252 32階層 ゴーレム(後)



 ズーンッ ズーンッ ズーーンッ ズーーンッ ズーーンッ ズーーンッ‥




 全長2mほど。

 ゴツゴツした人型のゴーレムがやってきた。ゆっくり、ゆっくり、人が歩く速度で。全身を土で覆われたゴーレムがゆっくりと向かってくる。




 「おおーかっけぇー!」



 これぞ男のロマンだよ!

 ゴーレムを仲間にしたり操縦できたら最高だろうなぁ。

 かっけぇーー。



 「‥‥ク、‥‥レク、アレク、もうアレク!」


 「あっ!ごめんシルフィ。ついつい見惚れちゃったよ」


 「アレク、あんたばっかじゃない!土人形なんかにどうして見惚れるのよ!」


 「いや、だって‥‥」



 女の子にゃぁ男のロマンはわかんないだろうなぁ。だってゴーレムだよ?歩くロボット、男のロマンのゴーレムだよ?



 ズーンッ ズーンッ ズーーンッ ズーーンッ ズーーンッ ズーーンッ‥


 ズーンッ ズーンッ ズーーンッ ズーーンッ ズーーンッ ズーーンッ‥


 ゴーレムが左右からも近づいてきている。おそらく後方のブーリ隊にも近づいてきているはずだ。

 土のゴーレムが四方から。各方向から1体ずつ。




 昨日、出発前の打ち合わせ。

 あらためて確認するように、同じ話があった。



 「ゴーレムは私とアレク君がやるわ。私は左、アレク君は前と右ね」


 糸会話器でも、マリー先輩とリズ先輩が話してたよな。


 「しもしもー、リズは後ろだけ気をつけてくれたらいいからね」


 「しもしもー、ん」



 ゴーレムは転かしさえすれば敵ではない。だから風魔法か重力魔法では格好の標的になる。

 逆に風魔法や重力魔法がなければたいへんだ。ゴーレムの石礫を避けながら闘わなければならないから。



 去年のパーティーでも、マリー先輩とリズ先輩がボル隊、ブーリ隊と分かれたチーム編成になっていたらしい。

 そしてゴーレムはやっぱり、精霊魔法と重力魔法の敵ではなかったらしい。

 てか、とにかく暑かったんだって。




 ズーーンッ ズーーンッ ズーーンッ ズーーンッ‥


 前方30メルほどに近づいてきたゴーレム。おそらく20メルに近づいたら、石礫の土魔法で攻撃してくるだろう。だから、残念だけどお前(ゴーレム)とはお別れだ。



 「ゲイル(疾風)!」


 ゴゴゴオオオォォォーーーッ!


 疾風が土ゴーレムを直撃する。


 ドオオォォォーーーンッ

 バラバラバラバラバラバラ


 後ろ向きに。

 倒れたゴーレムはそのままバラバラと土塊へと変わった。


 右手からくるゴーレムにも風魔法を発現。

 左手からくるゴーレムにはマリー先輩が風魔法を発現。


 「「ゲイル(疾風)!」」


 ドオオォォォーーーンッ

 バラバラバラバラバラバラ



 「フッ。お前たちにかかったら、ゴーレムもたわいないな」


 マリーとアレクの無双である。





【 リズside 】



 ドオオォォォーーーンッ

 ドオオォォォーーーンッ


 土埃を上げて、左右の土ゴーレムが成す術なく倒れ伏した。


 間違いなくマリーとアレクの精霊魔法であろう。

 アレクの魔法は精霊魔法というよりは、アレク自身の膨大な魔力の行使に思えるが。



 ズーンッ ズーンッ ズーーンッ ズーーンッ ズーーンッ ズーーンッ‥


 後方からも迫る土ゴーレム。

 その距離も30メルをきった。

 おそらく20メルとなれば石礫の攻撃を受けるだろう。

 昨年であれば、限りある魔力を思い、ギリギリ20メルまで近づいたゴーレムに対して重力魔力を発現しただろう。或いは石礫を避けて近づけるだけ近づいて。

 だが、今は魔力の枯渇を心配しなくてもいい。

 なぜなら心強い仲間のマリーに、新しい仲間のアレクもいるから。



 リアカーに乗ったまま、リズが両手をゴーレムに向けた。


 「グラビティ!」


 リズが座るリアカーの下から、瞬時に発現される重力魔法。


 グラグラグラグラグラグラグラ‥‥


 まるで波打つ海岸のように。目標に向かう土竜のように。

 ゴーレムの足元まで一気に崩壊する地面。


 ドオオォォォーーーンッ


 なす術なく倒れるゴーレム。

 その衝撃的な破壊力は前方、左右のゴーレムと変わらない。



 「「おおーさすがリズ」」


 オニール、ゲージが素直な賛辞をリズに贈る。


 「ああさすがだ」


 「さすがだね」


 タイガーもビリーも賛辞を贈る。



 「ふんなの」


 気心の知れた仲間とはいえ、手放しに褒められることにむず痒い思いのリズであった。




 ――――――――――――――



 いつもご覧いただき、 ありがとうございます!


 新年度に入り、しばらくは字数が少なくなるかと思います。

 毎日更新は続けたいと思っています。

 どうぞよしなに(拝)


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