071 新たな師匠
「アレクー何急いでるんだよー?」
「ああデニス。ちょっとな。明日またな、ばいばーい」
「「おーい」」
急いで学校を出る。
ついに。
ついに今日、俺の刀が出来上がる。
ちなみに刀は鞘に紐を通して背中に背負うタイプにした。
なんで腰に差さないのかって?
だって俺まだ子どもだし。サムライスタイルはかっこよく見えないし。やっぱり背負ってないと見た目から忍◯に見えないから。
「ほれアレク。抜いてみろ」
「うん」
刀を鞘から抜く。
すうーーーーっっ
キラーーーーンッ!
光を反射して刀が真っ直ぐに伸びている。刃は見るからに剛剣にして美しい。
とにかく美しい!
おお〜〜〜!
なんだこれ!
これは素晴らしい!
てか素晴らしすぎる!
鏡で見れないのが残念過ぎる!
えへへーこれはたまらんなあ〜。
クルンクルン回ったりポーズをとる俺。
「アレクよ‥‥」
なぜかヴァルカンさんが可哀想な子どもを見る顔で押し黙っている。
俺が独り悦に入っているそのとき。
ヴァルカン工房に1人のお客さんがやって来た。
鋭い目付きが印象的な細身長身の男。
それはエルフだった。
「ヴァルカン、久しぶりだな」
「本当にな、ホーク」
ヴァルカンさんに会いに来たエルフはヴァルカンさんとは旧知の人みたいだ。
あー残念だけどヴァルカンさんには明日改めてお礼をしに来よう。
「ヴァルカンさん今日はありがとうございました。
俺明日改めてきます。お金も明日でお願いします」
「ああ」
「小僧、名は?」
と。そのエルフの男性から声がかかったんだ。
「えっ⁉︎俺ですか⁉︎俺はアレクって言います」
「あなたは?」
思わずそう聞いた俺。
「ホーク・エランドル」
エルフのホークさんがじーっと俺を見つめる。
じーっと。
「あう、あう、あう、あう‥」
居た堪れなくなった俺は目線でヴァルカンさんに助けを求めた。
「ホーク、こいつはアレク。開拓村デニーホッパー村の農民の子だ。毎日村から領都の教会学校まで来ておる」
「なんで農民の子に刀がいる?」
鋭い目線のままホークさんが尋ねる。
「あっ俺強くなりたいんです。冒険者にもなりたいし」
刀をしげしげと見たホークさん。
「アレクと言ったか。お前魔法はいくつ使える?」
いきなりの質問だ。
モンデール神父様や師匠から、本来なら俺の魔法は人から隠せと言われていたけどここは隠さずに話すべきだと心の声が聞こえたんだ。
「火・風・水・土・金のすべてです。といっても生活魔法だけですけど」
「ふむ。なら教えはモンデールのところか」
「はい。モンデール先生です」
「剣は?」
「ディル神父様です」
「不倒に不断か‥」
(ふとーにふだん?何それ?)
そう答えた勢いのまま。相手が誰かも何もわからないまま。
俺は自然に思ったままを口に出していた。
「‥ホークさん。俺に魔法を教えてくれませんか?」
そのとき俺は思ったままをいきなり口にして伝えていた。
(エルフだからという安直な予想からかもしれない)
ホークさんが魔法を使えるのかもわからないし、もちろんホークさんがどこのだれであるのかも一切知らないままに。
「ほうアレクそうきたか」
ガハハハハハ
ガハハとヴァルカンさんが笑って言った。
「ヴァルカン、お前もそうなんだろう」
「ガハハハハ。まぁアレクはもうわしの弟子じゃの。こいつは刀鍛冶としても充分にやっていけるぞい。本人は刀鍛冶なんぞで収まらんがの」
ヴァルカンさんがうれしいことを言ってくれた。
「アレクといったか。俺が魔法を教えてやってもいい。ただ、お前学校があるだろう。学校を休むわけには行くまい。俺もここに永く留まるわけでもない」
「本当ですか!ありがとうございます!」
「ヴァルカン、俺の剣はいつできる?」
「そうさのー。20日ってところかの」
たぶんヴァルカンさんは俺のために遅めの納期としてくれたんだろう。
「だそうだアレク。どうする?」
「俺明後日から学校が春休みなんです。だいたい1ヶ月の休みになります。
ホークさんさえ良ければこの間、俺に魔法を教えて下さい」
「よしわかった。では明後日の6点鐘にこの西門の前に来い。20日間鍛えてやる」
「ありがとうございます!」
(やったー!あとは家に帰って父さんと母さんに許してもらわないとな。師匠やシスターナターシャにも)
ちなみにこの後。刀の代金を払おうとしたんだが、ヴァルカンさんは1Gも取ってくれなかった。あんまり言うと怒られるから、いつか旨い酒をどこかで買ってこよう。
こうして俺はエルフのホークさんから魔法を習うことになった。
瓢箪から駒とかって言うんだろうな、こういうの。
この時、ホークさん(ホーク師匠)がどこの誰かはわからなかった。ただヴァルカンさんの友人としか。
のちに俺がヴィヨルド領の領都学校のダンジョンを潜ったときと王都学園を受験した際に少しはわかることになるのだが、今はまったくわからないままだ。
それでもヴァルカンさんが信頼するホークさんだ。今はどこの誰とも知らない人だが、この人もまた縁が結び寄せてくれた人なんだろう。
そしてホークさんは俺に大切なことを教えてくれる魔法の師匠になるのであった。
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