120 黄金世代


決勝戦の前。

剣術の8位までの順位戦があった。


入学時のクラス分け試験は座学、魔法術、格闘(体)術、剣術の各審査の合計点から決められる。

これは生徒たちも理解している周知の事実である。故に、その成績によって決定された上位1組2組の者が優れているとの認識も周知の事実である。

それでもその上で。

剣術の上位者(年により違う。凡そ10傑乃至8傑だ)が学年内の他の生徒から「強者」として扱われるのは、尚武の気質高いヴィヨルド領ならではである。これは毎秋の武闘祭によって生まれる10傑が学内に於ける「最強」を意味するのと同じく、新1年生の「最強」を意味することになっている。



◯ シナモン対トール

大人と子どもの体格差の対戦となった。これはこの世界が性別、体重別などの階級別とは無縁ならではの絵図だ。

熊獣人のトール。

大きさというか体格はまさに熊(グリズリー)。それでいて笑顔も雰囲気も優しげな大きな熊さんだ。

家業は領都ヴィンランドで庶民に人気の食堂。トールはいつもそのお店を手伝う孝行息子だそうだ。(by解説のハンスさん)


「双子の弟(ステファン)と妹(ステファニー)がいるんだが、めちゃくちゃかわいいぞ!」


解説のハンスさんがキラッキラの犬歯をほころばせてかなり食い気味に語っていた。

そんな熊獣人トール対豹獣人シナモンの一戦。

大人と子どもの絵図だ。

ハンスと同じく幼年学校からの幼馴染とあって、互いの手の内を知り尽くしている2人。

どう動けばどうなるのかというシュミレーションまで一致しているそうだ。


「がんばれトール」


「がんばれシナモン」


幼馴染の2人を均等に応援するハンス。


「シナモンさんがんばれー」


さっき戦ったばかりだし、応援もしてくれたからシナモンを応援する俺。


「にゃー」


(ダーリンがウチを応援してるにゃ!)


なぜかこちらを向き、ニコッと手を振り急にやる気に満ちたシナモン。


シナモンの速さ対トールの剛腕が勝敗の分かれ目ですと、解説のハンスさん。

まさにその言う通りとなった。


ブンッ!

バリッ


トールが振りかざした木爪の一閃。

受けたシナモンの木爪が取れた。

これが決め手。


勝者 熊獣人トール


◯ トール対セバスチャン・ジャンリー(セバス)

熊獣人のトールはそのまま連戦となった。

ヒューマンのセバスは、予選で目についたレイピアの男の子だ。白いシャツに蝶ネクタイを締めたザ執事みたいな格好。若すぎる年齢からなんちゃって執事か仮装に見えなくもないのだが、事実モーリスの小姓(護衛)だと言う。モーリスは次男とはいえ、ヴィヨルド領主の息子だから、セバスはまさにザ執事なのだ。

セバスには爵位があることも知った。

(前世の記憶がある俺的にはセバスチャンという名前が既にツボなのだ)

熊獣人のトール対ザ執事のトールの一戦も見どころが多かった。


一撃vs.連撃です、とは解説のハンスさん。

一撃必殺的に木爪を振るうトールとレイピアの刺突をメインに素早い攻撃を繰り広げるセバス。距離をとりじっくりと攻略すればセバスが有利かと思ったが、勝ちを焦ったように見えたセバスが直線的にトールに突っ込んだところをトールの一撃。先のシナモン戦のようにレイピアが吹き飛んで勝敗が決した。


勝者 トール


◯ セバス対シナモン

一言、互角ですとは解説のハンスさん。

が、スタミナ切れも明らかで動きに精彩を欠いたシナモンの直線的な木爪攻撃よりもセバスのレイピアがより速くシナモンに届いた。


勝者 セバスチャン


◯ セロ対ハンス

解説のハンスさんが試合となりましたので、解説は僕アレクが代わります。

モンク僧セロニアス選手vs.狼獣人ハンス選手の一戦。


両者ほぼ互角の打ち合いから始まりとなりました。


シャタタタター

パパパパパパー


セロニアス選手の長身且つ長い手から繰り出される棍をハンス選手の狼獣人ならではの反射速度が木爪での受けを可能にしています。

見応えもたっぷりの試合です。

解説のシナモンさん、いかがですか?


にゃー!


はい‥凄い!だそうです。

勝敗の決め手は、リーチの差でした。

僅差でセロ選手の棍の刺突が勝ちました。


解説が下手くそでごめんなさいbyアレク談


勝者 セロニアス(セロ)





こうして1位2位以外、今年度の新1年生の剣術の順位が決まった。

のちに言う黄金世代だ。


3位セロニアス

4位ハンス

5位トール

6位セバスチャン・ジャンリー

7位シナモン

8位(ハイル)


いよいよ剣術の決勝、対モーリス・ヴィヨルド戦だ。




次回 剣術決勝

12/04 21:00更新予定です

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る