第35話 南木さんも人の輪に入れるようになれたかな

 さて、カラオケはそれなりに盛り上がり、参加メンバーの各自が適当に曲を入れて歌っていると、いつの間にか終わりの時間になっていたらしく、部屋に確認のコールがかかってきた。


「そろそろ、終了のお時間ですが、延長なさいますか」


「あ、いえ。

 これで終わりで、お願いします」


 まあ、みんな十分歌ったし、そろそろ曲かぶりも出そうだから、もうカラオケはいいだろう。


 自分が歌おうと思った曲を、他の人に先に入れられると、地味にショックだったりするし。


 そして、結構長い時間、ボウリングとカラオケを一緒にやり、ファミレスで食べ物をシェアして食べたりしたことで、南木なみきさんもこのグループの人の輪に、だいぶ馴染んだんじゃないかと思う。


 世の中にはカラオケが嫌いという人間も実は少なくなく、それは自分は歌が下手だし、歌うときっと空気が悪くなるので聞いてるだけにしたいという人間に、しつこく歌わせて、その結果本当にうまくなくて場が白けてしまうなどで、カラオケで歌うことに苦手意識がつくことだったり、他人の歌を盛り上げなきゃいけないムードや、曲を被らせてはいけないという無言の圧力が原因だったりするのだが、俺があまりうまくはないが下手でもない歌を歌い、歌うということへの一番最初のハードルを下げられたと思う。


 まあ何れにせよそ、自分の「楽しい」を空気を読まずに強要するな、相手にとってもそれが「楽しい」とは限らないという事を考えて、行動するのは大事なのだな。


 これは日常の会話からデートなどまでのすべてのことに言えるけども。


 そして最後に俺は南木なみきさんに直接聞いてみる事にした


南木なみきさん、今日は楽しめた?」


「あ、はい、こういうふうにみなさんと一緒に遊ぶということを、いままでやったことがなかったので、少し心配でしたがすごく楽しかったです」


「ああ、それなら良かったよ」


 なんだかんだでムードメーカーとして東雲しののめさんが動いてくれたのも助かった。


 あとはオーランを出て、シャトルバスで駅までもどって、そこで解散だ。


「じゃあみんなまた明日な」


「まったねー」


「はい、また明日」


「ま、また明日です」


「また、このメンバーで集まって遊びたいね」


 と女性陣と剛力くんが明るく答えるのに対して、広瀬くんがふうとため息をついていった。


「今から、宿題も片付けないとなぁ」


「あ、ああ。

 たしかにそうだな……」


 まあ宿題も片付けないといけないが、その他にもやらないといけないことがある。


 まずは弥生ちゃんにSNSでメッセーシを送る。


『弥生ちゃん

 来週の日曜日って暇?』


『大丈夫、暇だよー』


『そうしたら弥生ちゃんが選んでくれた私服に合わせたベルトや靴を見繕うの手伝ってもらえないかな。

 今日友だちと遊んだら服はいいけど靴があってなくてダサく見えるって言われた』


『あーそうかも。

 ごめんね、私もそこまで気が付かなかったよ』


『おしゃれって大変なんだなぁ』


『まあ、おしゃれは大変だよね

 じゃあ朝の10時、駅前で待ち合わせでどうかな?』


『うん、それでいいよ』


『ん、たのしみだね』


『毎回ごめんね』


『いーの、いーの』


 そして、俺は家に到着後、ノートパソコンの電源を入れて立ち上げてピクシーズにアクセスする。


 新發田しばたさんのイラストに感想がついているかどうか、確認したのだ。


 ”おぉ、初投稿にしてはかなりうまい”


 ”とても素敵な絵です”


 ということで感想がポツポツついていたのでホッとした。


 俺も”初投稿でこれは凄いなぁー”と入れておいた。


 実際に投稿されたイラストに感想がつかないことも珍しくはないが、まだ毀滅の刃はそこまでメジャーな存在になっていないので、現状では競争相手が少ないほうなのが良かったのだろう。


 今はまだアニメ化されて徐々に注目されつつあるってところだからな。


 ほっと一息ついたところで宿題や予習復習も済ませて、翌日。


 おれは朝一番で新發田しばたさんのところに向かって、ピクシーズの投稿イラストの感想を見せた。


「あ、私のイラストに3つも感想が付いてるんですね」


「うん、良い感想ばかりだしいい出だしなんじゃないかな?」


「そうですね、こうやって感想をもらえるってとても嬉しいんだって初めて知りました」


「これで、いろいろな人と交流が持てるとなおいいね」


「はい!」


 新發田しばたさんは投稿仲間として、中垣内なかがいととならば仲良くなれるかな?

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