404 勘違い探索
「これ以上ライラ先輩やセーラに失礼なことを言ったり、なにかしたら、学園に戻って報告書に書きます!」
「平民の言うことなんか誰が信じるもんか!」
「「「そうだそうだ」」」
「そうかもしれませんね。でも嘘をつかないシスター見習いも含めて、学年も種族も違う4人が連名で報告書をあげたらどうでしょうかねクックック」
「俺も書くぞ」
「私も書くわ」
「私も書きます」
「ほら、4人揃いましたよ。先輩たちが好きな多数決にあと少しですねクックック」
ちょっぴり悪ぶって言ってみたんだ。
最後の「クックック」なんて言ってみたかった異世界悪者あるあるの1つだよ!
1個夢が叶ったよ!
「アレク、本当にあんたマニアックね。ばっかみたい!」
それどういう意味?!褒めてんの?
それと、ばっかみたい!は明日かーって狙ったでしょ?
「ちげぇーよ!ばーか。調子に乗んじやねぇ!」
「すいません。調子にのりました‥‥」
どうやら6年の先輩たちも渋々納得してくれたみたいだった。
「「「ちっ!しゃーねーな」」」
「実際に女いたぶるのは我慢しといてやるよ」
「感謝しろよ平民ども」
「「「‥‥」」」
なんとかセクハラの実行動は制限できそうだ。もちろん言葉のセクハラもダメなんだけどね。
「あんたもねアレク」
「えっ?!」
俺ぜったいセクハラしてないよ!
「ええ、たしかにしてないわ。頭の中は別だけどね!」
「!さーせん。シルフィ先生‥‥」
でもね、ライラ先輩の外観は破壊力抜群だもんな。むふふっ。
翌朝早朝。
ようやく歩きだしたんだ。ダンジョン初日に1階層入口で野営なんだからね!
1階層は去年の記憶と同じだった。なだらかな草原の中をまっすぐに続く石畳の旧道。
ギャッギャッギャッギャッギャッ‥
ゴブリンだ。
えーっと‥‥
ゴブリンですね、はい。
200メルも手前から、さぁ今からそっちにいきますよーって感じでゴブリン1体が攻めてきたんだ。
ギャッギャッギャッ‥
「(セーラさん去年はどうだったの?)」
ギャッギャッギャッ‥
「(えーっと5、6体は普通に現れました)」
ギャッ ハァハァ ギャッ ハァハァ ギャッ‥
「(やっぱりねー)」
なんか2人とも普通に会話してるんだよな。一応ゴブリン襲ってきてるんですけどね。
200メル走を全力疾走する小学1年生をイメージしてみて。途中で止まったり休憩をしたらダメなやつね。
ギャッ ギャッ ギャッ‥
ギャッ ギャッ ハァ‥
ギャッ ハァハァ ギャッ ハァハァ ギャッ‥
それでも5人組は最大級の警戒態勢となったんだ。
「気をつけろ!ゴブリンソルジャーだ!」
「「「おおっ!」」」
どこにソルジャーがいるんだよ!いねぇよ!
「(アレク‥‥)」
「(何も言うなセーラ)」
うん。これは喜劇だ。
セルバンテス作の妄想家の騎士ドンキホーテだな。
ギャッ ハァハァ ‥
ギャッ ハァハァ‥
ハァハァハァハァ‥
「来たなゴブリンソルジャー!」
「わが稲妻のレイピアを受けてみろ!」
「俺もだ」
「助太刀するぞ!」
「「「おお!」」」
ハァハァハァハァ‥
ザスッッッ!
ザスッッッ!
ザスッッッ!
ザスッッッ!
ザスッッッ!
ハァハァハァハァ‥
ドスンッ!
「(見たか隊員諸君?)」
「「「(あは、あははははは‥‥)」」」
ゴブリン定番の最期はギャーッ!とかグギャーッ!とかじゃない?
でも‥‥断末魔の叫びもなんにもなかったんだよ。
マラソンのゴールで倒れた人みたいなゴブリンだった……。
「(ゴブリンさんかわいそう‥)」
セーラやめいっ!
その後も‥‥。
ハァハァハァハァ‥
ザスッッッ!
ザスッッッ!
ザスッッッ!
ザスッッッ!
ザスッッッ!
ハァハァハァハァ‥
ドスンッ!
「どんどんいくぞ!」
「「「おおっ!」」」
彼方からやってきてはふらふらしているゴブリンを倒しながら進むボル隊の先輩たち。なんか士気が凄まじく高過ぎないか?
「(ライラ先輩けっこう良いかも)」
「(ホントね!)」
そう、ヘタレな5人組先輩たちは、適度に現れるゴブリンのおかげでちゃんと前を進んでいたんだ。
ゴロゴロゴロゴロ‥
「フッ、滑稽だな‥‥」
ブーリ隊でリアカーを曳くヒューイ先輩が独言を呟いた。
「ヒューイ先輩、リアカー代わります」
「いいのか?」
「はい。先輩は左右と後ろを索敵しながら進んでください」
「了解した!」
ヒューイ先輩が初めて俺たちに向けて笑顔になった瞬間だった。
▼
「お前らにはずっと不快な思いをさせた。すまなかった」
「(おっ、ど直球の改心!)」
ユーリ先輩が言った。
「(あら、ついに1人が学園生になったわ‥‥)」
ライラ先輩が言った。
「(それもこれも女神様のおかげです)」
セーラが言った。
「おめーはないのかよ!」
「(さーせん。なんも浮かびませんでした)」
最近シルフィさんが俺に冷たい……。
この日の野営。
改心したヒューイ先輩が言ったんだ。
「すまない。あいつらに説得をするがたぶん難しいと思う‥‥」
「「「気にしなくていいですよ」」」
俺たち4人もボル隊先輩5人が改心することはないんだろうなって思ってたんだよね。
結局、自分たちが強いと錯覚したボル隊はそのまま2階層も歩いてくれた。うん、歩いてくれたんだ。大進歩だよ!
「(セーラさん去年って?)」
「(はいライラ先輩。5階層主のゴリラを倒した休憩室が最初の野営でした)」
「(あははは。だよね‥‥)」
3日めの朝。
3階層は、やはり例年どおりの山岳地帯だった。
―――――――――――――――
いつもご覧いただき、ありがとうございます!
「☆」や「いいね」のご評価、フォローをいただけるとモチベーションにつながります。
どうかおひとつ、ポチッとお願いします!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます