511 クリスマス特別
メリークリスマス!
時系列の本編を離れて。今回はクリスマススペシャルです。
いつもご覧いただきありがとうございます!
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夏の終わり。コウメの爺ちゃんのジンさん(ジン・マッカーシー)が見せてくれた古文書を前に2人で話し合ったんだ。
「どう思うかのアレク君?」
「俺が見たのと変わらないです。やっぱ大昔の人たちはクリスマスのお祭り、行事をやってたんですね」
そこにはクリスマスに関する驚くべき内容が書かれていたんだ。マジかよ?って思わず驚くくらいに。
「アレク君こっちの本はな、3,000年前の中原の人々の生活を研究した、1,000年ほど前の古文書なんじゃよ」
3,000年に1,000年?そりゃまた恐ろしく古いな。
「1,000年前の学者たちが3,000年前に書かれた日記の文言をそのまま写しとったんじゃな。
肝心のその日記帳は紛失して今はないんじゃよ。だから資料が少な過ぎて意味はまったくわからんのじゃよ」
「へ、へぇー‥‥そ、そうなんですねー」
そんなことを言いながら俺は、引き攣った顔がジンさんにバレないようにその古文書の表紙を見てたんだ。
もうね、内容を見る前からわかるんだよ。遠目に見ても、題名だけでヘンテコな内容が丸わかりなんだよね。キタナイ☆も描いてるし。
てか同じ日本人として恥ずかしいよ!だから本物の日記帳が紛失しててよかったよ‥‥
そんなわけで古文書を詳しく見る前にだいたいのことは想像できたんだ。
だって書き写された表紙のそれは俺並に下手くそな日本語で書かれた日記だったから。
題は『俺様の優者☆HiiROU日記』って書いてあった。
勇者もHEROもちゃんと書けなかったんだよコイツ‥‥。
「ちょっと見ていいですかジンさん?」
「もちろん良いぞ。勉強家のアレク君でも意味はわからんだろうがの」
「あはははは」
どれどれ‥‥
『ヒャッハー!メリクリメリクリ、Merii Xmasだぜぇい。
せっかくこんな夢の世界に点いしたんだからな。24日のXmasイブだけじゃあもったいないべ。やっぱ23日のイブイブもはやらせなきゃな。2回プレゼント贈るチャンスがあればちょっとはナウな俺っちもモテるかもしんねぇべ』
(コイツ、絶対俺の遥か前にやってきた、異世界転生じゃなくって異世界転移の日本人だ。しかも昭和の北関東人だな‥‥)
「どうだいアレク君?」
「あはははは。まったくわかりませんねー。でも何度も書かれてるこのクリスマス‥‥‥‥そうだ!ジンさんこのクリスマスの祭事を今の俺たちも流行らせましょうよ」
「なぜじゃい?」
「だって楽しそうじゃないですか。俺が読んだのには夜に教会に行ってから家族みんなで食事を楽しんで、朝目が覚めたら枕元に女神様の使徒からのプレゼントがあったなんて、夢みたいな話じゃないですか」
「そりゃたしかにそうじゃの」
「帝国は大国と並んで中原1の先進国なんだから、帝国で流行ればあっという間に中原中に広まりますよ」
「そうじゃの。たしかにそれは面白そうじゃの。民が信心深くあれば健やかな人心の成長、平和な国づくりにも繋がるじゃろうからの。よし、やろうかアレク君!」
「はいジンさん!」
そこからは俺が王国で見知った知識とジンさんの知識をすりあわせて、神話のストーリーをでっち上げ‥じゃなくて作りあげたんだ。
なぜかね、普及に賢人会の爺さんや婆さんたちも協力してくれたよ。
新しいクリスマスの催事(祭事)。イベントはみんながhappyになれる楽しいお話だし、子どもたちにとっても大人にとってもうれしくて待ち遠しくなるイベントだからね。
「ではわしのほうで法国のハリー法皇に連絡を入れて、12月24日の夜には中原中の教会で女神様ご聖誕を祝うミサを開いてもらうよう働きかけるかの。娘さんの学友のアレク君もやる気だと付け加えての」
「あははは。じゃあ俺は誰にもわかりやすい絵本を作って中原中の教会にバラ撒きますね」
「頼んじゃよアレク君。わしとアレク君の共同作業、テンプルが悔しがる様子が目に浮かぶようじゃわ。わははははは」
▼
「デーツ。大、大、大至急絵本を作ってくれないか?」
「ん?なんだよアレク?」
「あのなデーツ、3,000年前に世界中でやってた女神様の誕生イベントを古文書で見つけたんだよ。
だからそれを復活させるんだよ」
「誕生いべんと?」
「ああ。こないだのクロエみたいに、女神様専用の誕生会だよ。
デーツは俺が言う話に合った挿絵を描いてくれよ。文と絵で1冊の絵本を作るから。やってくれたら代わりにお前の朝ごはんと夜ごはんのお代わりも許してやるし、いつもより豪勢なメシにするからさ」
「それはうれしいけど‥‥」
「そうか!ありがとうなデーツ。とにかく大、大、大至急な。
一大イベントが流行るか流行らないかは、絵本がキモになるんだからな」
「アレク‥‥ひょっとしてそれはお前が作った嘘の話なのか?」
「ち、ち、ち、ちげぇーよ!俺とコウメの爺ちゃんとが古文書から見つけた3,000年前の実話なんだぞ!」
「ほ、本当か?本当にジン老師が?」
「あ、ああ。マジだぞ!だからお前は3,000年前のイベントを現代に蘇させる女神様の使徒になれるんだぞ!」
「そうなのか!そりゃすごいな!俺頑張って描くよアレク!」
「おおよ。さすがは俺の弟だデーツ!」
「弟じゃないぞ!」
「俺に勝てるまではお前が次男なんだよ」
「くっ‥‥」
こうしてできた絵本の文章は字の綺麗なマリアンヌ先輩の筆とデーツの挿絵。
活版印刷による中原初の墨1色の絵本はカラーじゃないからちょっぴり寂しいけどね。
ミカサ商会の販路で中原中の教会に配ってもらったんだ。お金?あははは。ハチの父ちゃん曰く、俺の資産を使えばそれくらい余裕でできるんだって。(今いくらあるんだろう?)
この世界の人は基本的にみんな信心深くて素直。だから、それぞれの心の中でさらに膨らんで、カラーに色付けされたストーリーになってると思うよ。
Merry Christmas!
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クリスマスの贈りもの
ジン・マッカーシー
アレク共同調査
作画 デーツ
文章 マリアンヌ
出版 アレク工房出版
むかしむかし、あるところにお金持ちの家族と貧乏な家族がいました。
お金持ちの家族は、あり余るくらいの大金で建てた大きな家に住み毎日が贅沢ざんまいです。
貧乏な家族は、貧しくても心穏やかに過ごしていました。
12月24日の夕方のことです。
その日はしんしんと降り積もる大雪でした。
コンコン コンコン
扉を叩く音が聞こえます。
「こんな夜に誰だ?」
お金持ちの家の外から女性の声が聞こえます。
「大雪で道に迷ってしまいました。どうか少し休ませてくれませんか?」
扉を開けずに外を見れば小汚い女性が1人立っています。
「「「ダメよアンタ!(だめだよ父ちゃん!)」」」
「ああ、もちろんだ。だれが家になんぞ入れるものか!」
「誰が小汚いお前なんぞ入れるものか!早くどこかへ行け!」
「邪魔だよ!」
「あっち行け!」
壊れた道具や石を女性に投げつける主人とその家族。石は女性の頭や身体に当たります。が、それを見て喜ぶお金持ちの家の子どもたち。
女性は仕方なくお金持ちの家を去りました。
コンコン コンコン
扉を叩く音が聞こえます。
「こんな夜にどなたですか?」
先ほどの女性が貧乏な家族が住む家の前に立ちます。
「大雪で道に迷ってしまいました。どうか少し休ませてくれませんか?」
「それはお困りでしょう。何もない家でよろしければどうぞお入りください」
「お湯しかありませんがどうぞ温かいものでもお飲みください」
貧乏な家の妻が言います。
「すぐに部屋を暖めますので」
わずかばかりの薪木を焚べる貧乏な家の主人。
「私たち家族と同じものですがパンをお食べください」
2人兄弟の下の弟が女性にパンを手渡します。
「お姉ちゃん食べて」
それは1本のパンを半分に分けたものでした。半分を女性に分け、残りの半分を貧乏な家族4人で食べ始めますが、貧乏な家の主人も妻も2人の子どもも、不平不満は一切口にしませんでした。
「雪は上がりそうもありません。こんな荒屋ですがよろしければお泊まりになってください」
「子どもたちも喜びます。どうぞお泊まりください」
「「泊まっていきなよお姉ちゃん」」
そう貧乏な家の家族が言ったときです。
カラーン カラーン カラーン‥
どこからともなく澄んだ鐘の音が聞こえてきました。
小汚い女性はあっという間にまばゆいばかりに美しい女性、女神様に変わっていました。
「「「め、め、女神様!?」」」
貧乏な家はいつのまにか暖かい暖炉のきれいな家に変わっていました。
「メリークリスマス!今日は12月24日。私が生まれる前日です。優しくしてくれたあなたたち家族に感謝を」
テーブルの上には見たこともないようなご馳走が並んでいます。
「さあ一緒に食べましょう」
「「「ありがとうございます女神様」」」
家族4人、これまで食べたことのない美味しいものばかりが並ぶ食卓です。女神様の笑顔、家族の笑顔。まるで夢のよう。
貧乏な家の兄弟の弟が女神様にたずねます。
「女神様。メリークリスマスはどういう意味なの?」
「メリークリスマス。それはね、私の誕生を祝う古い言葉なのよ」
「じゃあお兄ちゃんと僕の2人からもお祝いするね」
「「メリークリスマス!」」
「はい、ありがとうね」
楽しくておいしい食事会が終わるころ。
コンコン コンコン
「お邪魔しますよ。ホッホッホ」
真っ白なお髭を伸ばしたお爺さんが家に入ってきました。
「お爺ちゃんは誰?」
「わしは女神様の従者サンタクロースじゃよ。ホッホッホ」
「女神様、そろそろお戻りくださいますかな」
女神様を迎えにきた従者のサンタクロースが膝をつきます。
「サンタクロースのお爺さんはどこから来てどこへ行くの?」
「わしは女神様の国から誕生日の女神様を迎えにきたんだよ」
「じゃあサンタのお爺さんも一緒に女神様をお祝いしなきゃね」
「はいはい。優しい子どもたちよ」
「「「メリークリスマス!」」」
「「「メリークリスマス!」」」
「「「メリークリスマス!」」」
お互いが笑顔でお祝いの言葉を交わします。
「わしはいつもお前たちを見守っておるからの。ホッホッホ」
「では私は神の国に帰ります。これからも優しい家族に幸あらんことを。
最後にサンタさんにほしいものを願いなさい」
「「はい!」」
女神様はサンタクロースに導かれて天へと昇っていきました。
兄弟の2人が何を願ったのかって?
さてさて。それは何でしょうね。
翌朝。
貧乏な家の子どもたち2人の枕元にはサンタクロースからのプレゼントがありました。
それは兄弟が願ったプレゼントでした。
「「サンタさんありがとう!」」
天に向かって声をかける2人です。
お金持ちの家族はその後どうなったかですって?
翌日からどんどんどんどんお金がなくなりました。やがて春が来るころには豪華な家まで手離してしまいました。
家族は散り散りにどこかへと去っていき、その行方はだれも知りません。
貧乏だった家族はいつまでも幸せに暮らしました。
翌年の12月24日から。毎年女神様の誕生日を祝う夜になりました。
メリークリスマス!
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「スザンヌ、ヨハン。お兄ちゃんからプレゼントが届いたぞ」
「ジャン、チャミー、ガンツ。アレク君からプレゼントが届いたぞ」
「アンナ、デイジー。アレク君からプレゼントよ」
「シャーリー。アレク君からプレゼントよ」
「ミリア。アレク君からプレゼントだよ」
「レベッカお兄ちゃん。アレク君から私たち兄妹にプレゼントが届いたわよ」
「セーラ、キャロル、アリシア、シナモン。女子は1つずつ、俺たち男子はまとめて。アレクからプレゼントだ」
「シルカ店長アレク君からプレゼントですよ」
「レベちゃん、狐仮面からみんなにプレゼントが届いたぞ」
「ステファニー、ステファン。アレク君からプレゼントだよ」
「あなたメロンにアレク君からプレゼントよ」
「サンデー様、アレク様から‥‥」
「「「アレク(君)からか!」」」
ヴァルカンさん、ミューレさん、ヴァンさんには俺がこの秋に作った帝国産のお酒(ウイスキー)を届けたよ。メリークリスマスのカードを付けてね。
ミョクマル学園長を始め、これまでお世話になった大人の人たちにも同じようにお酒を贈ったんだ。メリークリスマスってカードを付けて。
「工房長からクリスマスプレゼントだよ」
アレク工房で働いてくれている人たちにもプレゼントを贈ったんだ。正確な人数も知らないからミカサ商会さんにお願いして大まかな数のクリスマスカードを添えてね。
プレゼントは帝国産の小麦粉とメイプルシロップで焼き上げたクリスマス用ボックスに入った焼き菓子の詰め合わせ。
箱にはデーツが描いてくれたたくさんのプレゼント袋を背負ったサンタクロースの姿のイラスト付。
「ディル神父様、アレク君からプレゼントが届きました」
「わはははは。シスターナターシャ、帝国から彼奴が仕掛けた新しいクリスマスという名の祭事。そのプレゼントも自ら用意してわしらにくれるというのか!」
「ええ。アレク君はいくつになっても、どこにいっても、私たちの自慢の弟子ですから」
「私にはクリスマスに合わせて作った焼菓子ですって」
「わしには酒だな」
「えーっと神父様よくお聞きくださいね。『麦で作った強い酒ができました。師匠は歳を考えて飲み過ぎないように』ですって。フフフ」
「なんと彼奴は!タイラーよりも早く生意気を言いおって。これは来年帰ってきたらシゴいてやらねばの」
フフフフフ
わはははは
「アレクもようやく背が伸びてきたらしいですなシスター」
「ええ。毎月1セルテずつ伸びてるらしいですよ」
「来年がますます楽しみじゃわ」
「ええ」
【 ヴィンサンダー領領都学園教会 】
「今日、この良き日に。3,000年ぶりに蘇った女神様の聖誕祭を生徒の皆と祝うことができますことに感謝を。
クリスマスの物語を綴った1冊の絵本もすでに学生の皆さんの手元に届いていると思います。
ロイズ帝国にてこの歴史的な事実を発見し、また絵本を作成してわが校に寄贈してくれたのはみなさんの先輩アレク君です。
それでは始めましょう。女神様のご聖誕を祝う祭事を。
メリークリスマス」
「「「メリークリスマス!」」」
▼
「モンデール校長おつかれさまでした」
「はいケイト先生もおつかれさまでした」
「そうそうケイト先生、アレク君から私たちにもプレゼントが届いてますよ」
「あらうれしい!なんですか?」
「ケイト先生にはクリスマスにあわせて作ったクリスマス用の焼菓子だそうですよ」
「きっとアレク君が作ったんでしょうね」
「ええ」
「モンデール先生には?」
「私には帝国の麦で作ったお酒(ウイスキー)だそうです。酒精が強いそうですから飲み過ぎるなとアレク君の一筆もありますよ。ワハハハ」
「モンデール先生、まさかこのお酒も?」
「ええ。帝国では早国民的なお酒となっているそうですな」
「フフフ」
「明日から冬休み。さっ、ケイト先生も少し女神様のお恵みをいただきましょう」
「まあうれしい。少しならいいかしら」
「ええ、ええ。アレク君曰くお酒もまた女神様が呉れ賜うた女神様の水・オミキと呼ばれていたそうですからな」
「フフフ。まあ、優しい嘘ですこと」
「ハッハッハ。いやいや、どうでしょうな。帝国1の知恵者ジン・マッカーシー殿との共同研究をやるくらいですからな。案外本当かもしれませんぞ」
「フフフ。まあそういうことにしましょうか」
「それではケイト先生、あらためて‥」
「モンデール神父様ご自慢のサンタクロースのお弟子さんにも‥」
「「メリークリスマス!」」
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