008 倒れる父上

 「父上!父上ー!」

 「お館様!お館様ー!」

 「誰か!誰か早く薬師を!」


 帰宅早々、父上が倒れた。


 屋敷内の誰もが右往左往となった。

 倒れたまま、父親は目を覚さない。

 不安でいっぱいの俺は伏せる父親の横に居続けた。





 父が倒れた日の夜。

 不安で眠れない俺は食堂へ水を飲みに行った。


 「はっはっはっは‥」

 「ヒーヒッヒッヒ‥」

 「「カンパーイ!」」


 「えっ!?」


 継母のオリビアと家宰のアダムが、食堂で笑い合いながら酒を飲んでいるのを見つけた。アダムはオリビアの腰に手を回している。


 「あっ…」

 「フフフ。ショーン子どもは夜は寝るもんだよ。お前も早く寝なさい、っていうかあっちにお行き!」

 「そうですよ。ショーン坊っちゃん。オネショをしないで寝てくださいよ」


 ふふふふ

 アッハハ

 「「わーはっはっは」」


 茫然と2人を見ている俺と、平然と俺を見返す2人。

 俺は2人に文句も言えず、下を向くしかなかった。足もブルブルと震えてきた。


 「うっ、うっ…」


 ダッ……


 堪らず俺はその場から逃げた。2人に文句も何も言えずに。


(ああ、思ったことを何も言えずに逃げるこの感じ。

 病いで倒れる前、クラスでハブられたとき家に逃げ帰った記憶と同じ気持ちだ。無力、あまりに無力な俺‥‥)


 部屋に帰った俺は独り布団の中で涙した。

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