるといいなぁ……。


 なお、放課後の家庭科部の部活動の時に行った勉強会で西海枝さいかちさんに作ってきた問題は、当人にとても好評だったよ。


「わざわざありがとうございます。

 すごくわかりやすいです」


「ん、それならよかったよ」


 ちょっと手間がかかったけど、そのかいはあったな。

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