253 金のゴーレム
ズーーン ズーーン ズーーンッ‥
ズーーン ズーーン ズーーンッ‥
ズーーン ズーーン ズーーンッ‥
「多いな」
さらにやってくるゴーレム群。
規則的な歩みは大地を揺らす振動となる。そんなゴーレム群は前方からも、左右からも3体ずつ。包囲を狙って、集団のゴーレムがやってきた。
おそらく後方からも3体のゴーレムが向かって来ているのだろう。
ズーーン ズーーン ズーーンッ‥
ズーーン ズーーン ズーーンッ‥
規則的な集団の足音が咆哮の代わりであるかのように。
ズーーン ズーーン ズーーンッ‥
ゴーレムが放つ石礫の射程距離は20メル。その前にアレク、セーラ、リズのそれぞれがゴーレムの駆逐に動く。
「「ゲイル(疾風)!」」
「グラビティ!」
ゴゴゴオオオォォォーーーッ!
グラグラグラグラグラグラッ!
疾風が土ゴーレムを直撃する。
沈む地盤が土ゴーレムを直撃する。
ドオオォォォーーーンッ
バラバラバラバラバラバラ
反撃することもなく土塊となって離散するゴーレムたち。
魔法を発現できる俺たちにはなんてことない。だけど直接的な武力しかないとしたら、たちまち苦戦するような状況になるよな。だって囲まれてしまったら、石礫どころかパンチまで食らうことになるから。
「いくよ」
再び進み始めて3エルケ(3㎞)もしたら。
「またかよ!」
ズーーン ズーーン ズーーンッ‥
ズーーン ズーーン ズーーンッ‥
繰り返されるゴーレム群の襲来。
ズーーン ズーーン ズーーンッ‥
「去年は魔力を温存したくて前衛のキムやタイガーたちにもゴーレムと闘ってもらってたのよ」
たしかにこの状況がどこまで続くかわからないうちは、魔力量を節約することも考えなきゃいけないからな。
幸い、俺の魔力はまだまだ問題はない。マリー先輩もリズ先輩もまだまだ大丈夫みたいだ。
そうそう、セーラとリズ先輩の間では糸が切れることのないまま、移動中も糸会話器がそのまま使用可能である。
「「ゲイル(疾風)!」」
「グラビティ!」
ゴゴゴオオオォォォーーーッ!
グラグラグラグラグラグラッ!
繰り返されるゴーレムの襲来。さすがに嫌になってきた。リズ先輩の魔力量も心配だな。また3エルケも進んだら‥‥。
ダメだ、ダメだ。自分からフラグを立てちゃ。
ズーーン ズーーン ズーーンッ‥
ズーーン ズーーン ズーーンッ‥
ズーーン ズーーン ズーーンッ‥
ズーーン ズーーン ズーーンッ‥
ズーーン ズーーン ズーーンッ‥
ズーーン ズーーン ズーーンッ‥
あーやっぱり‥‥
「なんだよこいつら!多すぎだろ!」
土ゴーレムに、さらに一回り大きい岩ゴーレムを含めて全方位から迫りくるゴーレム群。その数は‥‥36体!
ん?なんだ、あの金ピカ?
前方最後尾にはキラキラと輝くゴールド(金)のゴーレムがいた。
「マジか?!」
「「「何あれ?」」」
「金色のゴーレム?」
これって‥‥
うおおおぉぉぉーーーおまえ、サン◯◯インかよ!
すっげえええええぇぇぇぇぇぇぇーーー!!
動きは他のゴーレムと同じでゆっくりしているけど、存在感は半端ない。
光を反射してピカピカ光ってるよ!
まるで悪魔の騎士だよ!カッコ良すぎるわ!すんげええぇぇぇ!
「キム!」
「ああマリー」
「タイガー!」
「ああビリー!」
迫り来るゴーレム群を前に。
浮かれるアレクを余所に。
両隊の前衛にも出撃指令がなされようとしていた。
そんな両隊からキムとタイガーが前に出ようとしたそのときである。
「あの‥‥その前に俺がアレをやります!」
「えっ?」
「外堀作ってゴーレムを止めてみせます」
行く先の地面に穴が開いてたらゴーレムは通れないよね。別に深くなくていいはずなんだ。だから広範囲に外堀を発現できる。
思うや否や、広範囲で外堀を発現する俺。いくぞ。地面に手を置いて言う台詞はこれしかないよな。
「土遁、外堀の術!」
「シルフィ、またアレクがどっかいってるわ。みんな緊迫してるのにあんなお馬鹿でいいの?」
「いいのよシンディ。いつものことだからあのお馬鹿さんのことは放っておいて」
うん、何も聞こえない、なにも聞こえないよ……。
ズズズズズーーーーーーーーーッ
ズズズズズーーーーーーーーーッ
ズズズズズーーーーーーーーーッ
ズズズズズーーーーーーーーーッ
広範囲で堀が形成されていく。幅、深さはともにわずか1mほど。
底には槍衾が待ち構えている仕様。
人なら軽くピョンと跨ぐレベル。
だけどゴーレムには‥‥。
ズドオォォォーーン!
ズドオォォォーーン!
ズドオォォォーーン!
ズドオォォォーーン!
ズドオォォォーーン!
回避することもできずに倒れていくゴーレム。
倒れなかったのは、堀の発現が間に合わなかった各方面数体のゴーレムのみ。これなら、マリー先輩とリズ先輩に任せても大丈夫だ。
「あの金ピカの奴は俺が直接倒してきます。マリー先輩、キム先輩あとはお願いします!」
「「わかった(わ)」」
ダンダンダンダンッ!
突貫で一気に前に出る俺。
真っ直ぐに金のゴーレムに向かう。
うん、おまえやっぱカッコいいよ。
ピカピカサンシャイン色に輝いてるじゃん!そんなお前と意思の疎通がとれないのが残念極まりない。話せたらサインしてもらいたいくらいだよ!
ズーーンッ ズーーンッ ズーーンッ‥
俺のことなどまるで眼中にないかのように前に進む金ピカゴーレム。
無表情にただ向かってくる。目鼻口がないから、表情がないのも当たり前なんだけど。
20メルを切って対峙したときだ。
ダーンッ ダーンッ ダーンッ‥
突如として金の石礫が飛んできた。
まさに弾丸の疾さ。
さすがにこれを食らっては無傷では済まない。
ダーンッ ダーンッ
ヒュッヒュッヒュッ
発射される石礫を右へ左へ交わしながらさらに前へ詰める。強度も高い金のゴーレムだ。接近して確実に倒さなきゃ。
「いくよ!アレク」
「ああシルフィ!」
石礫を潜り抜け、ゴーレムとの距離は触れるくらいの至近距離へ。
グワワワアアァァァァァーーーン!
すかさずゴーレムのパンチが迫る。
ヒュッ
それを首1つで避けながら、金ピカ野郎の胸に風魔法を叩きつける。
「ゲイル(疾風)!」
ゴゴゴオオオォォォーーーーーッ!
ぐっ グラグラグラグラグラッ
足を踏み込み、俺の風魔法を一瞬堪えたかに見えた金のゴーレム。でも待ってあげない。
ダンッ!シュパパーーーーッッッ!
すかさず蹴りを入れる俺。
ついにはグラグラとしたまま後方へ受け身も取らず転倒するゴーレム。
「槍衾!」
その後方に俺が発現した土魔法の槍衾が待ち構えている。
ガアアァァーーーーーンッ!
・・・ポキンッ!
硬い金属音をたてて金のゴーレムが倒れ槍衾に直撃した頭部が落ちた。
ヨシ、一丁完成、上がりだ!
このとき、両隊のみんなはホッとしてたそうなんだ。ゴーレムはとても危険だからって。でも俺にとっては、親しみやすいサン◯ャインだからな。
でもこれ‥‥マジで金なの?24金なの?
ヨイショっと。重っ!
ゴーレムとしての機能がなくなったからなのか、なぜか柔らかくなった胸部から魔石を取り出す。魔石も金ピカだよ。
ゴーレム自体は重いから全部は持てない。
仕方ないから頭だけ貰っとこうかな。カッコいいし。
金のゴーレムの魔石と頭をかかえて本陣に戻る。
「アレクよくやった」
「アレク君これだけでひと財産よ」
「あーやっぱそうなんですね。じゃあ帰ったらみんなで分けましょう」
「そうねー」
「ちえっ。つまんないです‥‥」
個人財産の所有が認められていないセーラが露骨に舌打ちしていた。
「マリー先輩、金のゴーレムってたまに出るんですか?」
「いーえ、たまにどころかたしか50年前に1度出ただけよ」
「へぇー。その50年前って?」
「そうよ、学園記録のあの年よ」
「ふーん‥‥」
あんまり実感はないんだけどね。
でもカッコよかったなぁ、あのゴーレム。
500メル後方ではキラキラと反射するゴーレムが倒れる様を見ながら、ビリーが1人、感心することしきりだった。
「これは50年ぶりの記録だね。でも‥‥やっぱりこれからも至難の探索になるな‥‥」
マリーとビリー。過去の探索記録を省みた2人。特にビリーは何らかの「ダンジョンの意志」を思い、今後の探索にさらなる不安を持ったのだった。
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いつもご覧いただき、 ありがとうございます!
新年度に入り、しばらくは字数が少なくなるかと思います。
毎日更新は続けたいと思っていますのでどうぞよしなにお願いします(拝)
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