第32話 ボウリングを楽しむことで南木さんも人の輪になじめそうでよかったな
さて、
まあこういった職場で上司や同僚の信頼を得たいときは、年上や異性の場合はとにかく失敗しても一生懸命頑張るのが一番手っ取り早い。
同性の同年代だと相手の足を引っ張らない、かつ、相手の手柄を奪わない、そして仕事の成果をきちんと出すとか面倒なことになるけども。
「このお店のケーキや焼き菓子なんかはオリジナルのものはないですから、そこまで覚えるのは大変ではないと思います。
ともかく、どのケーキがどんな味で、材料に何が使われているかなどのお客様からの質問に、にこやかに応対できるようになりましょう」
「あう、了解です」
「メインはロールケーキとショートケーキ、シフォンケーキ、チョコケーキ、ピスターシュ、チーズケーキ、レアチーズケーキ、モンブラン、ムース、フルーツタルト、パウンドケーキなど。
焼き菓子はエクレアにシュークリーム、マカロンやフィナンシェ、サヴァラン、クッキー、サブレ、ドーナツなど。
あとはプリンやクレームブリュレ、ババロアなどもありますね」
「さらにそれぞれにいくつか種類があるんですね」
結構種類があるなぁ……確かにそこまで独創的ではないケーキが多いのは助かるけど。
まあ風俗店で50人近い在籍の子の顔と名前と性格なんかを覚えるよりはまだ楽だけどな。
お客さんにおすすめの女の子を勧めるにしても、外見はともかく性格的に気が合いそうな子を選んでつけるのは結構難しい。
男って外見優先の場合が多いから、性格的に合わなそうでも、そういう自分お好みの外見の子を指名して、1万円なり2万円なりを払って、プレイ後しょんぼりしていたりするんだ。
ケーキとは気が合わないことはないし、ホールケーキでも1000円くらいだしな。
まあそんな感じで、まずはケーキの種類を覚えて質問に対しての接客対応に慣れることから始めて、それができたら、次はショーケースへの補充、テイクアウトでオーダーの入ったケーキの箱詰めやラッピング、イートインの配膳などもやることになるだろう。
個人経営のパティスリーでは何でもできるようにならないといけないから、覚えることはたくさんある……がまあ仕方ない。
14時ごろに一息ついたので1時間の食事時間と休憩をもらい、19時まで働けば今日は終わり。
上がり間際に
「ご苦労様でした。
来週も今週と同じように金曜日土曜日で大丈夫ですか?」
「ええ、大丈夫です」
「では来週もよろしくお願いしますね」
「はい、ではまた来週」
俺がそういうとそして
「また来週もよろしくね」
「ええ、来週はもう少しお手柔らかに願います」
そんな感じでくたくたになった俺はさっさと夜飯を食べ、風呂に入って、宿題をかたづけ寝る。
そして翌日は俺、広瀬君、剛力君、
駅前に9時集合ということで、いつも通りシャワーを浴びて軽く身だしなみを整え、弥生ちゃんに選んでもらった私服で駅前に向かう。
15分前には着くようにしたのだが、
「うわ、みんな早いね」
俺がそういうと
「実は私、こうやってお友達と一緒に遊ぶのって初めてで」
そして
「わ、私も実はそうなんです」
「あ、そうなんだ」
ちょっと意外だったりするが確かに中学生は、あんまり友達とオーランで遊んだりしないかもな。
「まあ、こういう時は早めに来るのがマナーらしいし?」
広瀬君はそういって笑った。
「そうですよね」
剛力君も広瀬君の言葉にうなずく。
「ううむ、15分前じゃ遅かったか?」
まあそんなことを話していると5分前に
「ごっめーん。
道路が混んでてバスが時間通り来なかった」
「あ、そりゃしょうがないな」
で、
「秦ぴっぴさ、その恰好なんかバランス悪い」
「え?」
「服はお洒落なのに、靴がいまいち。
っていうか服に合わない靴はダサく見えるっしょ?
洋服の色が薄く淡い色なのに 、靴の色は黒や茶色だとコーディネートがいまいち決まらないよ。
バッグやポーチ、ベルトなんかの小物全般にも言えるけど全部合わせてのお洒落だから。
まあちゃんと綺麗に磨いてるあたりは、性格出てるけどね」
「あ、靴とかか……服と揃えて買わなかったのが失敗だったな」
「なーんか秦ぴっぴってさ、なんでもそつなくこなすイメージだったから、ちょっと意外だよー」
「いや、実は服も弥生ちゃんに選んでもらったもんで、俺にはファッションセンスなんてないんだよな」
俺がそういうと
「や、弥生ちゃんって、いったい誰ですか?」
続けて
「も、もしかして秦君の彼女さん?」
なんで二人は焦っている様な表情なんだろう?
「いやいや違うって。
弥生ちゃんは3つ年上で、今年大学1年生の従姉なんだ。
駅で三つ離れた場所に住んでるから、俺が小学生のころは親に連れられてお互いの家を行き来してたりして一緒によく遊んだけど、中学の時にはほとんど会わなかったんだ。
けど、高校入学後にたまたま連絡したら、私服を選んでくれるっていうんでお願いしたんだよ」
「なるほど」
「従姉のお姉さんですか」
二人はほっとしてるようだが、まだ微妙な表情だ。
「まあ、それはともかく、まずはシャトルバスでオーランに移動しようぜ」
ということでシャトルバスでオーランに移動し、ちょっと話し合って最初にやるのはボウリングに決まった。
ちなみに
「まあ、みんな、あまり力まずに気楽にいこう」
みんな俺の言葉にうなずき、シューズをかりて、ボウルの重さを手に取りながら決めている。
「女性なら10ポンドか11ポンドだけど、俺だとそれは軽すぎるし14ポンド くらいかな」
俺がそう言うと剛力君が言う。
「そんな重たいのを投げるの?」
「ボウルの重さは、体重の1/10くらいが目安らしいからね。
14ポンドは約6.4キロだから」
「じゃあ……僕は11ポンド(約5キロ)かな」
「剛力君は華奢だし、それくらいにしておいた方がいいかもな」
で、ボウリング開始。
「いくぜ、うりゃ!」
ボールを投げると、レーンの上をすべるように転がっていき、パッカーンと10本のピンが一瞬で弾け飛ぶ。
これが実に爽快なんだよな。
「すごーい、ストライクだ」
剛力くんが自分のことのように喜んでいるのでハイタッチをかわす。
「いやいや、まぐれだよ」
おそらくボウリングは人間の本能的な破壊的衝動を満たしてくれるのだろう。
しかも、ボウリングはボールさえ持てれば、男女の区別なく子供でも大人でも老人でも、同じ空間で一緒に同じゲームを楽しむことができる。
屋内で空調もバッチリなので、まだ肌寒い日も多いこういう季節でも快適に遊べるしな。
どの季節でも外の気候を気にせず楽しめるのはいいところだし、運動神経のいい悪いもそこまで関係しない。
ノンガターレーンを使えばまったく倒れないことも少ない。
今度は剛力君が投げるが……。
「ああ、全然倒れなかった」
「まだまだスペアは狙えるんじゃないか?」
「う、うん、頑張るね」
「ああ、頑張って」
残念ながらスペアもとれなかったが、そこそこの腕ならこんなもんだ。
実際に俺もその後、ストライクは全然取れなかったしな。
とまあ、俺と剛力君がキャッキャうふふしている間に、
ボウリングを一緒にゲームしていくと、楽しさや喜び、くやしさなんかを分かち合い、お互いに一体感が感じられたりするから、いつの間にか仲よくなれたりするんだよな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます