082 最終学年
「シャーリー、ミリアおっすー」
「デニーもおっすー」
「イギーもマイケルもおっすー」
「「アレクおっすー」」
「なんかみんな久しぶりだね」
「てかアレク、お前がいないだけだろ!」
「そうかも‥」
1年が経った。
俺はこの春休みもホーク師匠の元で1か月ほどを過ごした。
村のディル師匠同等に、あるいはそれ以上にキツくて厳しい修行だが、俺自身の成長になっている。
6年生。
これからいよいよ後期教会学校の最終学年だ。
▼
領都の教会学校の入学式にはデニーホッパー村の後輩が5人も入学してきた。
総学生数700人余り。
うん、村の人口より多いわ。
「「アレクせんぱーい!」」
入学式のあと。
後輩の女の子たちが走り寄ってニコニコと話しかけてきた。
(せ、先輩って!なんて素敵な響きなんだ!)
「やあみんな!」
(うぉー、このスカした台詞、1回言ってみたかったんだよねー)
「アレク先輩ー久しぶりでーす!アレク先輩って領都学園のワルの親玉なんですってねー!」
‥‥ブハッ、ギャハハー
周りの同級生のみんなが大爆笑となった。
「デニー!てめぇー!」
「俺じゃないって!」
「イギー!てめぇー!」
「俺じゃないって!」
「マイケルてめぇー!」
マイケルが肩をすくめて首を振った。
(あっ、マイケルめ!大人がよく俺にやるみたいに呆れやがって)
「えっ!?誰がそんなこと?まさかシャーリー?ミリア?」
シャーリーもミリアもマイケルと同じように首をすくめている。
いったい誰がそんな根も葉もない噂を‥。
「5年の人たちも4年のみんなも言ってましたよー。先輩は領都学園の狂犬だって」
「「「私も聞いたー」」」
悪気もなく後輩の女の子たちがうなづきあっている。
‥‥ギャハハ〜
なぜ?
3馬鹿も大笑いしている。シャーリーとミリアなんか腹を抱えて泣きながら笑っている。
クラスの他の女の子たちもみんながそうだ。
転げ回って大爆笑だ‥。
(くそー、ホントにぐれてやる!)
最終学年だ。
クラスのみんなとも、後輩たちともみんなで仲良く楽しく過ごしたい。
▼
学校帰り。
ヴァルカンさんのところへ遊びに行った。初めて行った2年前の春休み以降、今も時間があればちょくちょく手伝いに行っているのだ。
鍛治の手伝いは俺に合っていると思う。
楽しいし。
今では工房にいるトカゲ(サラマンダー)がふつうに見える。そういや、初めてヴァルカンさんのお店に入ったときもコイツがいたよなぁとトカゲを見ていたら‥目が合った瞬間、トカゲがニヤッと笑った。
「よおサラマンダー!」
「よおアレク!しかしお前も暇なヒューマンだな」
ギヤッギヤッ
わははは
笑うトカゲに自然と俺も笑い返していた。
▼
「ヴァルカンさん、俺ここを卒業して来年の春からは隣のヴィヨルド領の学校に行こうかと思ってるんだ。どうかな?」
「そうかアレク。ヴィヨルド領か」
「うん」
「あそこは尚武の気風が高い土地柄だからな、お前の剣の修行にも合うだろう。ヴィヨルドの鍛冶屋街にワシの妹がいるから、困ったら頼るがいい」
「はい」
こうしてまた人の縁が結ばれるんだな。ありがたいや。
次回 転校生 11/10 12:00更新予定です
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