072 修行前
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春休み。
俺は明日から20日間ほど、エルフのホークさんから魔法を習うことになる。
急に決まったことなんだが、師匠にもシスターナターシャにも、たまたま居合わせたモンデール神父様にもこのことを伝え、了承してもらえることができた。
3人ともホークさんをよく知っているらしく、皆納得をしてくれたんだ。
「アレク君、エルフならではの感性の鋭さをぜひしっかりと学んできなさい。彼からは魔法以外にも学ぶことは多いからね」
「はい、モンデール神父様」
「ホークさんはエルフの中でも指折りの魔法の使い手よ。私たちヒューマンにはない発現の仕方をもし覚えることができればアレク君にとって大きな武器になるはずよ」
「はい、シスターナターシャ」
「ホークの速さと鋭い感覚はお前にとってこれまでにない良い修練になろう。ただ‥わしよりはるかに厳しいぞ」
「はい、師匠」
師匠の「わしより厳しいぞ」の言葉にちょっとビビる俺だった。
ホークさんに会ったその日の夜。帰宅してすぐに家族にも話してお願いをした。
「アレク、家族を心配させずに元気に行ってこい」
「アレクちゃん、お母さんは怒ってるんだからね!でも‥がんばれ!」
「嫌だー嫌だーお兄ちゃん行っちゃ嫌だー」
「キャッキャ」
家族にはいきなりこうなった経過から話をした。
父さんは驚いて聞いていたが、俺の必死なお願いをなんとか理解して許してくれた。
マリア母さんにはもうめちゃくちゃに怒られたが最後にはなんとか許してくれた。
妹のスザンヌは嫌だ嫌だと泣きまくっていた。
弟のヨハンは‥キャッキャと笑っていた。たぶん理解していないだろう。
俺がホークさんの元に出発してから。
シスターナターシャは家に行き、改めて家族に説明をしてくれたらしい。別の日には師匠からもだ。さらにはモンデール神父様からも両親宛に手紙が届けられたそうだ。
家族に心配をかけたくない俺の心情に寄り添ってくれる師が俺には3人もいる。いつも思うが、本当に俺は幸せ者だ。ありがたい。
▼
初の外泊、しかも20日ほどの長期間の外泊だ。
俺は修学旅行に行く前日みたいにワクワクした。前世では修学旅行に行くこともなく入院生活を送っていたからな。
ホークさんからは西門前6点鐘に待ち合わせとなっている。
何を持っていこう?おやつはいくらまでいいかなーと思ったが‥この世界におやつ、しかもジャンクなやつなんてなかったのだった。
帰ってきて少し時間がとれたら、次はジャンクなお菓子を作ろうと俺は心に誓った。
6点鐘前。朝もまだ早くに。
ホークさんは既に待っていた。背に弓矢、腰に刀(ヴァルカンさんに替わりの刀を借りたらしい)を佩いて。
「ホーク師匠、おはようございます。今日からよろしくお願いします!」
結局俺は背に刀、腰に小刀と小袋(塩と粉芋)の出立ちだ。
「アレク来たな。ではさっそく行くぞ。ついて来い。いいか、遅れても迷わず真っ直ぐに進めよ」
「はいホーク師匠!頑張ってついていきます!」
「行くぞ!」
ホーク師匠は言うや否やすかさず駆け出した。まだ朝早い領都から。
えっ!?早っ!!
ホーク師匠があっという間に俺から見えなくなってしまった。
マジか!
馬より速いよ、あの人!
最近突貫にプラスして風のブーストを自身に纏うことにも馴染んできたので、正直足の速さには内心自信を持っていたのだが‥。
ホーク師匠が見えなくなって3時間ほど。広い平野や小高い山地を越え、とにかくひたすら真っ直ぐに走った俺。
だんだん心配になってきた。
迷子だよ…どうしよう……
目の前の森を突き抜けてとにかく真っ直ぐ行こうとした時。大木の上でホーク師匠が待っていた。
「アレク、どうだ?疲れたか?」
「はーはー、ぜーぜー、だ、だ、大丈夫です。まだ行けます……」
「よし。今日はあの先に見える山の麓で一泊だ。もう一走りするぞ」
「は、はひー……」
再びホーク師匠は走り去った。
やっぱり馬より速いわ……。
領都から西に真っ直ぐ行った先。たしかここはヴィヨルド領の黒い森じゃなかったかな。
黒い森
強い魔獣がゴロゴロいるんじゃなかったっけ。俺の記憶が確かだったら‥。
どうしよ‥‥俺まだぜんぜん弱いし……。
てか、魔獣は一角うさぎくらいしか倒せないし。
コワッ!急がなきゃ!
俺は疲れまくった身体に鞭打ち、再び走り出した。
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