394 紙を作ろう
「寮長ただいまー」
「あらアレク君お帰りなさい」
「これお土産。うちの芋」
「まぁありがとう!この芋ホント美味しいのよね。これ食べてるとね、今でもおいしそうに食べてくれたおばあちゃんを思い出すわ」
「そうだねー」
「ええ」
楽しかった春休みも終わり。寮に戻ってきた。
村からヴィヨルドへの帰り道。紙を作らなきゃなって考えながら帰ったんだ。
あっ!「戻った」じゃなくって「帰った」になってるよ!やっぱ俺の中でヴィヨルドは第2の故郷だよな。
「おおアレクお帰り」
「なんだハイルお前ひょっとしてまた帰ってないのか?」
「ああ。だって仕方ないだろ。補習受けなきゃ進級させてもらえないんだからよ」
「ふーんどれどれ‥‥」
「はあ!?」
相変わらずハイルがやってる勉強は初級学校1年生レベルの問題だった。
「500G持って1個80Gのリンゴーを3個と1個100Gのブードを2個買いました。お釣りはいくらですか」
「80Gが2個でえーっと160Gで3個は230G?240G?これにブードが‥」
「がんばれよ‥」
「おぉよ。任せとけ!」
そう言いながらうんうん唸るハイルだった……。
「お前‥‥夏休みも冬休みも春休みもいっつも勉強してんだな……」
「おおよ。これからは俺を神童と呼べ!」
「ああ‥‥お前は震えるくらいのわらべ、まさに震童だよ!」
「なんかわかんねぇけどもっと褒めろアレク」
「褒めてねぇんだけどな‥‥」
学年末試験の結果、学年10傑の仲間誰もが1年1組から2年1組へと進級した。俺とセーラはなんと試験免除だった。ダンジョンの好成績だというが、むろんこれは先輩たちのおかげである。
「試験が無くてホントに残念です!」
「あ、ああ。そ、そ、そうだよね‥」
「じぃーーーー」
「なんだよセーラ!」
「アレクの嘘つき!」
「さーせん‥‥」
他のみんなは座学試験も実技試験も問題なくクリアしたらしい。順位に若干の前後はあるがクラスの仲間に変動なしだ。
▼
「学園長、紙を作りたいんですがいいでしょうか」
「ああアレク君紙はいいね。これは文明の進化に良い方向づけになるよ」
「はい!」
サミュエル学園長とは今学期以降もたくさん話をするだろうな。なにせたった2人きりの同郷人だもん。なんかねめっちゃ仲良しの親戚のおじちゃんって感じなんだ。
記録。
石板や木の板に書く。これが一般的なんだけど石や木は嵩張るんだよね。
羊皮紙。皮は羊とは限らないけどね。これも嵩張る。この世界での記録媒体の主流はこの羊皮紙なんだ。だけど羊皮紙はコストがかかり過ぎるんだよね。書き間違えてクチャクチャポイなんてできないし。
俺の字が読めないって言う人がいるから俺も字の練習も紙でしたいんだよね。
あと紙から派生してハガキや封筒による郵便制度も作りたいんだ。
「郵便事業はいいね」
「ですよね学園長」
中原中に配置した郵便屋さん。やっぱ男の蜂より女の子だよなぁ。字の書けない人には綺麗なお姉さんの書記人形さん付きとかね。
「あっ!アレクこの子の服可愛いわよ!」
「ソウデスネ‥」
シルフィに頭の中を覗かれるのは‥‥もう諦めた……。
紙は高級品には和紙を、普及品には洋紙を作ろうと思ってるよ。
あとね、頑丈な紙としてダンボール。ダンボールがあればいろんなものを入れられると思うんだよね。
紙作り
小学生夏休みの課題は葉書作り。爺ちゃんから三叉、楮から和紙を漉く本格的な和紙作りの手ほどきを受けてたからたぶんなんとかなると思うよ。
洋紙は木を粉々にしてパルプにすることから製造できるんだ。木の種類を選ばないからバナナの茎や稲の藁でもできるんだよね。だから材料の攪拌から製造まで土魔法や金魔法の生活魔法の応用から容易にできるんだ。ただ紙は大量生産大量消費をすることを前提とした商品になる。
だからどんどん木を切り倒していったら環境破壊を生むことになる。環境にも影響の少ない木を選定して管理植樹しながら製造できる植物の品種を探さなきゃな。
これに対して和紙は洋紙とはまるで異なるんだ。その手触りや紙質からすでに芸術的なんだよね。何せ手間がかかる。だから高級品としてのニーズを生むように作らなきゃって考えてるよ。比較的お年寄りや女性でもできなくもないから作る人も集まるだろうし。
秋にあるロジャーのおっさんの結婚式まで8ヶ月ちょっと。中原中から人が集まるっていうから、そのときに紙を使った招待状や引出物の包装紙などなど紙を使ったものを一気にお披露目したいんだよね。
―――――――――――――――
今日はここまで。
何事もなく淡々と過ぎました。このままいくのか?んなわけないか。
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