014 暗雲

 葬儀の翌日から。


 食堂では父上が座っていた上座に弟のシリウスが座った。その隣には継母のオリビアが座るようになった。

 家宰のアダムもシリウスの隣に座り、3人で食卓を囲むようになった。

 家宰のアダムにはシリウスの相談役との肩書きもついたそうだ。


 そんな彼らから離れて。

 長いテーブルの片隅が俺の食事場所となった。

 食事の内容も目に見えて貧相になった。


 「食べられるだけ感謝なさい!」

 「母上の言う通りですよ、あ・に・う・え!」

 「シリウス様の温情ですぞ。残してはもったいないですからな、ショーン様」


 「「「ひゃっはははー」」」


 継母オリビアの嬌声が中心。食堂中に俺を辱める笑い声が響き渡った。




 ▼




 【 秘密裡の会合 】


 「じゃあタマちゃん、ついておいで」

 「はいマシュー爺‥」


  とーんっ とーんっ とーんっ‥

  タタタダタタタタタタタッッ‥


 獣人メイドのタマが厩の爺マシューに連れられ、秘密裡に領都教会に訪れたのは次の休養日のこと。

 身体能力の高い獣人のタマはもちろんのこと、元A級斥候職マシューの2人だからこそ、誰にも誰何されず迅速な行動速度で教会に着いた。


 「ハァハァハァハァ‥」

 「さっ、タマちゃん行くよ」

 「は、はい‥‥」


 厩の爺としか知らなかったマシューの圧倒的な身軽さに驚きを隠せないタマである。


 「遅いよ。疾風のマシューも老いたねぇ」


 薬師のルキアが、爺の昔の二つ名を軽く揶揄る。


 「えっ!?厩のマシュー爺さんに二つ名が…!」


 猫獣人メイドのタマは耳をぴくぴくとさせ驚いた。


 「おおタマちゃん、この婆さんも昔は毒蜂のルキアと恐れられたもんじゃよ」

 「阿呆!美魔女のルキア様と呼ばんかい!」


 「「ワッハッハー(フフフ)」」

 「え〜っ!?」


 軽い掛け合いの冗談は緊張していた獣人メイド タマの気持ちを解してくれた。


 「揃ったかの」


 最後に扉を開けて入室した長身のモンデール神父が言った。

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