風俗店員の高校生やり直し、ボッチから抜け出そうとしたらハーレムになっていた(汗)
水源
春は出会いの季節
第1話 プロローグ~入学式前日
「あー、もう。
昨日も実質2時間しか寝てないからまじ辛いわ。
もう眩暈と吐き気がするわ、体の自由は利かないわ……歳は取りたくないよなぁ」
俺は店の女の子を送迎で家に送った帰り道でぼやいていた。
コスプレイメクラ系の風俗店で働いている俺は、ここ最近の不況もあって店の売り上げが芳しくなく、ほかの店員が店に来なくなっても、補充人員が全く来ないせいで、めちゃ無茶な働かされ方をしていた。
「あ、あ……やば、心臓がまじいてえ……」
そして視界が歪み、意識が一瞬落ちた。
そして意識が戻った時には猛スピードで壁が目の前に迫っていた。
「うわ!」
ブレーキを踏みつつ、急ハンドルを切るが時すでに遅く、車は壁に猛スピードで衝突。
「うぐあっ」
急ハンドルを切ってしまったせいで、右側のドアに思いきり体をぶつけた俺は激痛にさいなまれながら、そこでガソリンのにおいが、室内に充満するのを感じた。
おそらく劣化した燃料ホースが破損しそこからガソリンが漏れ出ているのだろう。
「くっ、これだから走行距離が百万キロを超えてる、数万円で知り合いの中古車ディーラーから買った中古車で送迎なんか、やらせるなっていうんだ」
そして火があっという間に燃えあがり、俺の体が炎に包まれた瞬間に意識がまたブラックアウトし、俺の意識と命はそこで途切れたはずなのだが何やら声が聞こえるような気がする。
”逆行転生対象αのカルマ値と継続意思の低下を確認。
その対処として逆行転生対象βを過去に送還します”
一体なんのことだ?
そして炎に包まれた”何か”が俺を抱き上げ、ふわっという浮遊感を感じた所で、俺の意識は完全に途切れた。
・・・
これは今年のバレンタイン。
「はい、チョコレートよ」
お母さんが買ってくれた、板チョコを俺に渡してくれた。
「ありがとうお母さん。
俺にチョコくれるなんて、お母さんくらいだからね」
これは今年のバレンタイン。
「はい、はたぴーちょこだよ」
「秦坊、これ、チョコマフィン」
「みんなありがとう。(今年は5個か…お返しはやっぱゴディバだから、全部で1万5千円くらいだな)」
これは……こんな思い出は記憶にない?
「あなたが見てくれたから。
あなたが気が付いてくれたから。
そしてあなたがいてくれたから。
きっと私は変われたんだと思います。
私にとってあなたは特別な人。
私はあなたが好き。
私はあなたが大好き。
でもあなたにとって私はきっと仲のいい友達の一人でしかないよね。
だから、ここではっきり言います。
私をあなたの特別にしてください。
その気持ちを込めたこのチョコレート……受け取ってくれますか?」
これは夢か、死ぬ前に見る走馬灯ってやつか?
そうしたら意識がふわりと浮上して俺は目が覚めた。
ここは懐かしい、いや、いつもの俺の部屋だ。
枕元ではニゴ動の手書きMADでパフームのチョコレイトデスコが、延々とループして流れている。
どうやらあんな夢を見たのはこれを聞きながら寝落ちしたせいだろうな。
まあ、彼女なんて生きているうちに一度もできなかった俺に、あんなことを言ってくれる女性なんているわけないしな。
しかし、よくわからないのは、今年のバレンタインの記憶としてお母さんからしかチョコをもらえなかった記憶と、イメクラの女の子たちからチョコをもらった記憶が混在していることだ。
「
そろそろ起きなさーい。
明日からは学校に行くんだからね」
俺を呼ぶ女性の声が聞こえる。
それはとっくの昔に死んだはずの俺の母親の声だ。
やっぱり俺は死んだのだろうか?
「ほら、寒いからっていつまでも布団に潜り込んでないで!!
さっさと起きなさい!」
「うえ?」
掛け布団を引っぺがしたのは、やはり死んだはずの俺の母親だった。
「あ、あれ? お母さん?」
「もう、明日もこんな時間まで寝ていたら確実に遅刻するからね。
明日はお母さんも一緒に入学式に行くけど、明後日からはだいじょうぶかしら」
「いや、さすがに大丈夫だと思うけど……学校があればアラームもかけるし」
「それならいいんだけど、とにかく起きて着替えたら顔洗いなさい。
朝ごはんはできてるからね」
「あーい」
俺は一体どうしたのだろう……どうやら高校の入学式の前日に風俗で働いていた時の記憶を残したまま戻っているようだ。
昔流行したエヴァンゼリオンや機動戦艦ナデナデの二次創作には、こういうパターンがよくあって逆行転生って呼ばれていたけど……本当になにがどうなっているのやら。
布団から抜け出した俺は、パジャマ代わりのスエットを脱いでタンスの中を見てみた。
「うわ、超絶ダサい服しかない……さすが俺……というかお母さん」
そういやこのころはファッションには全く興味が無かった。
だから、髪の毛はぼさぼさでフケだらけだったし、着る服も母親が買ってくる服を何の疑問も持たないで着ていたんだっけ。
母さんが買ってきた服って冬服は生地がやたらと厚くてぼさっとしてるし、中途半端に擬人化された犬やらリスやら鳥のイラストが入ってるやつとかなんだよな。
大抵は売れのこってセールで安くなっているものだったりするから、いいデザインのやつがあるわけないんだけど。
まあ家で誰も見られないなら暖かくて実用的なんだけど、小学生じゃないんだからせめてイラスト入りは勘弁してほしい。
「……まあいいかどうせ学校には制服で行くんだし」
とりあえず服を着替えて洗面所に行く。
そして鏡に映った自分を見て思う。
うん、ひでーやこれは。
髪の毛はぼさぼさなうえに、なんか油っぽいし、同じく肌もオイリー肌でニキビができてる。
よく見れば爪も伸びて、垢がたまって黒くなってるし、服もしわくちゃだ。
いくら何でも身だしなみを気にしなさすぎだろ俺。
顔面偏差値は高くもなく低くも無くのまあ、フツメンに入ると思うのがまだ救いか。
まあ、整っていないところにかえって愛敬がある
歯を磨いて、顔も洗って、タオルで顔を拭いて、多少はさっぱりしたところでリビングへ向かう。
朝食はフレンチトーストにスクランブルエッグ、あとはコールスローサラダにコンソメのスープと牛乳みたいだな。
ダイニングテーブルの席について、いただきますを言った後たべる。
「うん、いつもながらお母さんのご飯はおいしい。
お父さんは仕事だよね」
「あらまあ、いきなりどうしたの?
ええ、とっくに家は出て行っているわ」
「んーいまさらながら、お母さんのありがたみを色々感じてたところだよ」
寝てたらたたき起こしてくれて、食事の用意やかたずけやら、洗濯やら掃除なんかを全部やってくれる母親の存在って本当ありがたいよな
「あなた、本当にいきなりどうしたの?
熱とかないよね?」
「いやいやまじめに言ってるよ。
ただ服がダサいのは何とかしてほしいけど……あ、それはともかく髪の毛を切ってさっぱりしたいからお金頂戴」
「はいはい、あなたはめんどうくさがって床屋なんかめったに行かなかったのにどういう風の吹き回し?」
「まあ、なんというか……。
今日から俺は生まれ変わった、みたいな?」
「それがちゃんと続くといいんだけど、飽きっぽいから。
今回はどれだけ続くやらね」
ふふっと笑っている母さんだが嬉しそうにしている。
全部食べたら流しに食器やカトラリーを持って行って自分で洗う。
「あら?
いつもはテーブルにそのままにしてるのにどうしたの」
「ああ、多少はお母さんの手伝いをしておこうかなって。
そうすればお小遣い増えたりするかな?」
「ああ、そういうことね。
でも、家事を手伝ってくれるなら、内容に応じてお小遣いは少し増やしてもいいわよ」
「よっしゃ。
んじゃ床屋に行ってきます」
「はいはい、気を付けてね」
俺は自転車に乗って近くのコンビニへ行き、ファッション雑誌を買ってから床屋へ行く。
「これと同じ髪型でお願いします」
切ってもらいたい髪型のナチュラルマッシュっていっても、床屋だと通じない可能性もあるしな。
かといって理容院・美容院で髪の毛を切ると2倍以上高くつくだろうし、それならこういう髪型でと雑誌を見せてみるのが一番無難だろう。
風俗の店員をしてた時に、待機場所に置いてあるファッション雑誌を読むのにも慣れてしまったが、このころの俺はそもそもファッション雑誌の存在そのものをしらなかったよなぁ。
「あ、はい、これですね」
「ええ、お願いします」
チョキチョキとはさみでカットされていく髪の毛が床に落ちていくたびに、頭が軽くなっていく気がする。
「どうですか?」
鏡の中に後頭部にかざされた鏡がうつるが、うん、いい感じだと思う。
「はい、いい感じですね」
「じゃあ頭を洗いますね」
「はい」
そして頭を洗ったり、まだほとんど生えていないひげなどの顔そりをしてもらって、きれいさっぱりとした俺はだいぶ爽やか&清潔な感じに変わっていた。
髪の毛って大事だよな。
こういう時ヘタに個性を狙うとかえってダサくなる危険性が大きいので無難さも重要だ。
床屋から帰ってきたら、明日の入学式の準備をすることにした。
ブレザーとスラックスに、ピシッと糊のきいたYシャツはちょっとブカッとしてるが成長期だからと大きめのものを買ったのだろう。
ブレザーを着て鏡で自分の姿をみれば、それなりの格好に見えるから、制服って不思議だよな。
”前”の俺は他人との接し方が全く分からず、いつもおどおどしているボッチのオタクで、高校の3年間を終わらせてしまったが、せめてそれからは抜け出したいものだ。
それからシーツと枕カバーに毛布を洗濯して乾燥機にかけて乾かし、ニキビ予防のために枕の上に洗ったタオルを敷いて俺は寝ることにした。
枕は雑菌が多くてそれがニキビの原因になってるはずなんでな。
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