第16話 学校裏サイトでの誹謗中傷か……んで学校の校舎裏で袋叩きにされそうになったんで返り討ちにしてやったよ
さて、翌日の朝。
いつも通りに学校に登校すると今日は
「
「
ここの学校裏サイトに私が男に媚び売ってて、うざいっ、死ねって書かれてるって。
それで本当なのか確かめてみたのですが……」
「本当に書かれていたってわけか」
「はい……」
俺も見てみたが確かに書かれているな。
風俗や水商売でもそうだが、ルックスがよいが、同性とのコミュ力が足りない女の子は嫉妬や妬みやっかみを受けて、こういった誹謗中傷の標的になりやすい。
特に”ホストラバー”という風俗水商売専門の匿名掲示板の誹謗中傷の度合いはかなりやばい。
こういった店の女の子の場合は源氏名での中傷なので、本名がさらされているわけではないからと、なかなか削除まで至らないことも多いしな。
単純に削除依頼の件数が多すぎるだけかもしれないが。
「うーん、個人で削除依頼を出すと、かえってエスカレートする可能性もあるから……担任の先生を通じて、人権教育推進委員会と教育委員会に事実を報告した方がいいかもな」
俺がそんなことを言ったら、俺たちのほうに聞き耳を立てていたやつが慌てているな。
「ところで
「
と
これはあれか。
自分で書きこみしておいて、あたかも他人が書いたものを発見したように、誹謗中傷した相手にそのことを知らせるってやつか。
裏サイトをこまめにチェックしている人間ならば、自力で見つけることもあるだろうけど、そうでない人間に、そういったことが行われているぞと、知らせるには自作自演が一番手っ取り早いからな。
とはいえ何らかの物的証拠があるわけでもなし、犯人と決めつけるのはまだ早いけどな。
「まあ、そういった書き込み、具体的には実名での誹謗中傷の書き込みは刑法第230条、231条の名誉毀損、侮辱で、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に相当するし、最悪警察にも訴えてもいいかもな」
「そ、そこまでしていいのでしょうか?」
「ことを荒立てたくないというなら、このままにしておいて
「そう……ですね」
社会の最底辺と思われている風俗で働いたりしているうちに、俺はきもいと言われようが、死ねといわれようが大して気にならないようになっている。
だから、匿名掲示板を見ないようにして、あとは放置もできる。
けど、高校生にそうしろってのはまず無理だよな。
「まあ、俺も何か対処するいい方法がないか考えておくよ。
取り合えず書き込みは気にしない方がいいよ」
「……はい」
そうはいってもやっぱ無理だよな。
さて、どうしたものか……。
やがてチャイムが鳴って授業が始まったので、俺は自分の席に戻って、いったんは授業に集中することにした。
そして昼休みになったので、今日は飯をどうするか考えていたら、一人の男子生徒が俺のところへやってきた。
「君が秦君、だよね?」
「ああ、そうだけど、君は?」
「僕は阿藤だけど、ある女の子から言付けをもらってね。
放課後に校舎裏に来てほしいんだって」
「校舎裏……ねぇ」
それを聞いた
「はたぴっぴは自覚なしのタラシだから、これは告白っしょ!」
「んな、わきゃないっての。
まあいいや。
わかった放課後校舎裏にいくよ」
「ん、じゃあ、伝えたから」
で、放課後。
「ごめんね
ちょっと野暮用済ましてくるから、裏サイトについては明日の朝でいいかな」
「あ、はい、すみません」
「本当にごめんね」
そして俺はスマホをいじりながら、校舎裏に向かう。
そこにいたのは、昼休みに俺を呼び出しに来た阿藤と後二人、加藤と佐藤だったかな? の男子生徒3人と
俺はスマホのアプリ一覧から音声レコーダーを選んで録音をオンにしてポケットにしまい込んだ。
そして男子生徒三人が、にやにやしながら俺を取り囲む。
「やっぱり騙されやがったか」
「まあ女に声をかけまくっているような奴なら、ふらふら来るだろうとは思ってたけどな」
「お前みたいなやつを見てるとむかつくんだよな」
「お前らは安藤に伊藤、遠藤だったか?」
「俺は阿藤だ!」「加藤!「佐藤!」
「ああ、すまんすまん、どうも男の名前はよく覚えられなくてな」
おれは男三人は無視して
「学校裏サイトに、
「そうよ!
あの女、ちょっと顔がいいからって、ちやほやされて、むかつくのよ。
あんたも痛い目見たくなければ、あの女にかかわるのは止めなさい」
「
「それは当り前よ、で、あの女にかかわるのは止めなさいと言っているのは、聞こえないのかしら?」
「それはちゃんと聞こえているよ。
だけどお前にそんなことを言われたからって止める筋合いはないね」
「あっ、そう、なら痛い目に合えばわかるのかしら?」
「さあ、どうだろうな?」
俺がそういうと
「もういいわ、この男が減らず口をたたけなくなるくらい、ぼこぼこにしちゃいなさい!」
先頭に立って殴りかかってきたのは阿藤。
「俺はへらへら声をかけて回って、女にちやほやされてるてめえが気に食わねぇ!」
そういいながら大ぶりのパンチで殴り掛かってきた。
「そんなこと言われてもなぁ」
とはいえ、ど素人の"手打ちパンチ"じゃ、怖くもなんともない。
俺は風俗で働いていたときに、元自衛隊の熊みたいな店長に怒鳴られたり殴られていたこともあった。
さらに、その店長がキャバクラの客引きに客を紹介したら紹介料を出すと言ったのに、あれこれ理由をつけては金を出さなかったせいで、まじもんのヤクザ10人くらいに受付に乗り込まれて取り囲まれたこともあった。
さすがに暴力や恫喝に慣れてるような連中は雰囲気が違うんだよな。
そんな俺には、ただの高校生男子の3人に囲まれて殴られそうになってるくらいでは、ちっともビビりはしない。
そして素人パンチや蹴り程度なら、自分から受けに行った方がダメージが少ない。
なので、まずは適当に殴られておこう。
”ガツッ”
俺の体内でアドレナリンが大量に分泌されていることもあるだろうが、ほとんど痛みはない。
慣れってのは怖いもんだ。
そして、ぼこすか殴ってくる連中が無防備な腹をさらした瞬間に、俺はお返しを叩き込む。
「お前ら一発は一発だからな」
「えっ!」
俺は阿藤の水月、いわゆるみぞおちに下から突き上げるようにボディアッパーを叩き入れた。
「がはっ!!」
ボクシングで言うところのソーラープレキサスブローは、呼吸の要である横隔膜にダメージを与え、一時的に横隔膜の動きが止まり、短時間ではあるものの呼吸困難に陥るうえに、腹腔神経叢と呼ばれる多くの神経が集まっており、この神経叢は痛みに敏感であるため、鳩尾に拳がヒットすると激痛も走るのだ。
残る二人も、同様にボディーアッパーでぶったおしてしまう。
慣れてる奴ならすぐ立ち上がって来るだろうが、油断している素人じゃそう簡単には立ち上がれないはずだ。
ここでスマホの録音をオフにしておく。
「おい」
俺は腹を押さえてゲホゲホ言っている阿藤を、けり転がしてその喉元へ足を置いた。
「お前、死んだぞ?」
俺がこのまま咽を押し潰せばこいつは死ぬ。
阿藤の目が畏怖の色にそまり、心が恐怖に折れるのが見えた。
「なあ、阿藤だっけ?
とりあえず生徒手帳出そうか?」
阿藤はコクコクうなずいてガタガタ震えながら生徒手帳を取り出した。
「俺は名前と顔を覚えるのは苦手なんでな」
そういいながら阿藤の顔と生徒手帳の名前をスマホで撮影。
残りの二人も同様にしてから、さらに俺は言う。
「ああ、殴られて口の中が切れたし痣も残っているだろうし、ブレザーも汚れちまったな。
病院行ったりクリーニングしないといけないし、場合によっては警察に届けて裁判をしないといけないんだが?
俺が言ってる意味は分かるよな?」
阿藤はコクコクうなずいてガタガタ震えながら財布から万札を取り出して俺に渡した。
残りの二人も同様に万札を差し出してきたので合計で3万円だな。
風俗で働いていたときは、女の子に本番を無理やりした奴や盗撮なんかをしたやつから脅迫にならないようにしながら50万円、100万円の慰謝料を出させるとかは普通にやっていたし、暴行罪の示談金額相場としては、10-30万円程度らしいが、まあ高校生相手なら一人1万円ぐらいだろうな。
今の俺はこの辺りの金銭感覚が、どうもくるってる気がしてならないが、別に高いものを買わないと気が済まないという性格ではないのでまあ何とかなるだろう。
「じゃあ、お前らはどっか行っていいぞ」
俺がそういうと男3人は這々の体で逃げ出していった。
「で、まあ
お前さんには代償を体で払ってもらおうか」
「わ、私を犯すの」
「は?
お前みたいな性根の腐った女なんかに手を出すかバカ。
やるなら
じゃなきゃ
むろんこれは単なるこけおどしで、俺にそんな伝は当然ない。
まあ、ここまで言ってしまうと十分脅迫に値するんだけど、そもそもデリヘルは高校生不可で、ソープは未成年不可だからな。実際にできるわけではない。
「ひぃ?」
「まあ、まずは
「は、はい、すぐ消します。
だ、だから助けて」
「だいたいさ、
「は、はい、だ、だから助けて……ほんのちょっとした出来心だったのぉ!
うわーん」
あーあ、とうとう泣き出したか。
「まあ、明日までに全部消しとけよ、誹謗中傷の書き込みは。
泣いたところで書き込みを消さなかったら、俺は許さないからな」
「は、はい、わがりまじだ」
さて、この後どうしたもんかなぁ。
俺もこれ以上面倒なことにはしたくないのが実情だ。
まったく、
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