021 対策

 翌日から。

 俺はこれまでと変わらぬ毎日の行動をした。


 「ははうえー」

 「なーにシリウスちゃん」

 「兄上が目に入りますー」

 「あらかわいそうなシリウスちゃん。嫌なものが目に入らないように母が抱きしめてあげますね」


 「ショーン様」

 「なーにアダム?」

 「ご自分の立場を考えなされ。廊下の真ん中を歩くのは言語道断。端を歩きなされ」


 「兄上、あっちにいけよ!」

 「ショーン、シリウスの言うことを聞きなさい!」


 継母のオリビアと弟のシリウスに虐められ、家宰のアダムに冷遇されて…。




 「マシュー爺‥遊んでよ‥‥」

 「おお、ショーン坊っちゃん。もちろんですぞ!今日も爺の活躍した話でもしましょうかの」

 「うん!聞きたい!聞きたい!」


 そしてかならず1日1回は厩に遊びに行く体でマシュー爺から解毒薬を貰って飲んだ。


 「ささ、ショーン坊っちゃん。今日も飲みましょうな」

 「うん‥‥でもやっぱり不味いや」


 厩でさらに薬師のルキアさんから指示された不味い液体も飲んでいる。これはかなり苦くて不味い液体だ。

 ルキアさん曰く、この液体を飲むうちにだんだんと黄土色の色素が全身に広がり、不健康に見えるんだそうだ。

 身体に害は無いそうだけど。

 みかんを食べ過ぎた翌朝、手が黄色くなるみたいなものかな。


 (あっ!手が黄色くなってきた‥)


 メイドのタマは俺が食べた食器を下げる際、その食器やグラスに残るものをこそっそり採っている。

 これを毒物を検出する紙に浸すらしい。リトマス試験紙のようだな。

 それはさらに違う毒物が混入しないように、らしい。

 これも薬師ルキアさんの指示から。


 俺は、毒が入っていると想定されるものを飲んだり食べたりしていた。それでも毒とわかったものを平然と口に入れるのは辛かった。


 「食べられるだけ、感謝しなさい!」

 「役立たずの兄上も食べることだけは一人前だな」

 「そうおっしゃいますなシリウス様。ショーン様は食べるくらいしか仕事がありませぬ故。」

 「‥‥」


 フフフフフ‥

 ギャハハハ‥

 ワッハハハ‥


 毎日続く継母のオリビアの罵倒も、弟のシリウスの嘲りも、家宰のアダムの嫌みも辛かった。

 が、俺は泣かずになんとか耐えられていた。


 (俺には仲間がいるんだ!)


 グッと唇を噛み締め、手を強く握って耐える。

 これまでには無かった心の支えが俺にはあったからだ。




 ▼




 それからしばらく後。

 頃合いとみたルキアさんからの指示を受けて。


 全身が黄土色となった俺は倒れた。

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