402 乖離
402 乖離
「ああー疲れたわー」
「わははは。お前ら魔獣狩りすぎだっつーの。あっ、俺もか」
わはははは
わはははは
わはははは
「肩凝るーー」
「俺ら働き過ぎだよな。腹減ったよな」
「だよなーー」
「おい下級生なんか飯作れよ。お前ら俺らのおかげで魔獣と闘わずに済んだんだからよ」
「(アレク君あの人たちマジで言ってるのかしら)」
「(どーなんすかねライラ先輩‥)」
「(ユーリ先輩なんとかしてください)」
「(あそこまで振りきりゃあいつらある意味すげぇよな‥)」
そして俺たち4人はお互いの顔を見合わせて同時に言ったんだ。
「「「(どうする?)」」」
回廊に出てくる弱小魔獣にビビりまくってたのも何処へやら。もちろん俺にビビってたのも。
みーんな綺麗さっぱり忘れちゃったみたいな先輩たち。
でもヒューイ先輩だけは少し違う気もするけど。
「先輩ちょっ‥それは違」
「いいよセーラ。言わなくて」
「だってアレク‥」
「先輩たち。飯は俺が作ります。だけど、ここまだダンジョンに入ったばかりですよ?1階層の入口なんですよ?
せめて暗くなる1階層の終わるまでは探索しないと」
「そんなこと知るかよ。それより腹減ったんだよ。疲れたんだよ俺らは。
なんとかしろよ!お前平民なんだからよ!」
「「そうだぞ平民!」」
ダメだこりゃ。
「わかりました。飯は俺が作りますね。
でもまだ昼前ですよ?まだまだ明るいんですよ?本当にここで野営するんですか?」
「するっつってんだろ!平民が口ごたえするんじゃねぇ!
俺たちは疲れたんだよ。だからここで野営して朝早く出たらいいじゃねぇか。なあ皆んな」
「「「賛成ー」」」
ユーリ先輩が呆れながらも正論を説いたんだ。
「お前ら1階層入口で野営なんて聞いたことないぞ!」
「なんだよユーリ。てめー、平民の寮生がうるせえんだよ!」
「「「そうだぞ平民」」」
「‥‥なあお前ら。もう少し真面目にやらないか?
ここはお前らが不真面目にやれるところじゃないぞ。下手すりゃ死ぬぞ?」
「な、なんだこいつ!?」
「なにまじめに言いやがる!」
「なんか上から目線じゃねぇか!」
「「「ウゼー!」」」
「1790人、10傑になれなかった‥‥とくにこの学園ダンジョンを目標にやってきた300人の6年生の気持ちを汲むべきじゃないのか?」
ユーリ隊長の真摯な問いかけなんだよ?それなのにこいつらは‥‥
「んなこと知るかっつーの」
「「「そうだそうだ」」」
「10傑に入れなかった時点で他の奴らは負け犬で俺らは勝ち組なんだよ」
「負け犬のことなんか気にするかよ!」
「「「そうだそうだ」」」
「お前ら‥‥本当に自分たちが強いって思ってるのか?
このままじゃすぐに撤退して恥ずかしいめにあうんだぞ。
まして王国に住む以上、ヴィヨルド学園の卒業生はどこにでもいるんだぞ?」
「それがどうしたよ?」
「こんな不真面目なことやってるって卒業生が知ったらどう思う!?」
「何が卒業生だよ!俺らは強いんだよ!だから10傑になれたんだよ!」
「「「そうだそうだ」」」
「あんな弱すぎる奴らの卒業生なんだろ?大したことねぇって」
「おおよ。俺らだいたいあんだけたくさんの魔獣を倒したんだぞ。どこがふざけてるんだよ!」
これにはたまらずライラ先輩も口を挟んだんだ。
「先輩、徹底的に勘違いしてるわ。一角うさぎもグレーウルフも魔獣のうちにはいらないわ!
それになによりヴィヨルドの生徒は決して弱くないわ!」
「あのなあ‥‥なに人様に意見してるんだよケモノ女!」
「えっ?!」
「「「そーだそーだ」」」
「お前、自分の立場わかってんのか?
お前獣人なんだぞ!」
「俺ら人族の貴族様だぞ!なに獣人風情が口ごたえしてんだよ!」
「そうだ!いいこと考えた。
ケモノ女は野営で俺たちのマッサージをしろ!クックック。しかもいろーんなところのな」
「くっ‥」
わはははは
わはははは
わはははは
「先輩その考えは間違ってます!人族も獣人族もみんな同じ人間です!
だいたい女の子に対してその言い方は失礼です!」
「なんだよシスターの形した女が?!てめー人族だろうが!裏切り者め!」
「ああそうだ!お前もマッサージ要員な」
わはははは
わはははは
わはははは
もうね、沸点はとっくに頂点まで上がりまくってたよ。
シルフィなんか隣りでシャドーボクシングしてたし。
それでも‥‥心の中にシスターナターシャの言葉があったんだ。考え方が違うからといってこのまま力で抑えたら‥‥それは独裁者がやることなんだって……。
「仲間割れはやめましょうよ」
「はぁ?仲間?お前らが仲間?冗談」
わはははは
受けるーー
わはははは
「じゃあ俺らは先輩たちのなんなんですか?」
「そんなもん決まってるだろ平民。下僕だよ、げ・ぼ・く!」
わはははは
わはははは
わはははは
「ヒューイ。お前もこっちに来いよ。コイツらまとめてうぜえだろ」
「い、いや‥‥俺はこのままでいいよ‥」
「なんだよヒューイ。下僕の中で王様になりたいのかよ。ウケるわー」
「ま、まあそんなとこだ‥」
わはははは
わはははは
わはははは
▼
1階層の入口で。
前代未聞の野営が始まったんだ。
もちろん野営宿舎なんて発現してないよ。てか野営宿舎なんか絶対発現してやるもんか!
「やっぱオーク肉はうまいよなー」
「下僕は食うなよ。まぁもし残ったら食わしてやってもいいがな。ああ、そんときは『食わせてください旦那さま』って言えよ」
わはははは
わはははは
わはははは
「ああシスターもどきの女に食わせてもらうかな。あーんとか言ってな」
わはははは
わはははは
わはははは
「くっ‥」
「ケモノ女には私も食べてって言わせるか」
わはははは
わはははは
わはははは
「くっ‥」
セーラもライラ先輩も唇をかみして‥‥目が真っ赤になっている……。
ギューーッッ!
「(ダメだ。アレク隊員落ち着け。我慢しろ!)」
「はぁはぁはぁ。
ユーリ隊長‥‥さすがに俺、もう‥‥」
もうダメだ。
これ以上こいつらがなんか喋ったら俺は我慢できない。
それでダンジョンがダメになっても知るもんか。
先輩に暴力を振るったって処分されるのかもしれない。
それでも‥‥もう我慢できない。
ギューーッッ
‥‥もう我慢の限界だ。
俺は両手首をぐるぐると動かし始めた。
そのときだった。
脳内で声がしたんだ。
「しにしにー564、あ〜あ〜はろはろアレク君‥‥」
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